レポート8:「惑星調査開始」
「惑星調査開始」
『管理番号42837329番。到着まであと10分』
そんなアナウンスが宇宙船内に流れる。
「あと10分! ならもう一戦できるよね! もうひと勝負!」
「そうですね。このまま負けっぱなしで仕事を始めるのはちょっと悔しいです」
カカリアと椿はコントローラーを握りしめてそんなことを言っている。
俺は横で苦笑いをしながら……。
「じゃ、もう一回やるか」
そういってスマブ〇を始める。
なぜか俺は宇宙船で目的地の惑星まで移動する間の時間スマブ〇している。
いや、理由ははっきりしている。
移動時間はわずか100分。
ワープというのは一度行って地点を登録しないと危険だということで、最初は使えず自分で地点を設定したあとは自動運転になる。
そう、自動運転。
なので俺は一切宇宙船の操作をする必要はないのだ。
宇宙船の知識があるか全部最初からやらされたのだが、特にそれも問題なく使えこうしてやることが暇つぶしのゲームになってしまったわけだ。
しかし、ガイノイドがゲームを楽しめるとは思えなかった。
というか、なんで俺より下手なのかという疑問もあったが。
「通常の性能は普通の人程度まで落としていますからね。そうでもないとお互い同じ立場で楽しめないですから」
「そうそう。というかこのゲームの反応速度って地球人に合わせているしそれ以上早く動いても仕方ないよ。あとは読み合いだし、対人戦に慣れてない僕たちはそこまで上手くないってわけだよ」
「なるほどな」
確かになんでも圧倒してしまえると楽しみっていうモノが無くなるだろう。
そういうこともちゃんと考えられるガイノイドは凄いと素直に思う。
というか、これだけ調整しているってことは最初ガイノイドを作った人はいろいろ問題を抱えていたんだろうなーと予想ができる。
あれか、人類が一番不要なものとか言ってジャッチメントデイみたいなロボットの反乱がおきたとか?
やはり心が必要だと。そして多用するのは危険だと。
と、そんなことを考えながら……」
「ああっ!?」
「ちょ、眠りプリ〇やめー!?」
2人をちゃんと10分以内に仕留めることに成功。
これから上達するっていうのは予想できるし今のところは上に立たせてもらおう。
「裕也さん。ちょっと大人げないと思います」
「む~。でも手加減されるのはむかつくんだよね~」
「なははは。今日仕事が終わったらまた相手したやるから」
そんなことを話しながら装備品の確認をする。
確認をするといっても、森を歩きやすい服にしているだけなので特におかしいとこもない。
荷物に関しては銃にナイフ、そして水筒がすぐに取り出せるようになっていて、背中に一応キャンプ道具と食料品を入れいている。
とはいえ、宇宙船からの直接輸送ができるので持っている意味があるのかといわれると疑問だが、椿たち曰く。
『宇宙船と連絡が取れないさい何も物資補給が受けられなくなります。その時を考えて荷物を持っていくのは当然のことです』
とのこと。
まあ言っているのは分かるが、荷物を分子分解とかしてデータ上で持ち歩くとかできないのかと聞いた。
所謂アイテムボックスだ。
『あるわよ。でも、それも阻害されれば意味がなわ。ちゃんとそっちも携帯してもらうけど、実際の物資がある方が安心なのよ』
あるんかい。
そしてこっちも完全に封殺された。
『あはは。そういうのは対策必須だよ。技術は進歩するけどそのたびに対抗策が練られるんだから。物資の無限補給とか絶対とめたいじゃん。だから広域に妨害電波を放って動作不良にするんだよ。だからこそ昔に起きた宇宙連邦同士の戦争はそれだけ本物の食糧が大事にされたんだよ』
カカリアの説明で本当に本物の食糧の大事さが理解できた。
マジか、お互いの対抗策のおかげで飯が食えないし、食料供給ができるような星も吹き飛ばしたとか。
餓死するんじゃねと思った。
だからこそ、そういう意味でも本物が重宝されているわけか。
とはいえ、土いじりはしたくないと。
うん、佐藤さんが言うようになめるなよと言いたくなるな。
『だから、畑を持っている裕也はとても良い人材に見えたでしょうね』
『でも、佐藤さんのほうでも畑を買ってやればいいんじゃないか?』
そう思ったんだが……。
『佐藤さんが主導すると搾取になりかねないといわれているんです。あくまでも現地の協力者がいると』
中々宇宙連邦の法律も面倒なようだ。
「よし。問題なし。シールドエネルギーも十分。というかコレ本当に体温でエネルギー回復できるんだよな?」
この山歩き用の服。
まあ、ちょっと動きやすいジャージみたいな服は佐藤さんからもらったシールド付きのスーツと同じ性能があるようだが、どこからどう見てもジャージにしか見えないから少し不安になる。
違う所と言えば、腕の所にエネルギーメーターが映るようになっているだけだ。
「大丈夫ですよ。そういうものですから」
「お、到着したみたいだよ」
俺が服の心配をしているうちにどうやら宇宙船が目的地に到着したようだ。
『惑星への無事着陸を確認したわ。今から周囲のスキャンを開始するからちょっと待って……』
セージの声が宇宙船内に響く。
彼女は今回お留守番で俺の自宅からサポートをしている。
あと畑の拡張計画を立てている。
