レポート6:「ご近所への挨拶は基本」
「ご近所への挨拶は基本」
俺が住んでいるのは田舎とは言ったが全く近隣に家がない限界集落や北海道などではなく、総人口1000人ちょっとはいる田舎だ。
いや、十分に少ないとは思うけどな。
だが、商店はあるし、飲食店もある、民宿もあれば、小中学校も存在する。合同学校だけどな。
高校になると隣の町へ通学するか、寮に入る学生もいる。
一応、神社とか霊験あらたかな山とかあり、紅葉なども綺麗なのでシーズンになれば観光客が毎年万単位でくるので持っているところだ。
だから近所付き合いは真面目に大事なのである。
助け合い。本当に大事。
「この田舎は、夜星村って言って総人口1000人ちょっとの村だ」
俺はそう説明しながら近所の家へと歩いている。
「昨日は日暮れだったのであまりよく見ていませんでしたが、こういうのは普通なのですか?」
椿は当たりを見回しながら首を傾げている。
彼女にとって日本で人が住む場所というのはここが初めてだから何が基準かわからないんだろう。
「1000人程度の村なら9時はこんなもんだな」
目の前の道路には車どころか人通りでさえない。
何せ主要産業は観光業が主で、あとは農作業や林業な村だ。
道路で人や車が行きかうような場所ではない。
車を使うような大人たちは村の外へと働きに行っている。
なので、静けさが村を支配している。
とはいえ、気味の悪い静けさではなく、鳥の鳴き声に風に揺れいる草木の音。
まさに田舎の風景と音というわけだ。
「それで私たちを連れているのは村の案内ってことかしら?」
「そうだな。それと近所の人に挨拶だ。ああ、村の役場にもいるな。佐藤さんから戸籍は作ってもらったんだろう?」
「うん。あるよ。ほら」
そう言ってカカリアが見せてくれるのはちゃんとした戸籍と転出届だ。
これを使ってあとは村の役場で手続きを取れば正式に彼女たちは村の住人となる。
しかし、朝一番に佐藤さんが届けに来るとは思わなかった。
『いや、ここをおろそかにすると疑われますし、村って疑り深いですからね。ちゃんと手続きを踏んだ方がいいです』
とのこと。
確かに閉鎖的な村社会は外者に対して厳しいことがある。
しかも怪しいところがあればなおのことだろう。
だからこそそういうトラブルを避けるために挨拶をすることにしたわけだ。
「でも、椿はともかくセージやカカリアが日本籍っていいのか?」
「いいわよ。ハーフってことにするわ」
「そうそう」
明らかに外国人なのだが、ハーフで押し通すようだ。
まあ、日本語はしっかり喋れるし問題はないのか?
見た目外国人の彼女たちに村の人たちがどう反応をするのか、そこはちょっと心配ではある。
だからこそ最初のイメージが大事な挨拶だ。
「外国人ってことでちょっと引かれる可能性があるから、そこは覚悟してくれ」
「ああ、わかっているわ。島国であまり外の人が入ってこないから、未知との遭遇ってやつよね」
「漫画で読んだよ。下手すると村八分にされて生贄にされるんだってさー」
「いや、カカリア漫画の読みすぎ。どこのホラー漫画だよ。ここは観光地だしそこまで偏見はない。俺だってよそ者だからな」
「えー、それはそれでなんか詰まんないなー」
「こら、カカリア。ご近所様に失礼な物言いは駄目ですよ」
「だね。裕也に迷惑をかけないようにね」
「わかってるって」
そんなことを話しながら俺は畑の方に入っていく。
「裕也さん。そちらに家はないですよ?」
椿はそう声をかけてくるが、これでいいんだ。
