第5話 愛の条件

「そうか、思ったより早かったな」


相談室の室長ディフから、ログが襲われた件を報告された魔王様。その口ぶりは、まるでログが襲われる事がわかっていたかのようである。


「余が最も目をかけている人間の少女だ、脅しに使うにはもってこいだろうよ。なあ、ディフ」

「その通り、ですな」


まんまと引っかかりおって、と嬉しそうな魔王様。

え、魔王様、ログを囮に使ったの?


「城内にも、ログが余とただならぬ関係だという噂で持ちきりになっておるしな、わざわざ相談室へ通っている甲斐があったというものよ」

「ですなあ。まあ、あまり長居されると、クライア嬢がなんと言うかわかりませんぞ?」


魔王様が足繁く通う本当の理由を、クライアは察してはいるだろうが、魔王様がいる事をとても鬱陶しいと思っているのだ。

業務に支障が出ては、ディフとしても困るのである。

クライアさん……魔王様に鬱陶しいって……。


「わかっておる。ログの初々しさを堪能し終わるまでもう少し待て。そういえば……警備が向かった時には、犯人ら、姿を消していたそうじゃないか?」

「ええ。おそらく、失敗も想定済みだったのでしょう。後始末のために潜んでいた者がいたのでは」


すると、魔王様、急にニヤニヤ笑い始めた。


「ログは、しっかり縛ったのに!と悔しがっておったのではないか?」

「よくお分かりで。絶対解けない結び方だったのに、と」

「縄の一本二本で大人しく待っているわけがなかろうに……まったく、詰めの甘い子だ」


余ならすぐに殺してしまうが、と物騒な呟きが聞こえた気もするが、スルーしておこう。


「まあ、誰が手引きしたかなど分かっておるが、言い逃れできぬ証拠を突きつけてドン底に突き落としてやりたいからなあ……もう少し泳がせてやるとしよう」

「……ログは、しばらく苦労しますな」


気の毒に思うディフ。だが、魔王様からはそれまでの楽しそうな表情は消え、冷たい眼差しに変わる。


「これしきのことで根を上げるようなら、余の隣に立つ資格はない。余の愛は、価値ある者にしか手に入れられぬ」

「……おっしゃる通りで」


ログ……大変だ……頑張って!

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