『大気の状態問題なし。気温は18度ちょっと寒いかしら。時刻は太陽の高さから凡そ10時前後かしら。まあ、この惑星の時刻管理がどうなっているかはわからないけどね。裕也の自宅がある日本との時差はマイナス1時間ってところね』
どうやら特に問題はなさそうだ。
時差に関しては今回は特に問題はなかったが、今後俺たちは日中に出かけたのにこっちは夜だったっていうのもあるだろうから注意しておこう。
『半径1キロ周囲にオオカミ、イノシシなどの生物反応は無し。2キロから確認。動植物のスキャンを開始。新種と思しき物は約70種。目標を登録しておくわ。あとはスキャン装置を使って現物のデータをとってくればいいわ』
「わかったありがとう」
『頑張って。あと椿、カカリア。ちゃんと裕也を守りなさいよ』
「任せてください」
「うん。そこは大丈夫だよ」
『よし。あとは、植物は採取出来たらお願い。人型の生物と出会った際は迂闊に近寄らないこと。どういう文化、立場を持っているかわからないから。まあ、事前の調査ではほぼ地球人と同じ人型だからある程度推察はできるけど、盗賊とかは偽って近づいてくるから、裕也は注意しなさい』
「了解」
この話は耳にタコができるぐらい言われた。
未開惑星条約で無暗に人との接触は禁止されている。
もちろんケガなどをしていてもうかつに助けてはいけない。
宇宙人のアブダクションみたいに記憶を消すのが基本らしい。
もちろん交流をして情報交換をすることもあるが、それはここの人たちとかかわりを持つと決めればだ。
その分この地域に釘付けになる可能性があるから面倒でもある。
まあ、文化とかを詳しく調べるのにはいずれ必要になるが、今はまだお試し期間なので現地の人とは接触をせずにおこうという結論になっている。
……まあ、余程の事情がない限りな。
『3人のバイタルを確認。オールグリーン。ちょっと裕也が心拍数高めかしら? 興奮する気持ちはわかるけど転ばないようにね。じゃ、行ってらっしゃい』
セージがそういうと宇宙船の出口が開く。
俺たちは調査をしている間はセージが宇宙船の管理をすることにしている。
何かあれば即座にこちらに来れるように。
つまりバックアップは完璧ということ。
だから俺は覚悟を決めて足を踏み出す。
光が目に差し込んで一瞬ホワイトアウトをするが、階段の歩幅などは把握しているのでこけることなく地面へと降り立つ。
草を踏む感覚が伝わると共に、視界も戻ってくる。
「おお、森だな。全然日本の森とは違うな」
目の前に広がるのは鬱蒼とした森だ。
しかしながら、杉や松などではないと言える随分幹が太い木々が生えている。
あと、草がボーボーと生えていて前に進むのもキツイとわかる。
「そうですね。随分としっかりしている感じです」
「ねー。それより草切っていい? 私の身長だと邪魔すぎるんだけど?」
「ああ、そうだな。やってくれ」
「おっけー」
カカリアはそういうと刀に手を当てて。
「はっ!」
一気に抜刀してあたり一帯バッサリ切られて葉が地面に落ちる。
俺や椿を通り抜けて円状にだ。どういう理屈だよと思うがこういうものだと思うしかない。
「よーし。完璧」
「何を遊んでいるんですか。ビームソードを使ってフレンドリーファイアをしない状態で使っただけでしょう」
「ネタバレしないでよー」
なるほど。
味方誤射をしない機能を使ったままビームソードを長くして振り回した結果そんな器用なことになるわけか。
カカリアはほんとそういう発想がすごいな。
つまり人質を傷つけずに遠距離を切ることも可能なわけだ。
便利すぎね?
ま、そこはいいとして仕事をしよう。
「俺が持っているレーダーにも異常はない。椿、カカリアはどうだ?」
「こちらも異常ありません」
「こっちも問題ないよ」
「じゃ、仕事を始めるか」
俺は手元に銃というかドライヤーみたいなものをもってあたりに向ける。
握りの上にはディスプレイが表示されていて、そこからこの場所の風景が映っている。
そこには赤い点がさっそく幾つも表示されているので近づいていって。
「えーと。これでいいのか?」
スキャンのトリガーを引くとスキャン中という文字が出たと思ったらすぐにデータ収集完了とでる。
『おめでとう。これが惑星調査の初成果ね。これで4万円よ』
「おめでとうございます」
「やったねー」
「あ、ああ。でもこんな簡単でいいのか?」
これで4万円とかすごくないか?
あっという間に金持ちだぞ?
『大丈夫よ。畑を広げるのにもお金はかかるんだし。そういう意味でもお金が入るのは悪くないわ』
「ま、確かにそうか」
佐藤さんに頼まれた畑開発だが、こっちはそこまで予算は出せないらしい。
どれだけのものが出来るかわからないからとのことだ。
確かにその通りなんで、こっちは実費でやって実際売ってから収入になるわけだ。
だからその実費を稼ぐ必要があるわけだ。
『さ、そういうことだから、椿もカカリアも頑張って稼ぎなさい。入金は明日になるけど、明日の食事が豪華になるわ』
「さらに豪華ですか。今でも十分美味しいので想像できないですが、楽しみですね」
「うん。がんばろー!」
「そうだな。美味しいご飯を食べるためにしっかり働こう!」
『「「「おー」」」』
こうして俺の初めての惑星調査は始まるのだった。
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