「大丈夫。ご近所さんはこの時間畑仕事だから」
俺はそう言って畑の中に入っていく、奥にビニールハウスがありそこに近づいていると、そこからおばあさんが出てくる。
腰は曲がっておらず、白髪の髪なのにまだまだ現役だと言わんばかりの女性だ。
「おーい。園山さん」
「ん? ああ、裕也ちゃんかい。どうした? また畑で困ったことかい?」
「いや、畑のことじゃなくて、後ろの住人の紹介」
「初めまして。昨日こちらに越してきた天野椿と申します」
「セージ・フォジャーと言います」
「カカリア・レーニーです」
「初めまして。私は園山たか子だよ。しかし、3人ともえらいべっぴんさんだね。裕也ちゃんの……彼女にはみえないねぇ」
バッサリと否定してくる園山さん。
まあ、誤解もなくて何よりなのだが、なんというかそれはそれで悲しい。
「彼女たちは前の仕事で知り合った人で、この土地でちょっとした作物研究をしたいんだってさ。ほら、俺畑持ってるだろう?」
「ああ、持て余しているね。つまりは、この3人は専門家ってことかい?」
「いえ、そこまでの知識はありません。直にこうして育てている園山さんに教えていただくことも多いかと思います」
「はい。しばらくは此方に住みますのでよろしくお願いいたします」
「よろしくー」
「そういうことかい。住まいは?」
「俺の所だよ」
「はー。まあ、部屋数だけはあるからね。何かされたら家に駆け込みなよ?」
「失礼だな。ま、俺がいない時もあるだろうし、その時はよろしくお願いします」
「ああ、任されたよ。しかし、若いもんがよくここに来る気になったね」
「ここの環境が私の研究に適しているんですよ」
「ふうん。よくわかんないけど結果が出るといいね。しかし、セージさんにカカリアちゃんかい? 外人さんなのに日本語上手いね」
「いえ、ハーフでして一応日本育ちなんですよ」
「私も」
「へぇ、まあ観光客にも外人はいるから、世の中そういう風になっているんだね。国際結婚か。いいね。いい風が村に入って来た。村長にいえば喜ぶんじゃないかい?」
「村長、今日いるんですか?」
「いると思うよ。会議とかは聞いてないし」
そんな話をちょちょっとした後分かれて役場へを足を運ぶ。
「気持ちのいい方ですね」
「そうね。私たちの姿を見て驚きはしてもすぐに受け入れてくれたし」
「だねー。でもさ裕也がちゃんってさ」
「あの年の人から見れば俺も子供さ。別に嫌じゃないし、作物とか持ってきてくれるからな。あと役場の帰りには食堂いくからな。あそこに人集まるし」
こうして椿たちは無事に役場で転入届を出して、文字通りこの村の住人となり、偶然居合わせた村長は喜びのあまり小躍りをミス夜星村をやろうとか言いだしたが、周りに止められていた。
そのあとは食堂によって集まる中年以上の人たちから可愛がられる。
いや、美人が得だっていうのがよくわかる話だった。
で、俺の教えるは今日のところこれまでとなる。
これからは……。
「では、午後からはお約束通り、裕也さんに惑星調査員としての講習を始めたいと思います」
「はい。よろしくお願いします」
椿たちが先生役として、俺が教わる番になるわけだ。
「では、まず目次を開いてください」
そういわれて配布された教科書を開くそこには俺がこれから学ぶであろう項目がずらっと並んでいる。
項目が多すぎでなえるぐらいだ。
こんな分厚い教科書を使って勉強するとか大学入試の時ぐらいだろうか?
いや、レポートを頑張って書いたときか?
