レポート4:「こういう時は人気漫画とかを参照するのがいい」
「こういう時は人気漫画とかを参照するのがいい」
「いや、凄いですね。まさか4時間で完成させるなんて」
そういうのは佐藤さんだ。
俺のサポートガイノイドを作ってくれると言ったが、外見は俺が決めないといけないのでそれ相応に時間が掛かると予想していたのだが、思ったよりも早く終わらせることができた。
「アレですよ。漫画とかを参照しました」
「漫画をリアルにするのは難しいのでは?」
「まあ、参考にする程度ではありますけど、それでも方針が決まりますから」
「なるほど。そういう方法もあるのですね」
佐藤さんの言うように漫画のような目のサイズとか頭のサイズだとおかしくなるのだが、それをリアルに戻すような感じにすればいいと気がついたわけだ。
そういうもゲームあるからな。
最初は女優さんとかグラビアアイドルをとも思ったが、それは同じ顔の人物を作ることになるので、本物にも迷惑をかけかねないと思い、漫画を参考にすることにしたのだ。
だから似ているようで似ていない美人さんが出来上がるというわけだ。
もちろん、佐藤さんが言っていた今後付き合っていくので、俺の好みだとおもう女性の姿にはしている。
とはいっても、出来たデータを渡しただけでそのあとは出来上がるのを待っているだけ。
「それでどれぐらいで出来上がるんですか?」
「そうですね。3体分ですから1時間もあれば」
「なんか数か月とか予想していましたけど、そんなもので済むんですね」
「それぐらいの生産状況じゃないとサポートとして簡単に付けられませんよ。全部で軽自動車ぐらいっていったでしょう」
「確かに」
そう言われるとそうなのだが、やはり自分が知る技術がはした金額といわれるとあれだな。
文明が進んでいないファンタジー世界の人が地球の物をみて高値で買ってしまう気持ちがよくわかる。
しかし、1時間は待たないといけない。
それまでは手持無沙汰だ。
「佐藤さん、待ち時間の間に何かお話しをしておかなければいけないことなどは?」
「ん~。私からはなんとも、あ、日本における私の会社の場所ぐらいは知っておいてほしいですね。メールで送りますね」
ピロンとメールの着信音が鳴る。
確認すると佐藤貴金属の所在地が知らされている。
「訪問の際は、その社員証を見せてくれればいいですよ。この村に派遣ということになっています」
「ああ、なるほど。ですが店舗とかは?」
「買取専門、つまり仕入れ担当という風にしていますから」
店舗無しの買取専門の社員ってことか。
「それが調査惑星のどこかで原石はもちろん、貴金属、宝石を手に入れた際の換金方法ですね」
「そういう流れなんですね」
確かに自然に見えるし、お金の出所や税金処理なども問題はなさそうだ。
「今の話はもちろん、細かいこと宇宙船の操作などはガイノイドたちから教えてもらえます。というかそういう風にしないといけないんです。何のためにガイノイドを提供したのかわかりませんからね」
「確かにそうですね」
俺のサポートのために作ったガイノイドが何も仕事がなかったとなるとつくり損だ。
「あとですね。事前知識としては一応日本や地球の文化歴史などは私が知りうる限り入れてはいます。ですが、最近の流行など、今生きる視点という点は抜けていますのでそこは主として野田さんが修正してやってください」
「経験がないってやつですね」
「そうです。頭ではわかっていてもというやつなので、どうしても現地で暮らして修正していかないといけないんです。これがあまりガイノイドを主軸に使いたがらない理由ですね」
「無機質になりがちなんですね」
「はい。機械的になってしまうんですよ。作物を育てるのにも愛情がいるというのは分かっていますから。というか心があるからこそ改良につながるわけです。もちろん惑星調査もですね。倫理的な判断というのはその場その場で変わってきます。多数を助けて少数を切るというのが、大局的には正しいのでしょうが、その大局を今見る必要があるのか、外に解決策がないのかと思考を巡らせる必要があるわけです」
作られた、いや知識や心を積み重ねる時間がないゆえの問題だろうな。
そして、その積み重ねをするのなら自分たちの子供の方に力を入れた方がいいと考えて。
だからこそあくまでもサポートであり、主軸に置くと問題があるのではないかと疑うわけか。
「心というのは難しいです。育つものですからね。そういうことも考えると私はこの日本に住む人たちがいいと思うわけです。義理と人情、そして人を害することを怖がり助け合う精神。それを教えていただければと思うわけです」
「そこまで言っていただけるのは凄く嬉しいのですが、それはやはり奥様とのご関係で?」
「はい。それが始まりであり、多くの地球人、主に日本人に助けられてきました。お世話になっている人もたくさんいます」
そういう佐藤さんは笑顔だった。
良い関係を築いているのだろう。
「まあ、悪い人もいるんですけどね」
