第182話 お金は大事
「守さん、風華ちゃん、こんにちは」
「立原さん、お久しぶりですね」
「正義お兄さん、こんにちは!」
「ささ、まずは上がってください」
「はい、お邪魔します」
学校の始業式が終わったあとに一度家に帰ってから、守さんと風華ちゃんが住む高級マンションにお邪魔させてもらった。
「守さん、早速なんですがお話ししたいことがあります」
「はい、いつものように私の部屋にどうぞ。風華、悪いけど部屋で待っていてね」
「風華ちゃん、またフー助と遊んでもらっていい?」
「はい! フー助ちゃん、遊ぼ!」
「ホー♪」
こっちの世界でフー助が話せる相手は、今のところこの2人だけだ。今度母さんにはペットとして飼うことを話して、うちの中では自由にさせてあげようと考えている。
「すみません、実は今まで守さんと風華ちゃんに隠していたことがあります」
「……隠していたことですか?」
「はい、実はですね……」
守さんには今までずっと隠していた異世界のことを話した。うちの家が異世界へ繋がり、そこで大魔導士の力を継承して、魔法やスキルが使えるようになったことを話した。そして、その異世界の扉が閉じてしまいそうなことと、向こうの世界の友人にその力を渡して、その扉を直してもらっていることを伝えた。
守さんに異世界のことを話さなければいけないというわけではないのだが、これからお願いしたいこともあるし、そのあたりの事情は話しておかなければならない。
「………………魔法に異世界ですか」
守さんが信じられないのも無理はない。いきなり異世界だの魔法だのスキルだのと話して、すぐに信じられる人はいないだろう。
「フー助も召喚魔法で召喚した召喚獣なんです。俺は魔法が使えなくなってしまったから、証明はできないですけれど、フー助は魔法が使えますからあとで見せます」
「いえ、魔法であることを疑っているわけではありません。考えてみれば超能力も魔法も違いがあるわけではないですからね。それよりも異世界というものにはとても興味があります!」
ああ、そっちか。そうだよな、異世界なんてものがあると知ったなら、普通の人なら興味があって当然だ。
「扉が直って異世界へ行けるようになったら、案内したいところなんですけれど、俺も力を失ってしまったから難しいところなんですよね。向こうの世界は魔物とか盗賊とかが出てくる物騒な世界なので……」
すでに俺には大魔導士から継承した力はもうない。一応大魔導士の家にあったチートな魔道具を持っているので、そのあたりの盗賊レベルなら負けることはないけれど、あの破滅の森にいる魔物と戦えるかと言われると難しい。
かといって、向こうの世界にいる間に、毎回アンデに同行してもらうわけにはいかないだろう。
「な、なるほど。魔物に盗賊ですか……なかなか物騒な世界なんですね。そして力を失ってしまったために、救助活動のほうはできなくなったということですか」
「はい、先日はいきなり連絡をしてすみません。あちらの世界から魔道具というものをいくつか持ってきているので、本当に大きな事件が起きたら教えてほしいのですが、移動がかなり遅くなってしまったので、事故や事件には間に合わないと思うんです」
「……承知しました。むしろ今まで本当にご苦労さまでした。立原さんに助けられた人達も本当に感謝していると思いますよ。それにしても異世界ですか……そちらの世界の詳しいお話もぜひ聞かせてください!」
「はい、後ほどお話ししますよ。それで守さんにひとつお願いがあるのですが、ちょっとこれを見てください」
「これは……宝石と金貨でしょうか?」
「はい。向こうの世界から持ってきた物になります。もちろん、正当な報酬で得た物です。可能だったらで構わないのですが、これを換金することはできないでしょうか?」
カバンに入れていた向こうの世界から持ってきた宝石と金貨を守さんの前に置く。護身用の魔道具があるからといって、これらを持ち歩くのは内心ビビりまくっていた。何千万円、もしかしたら億を超える価値があるかもしれない代物だ。
今までは向こうの世界の物をこちらの世界で換金することを戸惑っていたが、これからはいろいろとお金が必要になり、バイトをしている時間もないからな。換金して大金を得ることができるのなら、それをしておくに越したことはない。
「ええ、ちょっとした伝手があるので可能ですよ。税金なども、こちらであらかじめ引いてから口座に振り込んでおきましょう。一応異世界の宝石や金貨ということもあるので、先に知り合いに見せようと思いますが大丈夫でしょうか? もしかしたらこちらの世界にはない物質の可能性もありますからね」
……おう、ダメ元で言ってみたのだが、伝手があるのか。相変わらず守さんの人脈には驚かされる。なるほど、魔法石なんてのもあるし、もしかしたらこちらの世界にはない宝石とかもあるかもしれない。
それにしても、こちらの世界のお金が手に入ることはとてもありがたい。なんだかんだでお金はとても大切だ。何かあった時のために持っておきたい。
「はい、もちろん大丈夫ですよ。すみません、税金とかも詳しくはわからないので、そちらもお願いしたいと思います。手数料とかもちゃんと支払いますからね。それとこちらも受け取ってください」
「これはお守りですか?」
「はい。実はこれ、中に魔道具が入っていて、大きな衝撃などを軽減する効果があります。交通事故などの衝撃から身を守る効果があります」
このお守りの中には、アンデが魔法石を核にして作ってくれた小さな魔道具が入っている。これは大魔導士の家にあったものではなく、アンデに頼んで作ってもらった物だ。もちろん守さんや風華ちゃんの分だけでなく、母さんや学校の友人達にも渡してある。
「それはすごいですね! ありがとうございます、本当に助かります!」
風華ちゃんは以前に交通事故に遭っている。そういった不慮の事故を防ぐための魔道具だ。お守りの外の袋だけネットで売っていたので、その中にひとつずつ入れてある。
「こちらこそ、いろいろとありがとうございます。よろしくお願いします」
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