そんなことを考えていると椿が説明を始める。
「沢山の項目があると思いますが、本日は上の項目4つを覚えていただきます」
そういわれて、目次の上から4つを確認する。
・アノウン宇宙連邦
・未開惑星保護条約
・惑星調査員とは
・調査員に必要な知識、技術
「まずこの宇宙には地球をしのぐ規模の組織が存在しています。それがアノウン宇宙連邦と言います。複数十の銀河の統治組織が協力して宇宙連邦を作っています。なおこの宇宙連邦自体も複数組織が存在しています」
「規模の大きな話だな」
「はい。とりあえず私たちが所属してるのはアノウン宇宙連邦の惑星調査員ということになります。詳しく言うと、アノウン宇宙連邦、惑星調査部第21982課です」
「多いな」
「多いです。ですが佐藤さんが説明したように、まったく人が足りていません。なので裕也さんを雇用して私たちを補佐につけることとなりました。幸い今のところ宇宙連邦同士の戦争などは起こっていないのでそういうトラブルに巻き込まれる心配もありません」
「あ、やっぱり宇宙連邦でも戦争とかあるんだ」
「はい。残念ながら技術が進んでもお互いのよくするところは折り合いがつけられずぶつかり合うことはあります。まあ、前の戦争は確か1200年ほど前ですね」
「随分前だな」
「その際は居住惑星が数百と消えたと記録に残っています。人的被害も物凄かったとか」
星が消えるとかいうのをあっさり説明している椿もこの教科書もそういうのが当たり前なのだろうなと思うが、日本の一般人として驚きをやはり隠せない。
「その際に生産惑星なども破壊され、食糧難に陥ったとも。幸い複製機のおかげで生産はできましたが、本物は作れなくなりました。それは戦争をした敵味方問わず落胆したそうです」
宇宙時代でも戦意を保つには食料、美味しい食べ物が大事らしい。
「そこから未開惑星保護条約というのは制定されました。今手を出している惑星以外をむやみに破壊、改造しないために。自ら宇宙に出ることができない惑星の住人に対しての接触をできうる限り禁止。もちろん戦争状態でも手を出すことはしてはならないと。そうしないと美味しいものが手に入らなくなりますから」
「えーと、それだと惑星調査員はその未開惑星保護条約に違反するんじゃないか?」
「いえ、その未開惑星保護条約を守るために惑星調査員というのがいます。密漁などを防ぐために未開惑星を調査し、守るのが私たちの仕事となります。もちろんその惑星の調査も必要になります。何が正常なのかを知らないといけませんから」
「なるほど。地球における保護地区の監視員みたいな感じか」
「はい。そのような認識で大丈夫です。そしてその監視員に必要な知識や技術ですが……」
ここからはかなり細かくなっている。
大まかに必要な知識や技術とか言っているが、ページは手に取る限り20はある。
はぁ、ちょっとやる気はなえるがそれでも宇宙が待っているならと気合を入れなおすか。
と思っていたら。
「こんな量を完璧に覚えるのは不可能です。特に戦闘技術が顕著です。文明が育っていないところは武力で奪うというのが良しとされているのがほとんどです。それを打ち払う力がないとお話になりません。ですから、宇宙船に移って身体強化処理と学習処理をさせていただきます」
「なんか不穏な言葉が出てきたけど、その身体強化処理と学習処理っていうのは、あれか? なにかカプセルに放り込んで数時間たてばあら不思議ってやつ?」
俺が苦笑いしながら聞くと。
「はい。その通りです」
椿は笑顔で肯定してきた。
「具体的に言うと、大体2時間くらいね。そろそろ入らないと晩御飯に間に合わないから頑張ってね裕也」
セージの頑張れという言葉に何か裏を感じてしまう。
「え? 何か痛いとかあるのか?」
「そういうのはないから安心して入ってきてね」
「そうそう。明日慣らしをしないといけないし、頑張れー。僕たちは漫画でも読んでるからさ。あ、それとも改造みたいでいや?」
「……最初はそう思ったが、惑星調査に言ったとたん死ぬとか簡便だしな。椿聞くけど、人じゃなくなるなんてことはないんだよな?」
「はい。そこは大丈夫です。純粋な肉体、知識強化なので遺伝子をいじるわけではありません」
はっきりと言い切るので大丈夫だろう。
日本の政治家の直ちに影響が出ることはありません。と言われるより信じられる。
「じゃ、剣でビーム出せるようにしておくからね~」
と、カプセルに入る瞬間カカリアが不穏なことを言ってきた。
あれは、英雄しかできないから。
普通に銃で戦う方が安心できます。
あの、聞こえてますか?
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