「それはどこの世界も同じですよ」
そんな話をしていると佐藤さんのスマホからアラームが鳴る。
「時間のようですね。では宇宙船の方へいきましょう」
「はい」
俺は正直裸のままで出てくるのかと思っていたのだが、そういうことは無く。
「「「初めましてマスター」」」
そう言って3人の女性がお辞儀して待っていた。
服装も支給されていたスーツを着こなしている。
「顔を上げてください。確認いたします」
「「「はい」」」
佐藤さんがそういうと3人が顔を上げる。
おお、本当に作ったデータ通りだ。
「彼が貴方たちのマスターとなる野田裕也さんです」
佐藤さんがそう紹介をするので、俺はとっさに。
「初めまして野田裕也ですよろしくお願いします」
と、普通の挨拶をするが、どうも3人とも困った感じの顔になり……。
「あの、おそれながら……主様となるのであればもっと堂々とするのが普通では?」
「ええ。確か、主君は言動には気を遣う必要があると記録にあるのですが?」
「え? それって昔の話じゃない? 亭主関白ってやつじゃない? ほらござるって言わないし」
うーん、3人の知識が乱れているというのはよくわかった。
「あはは、申し訳ない。どうしてもこういう詰め込みは後での修正が必須になるんです」
「これは大変そうですね。ですが、よくわかります」
「それで、彼女たちはどうですか? 顔に声、スタイルとかは?」
「ええ、問題ありません。3人ともちょっと知識にずれがあるから、それはこれから修正していこう」
「「「はい」」」
3人とも迷いなく俺の言葉に返事をする。
これはちゃんと俺を主としてみとめているからなのか?
とりあえず、佐藤さんに言われたようにしようと思う。
「じゃ、3人に名前を送るよ」
そう、名前を付ける。
大事なことだ。
「黒髪の君の名前は|椿(つばき)」
黒く長い腰まで届く綺麗な髪をもつ日本美人の彼女にはぴったりだろう。
前髪ぱっつんもあって日本人形みたいなイメージもある。
「ありがとうございます。お傍に立つ者として奮励努力いたします」
彼女は名前になにか感想を言うことなく静々と頭を下げる。
正に花言葉の「控えめな美」「控えめな愛」を表しているといって良いだろう。
というか、まさに一歩下がって夫を立てる妻見たいな感じだな。
「あら、羨ましいわね。主様、私の名前は?」
「そうだよ。僕の名前は?」
一人目の名前を送ったら、ほかの二人は羨ましいという感じで動き出す。
名前というモノにそれだけこだわりがあるのだろう。
佐藤さんも言っていたっけ、名前というのは特別だということ。
番号で呼ばれるのではなく、種類で呼ばれるのではなく、名前という固有のものがあるというのは作られた、製造されたと自覚されている者たちにとっては特別な物だと。
「大丈夫。2人ともちゃんとある。金髪の君の名前はセージ」
「フランス語で賢人のことを指す言葉ね」
「そうだ。花言葉では尊敬、知恵という意味がある。君には主に科学者としての立場を頼みたい」
「わかったわ。任せて」
セージは金髪の美女、髪はセミロング。
スタイルは一番いい。
科学者としての立場っていうのは、これから畑の手伝いもあるだろうから地質調査とかそういう関係での人にしようと佐藤さんと決めたからだ。
「で、僕は?」
最後に残ったのは銀髪ツイテールの少女という風体が似合っている彼女だ。
精々中学、高校のような見た目にしている。
わざとそういう風にしている。
全員が大人ではなくこういう子もいれば向こうも多少は警戒を解くのではないかと思ってだ。
子供相手に邪険にできるのは悪人でも少ないからな。
「君の名前はカカリア。意味は技術、秘めた恋」
「カカリア。うん、僕はカカリア。つまりセージが研究者なら僕は物を作るっていう立場かな?」
「その通り」
「そして、主様に恋しているってことだね」
「それはよくわからん」
恋の定義なんざ明確に定められてないからな。
ともかく、カカリアは技術者としての側面も持つ。
これで無理やり納得させるって感じだな。
「全員花の名前なのですね」
「ああ。まあ、気が利いた名前はあまり思いつかなくて安直になったのは謝る」
「いいえ、そんなことはないわ。十分いい名前よ。ねえ、カカリア」
「うん。気に入った。よろしくね!」
「はい。これからも幾久しくよろしくお願いいたします」
これで何とか初対面の挨拶と名前が決まった。
さて、これからどうするのかと佐藤さんに視線を向けると。
「では、これからのことは彼女たちに任せます。ああ、惑星調査に関しての情報は2日後送りますので確認してください。それまでは、彼女たちからの説明をうけ、また彼女たちにここら辺の常識を教えてやってください」
なるほど、仕事の前に相互理解を進めろってことか。
「わかりました」
こうして、彼女たちを迎え入れての生活が始まることになった。
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