第121話 監視カメラ再び


 守さんの家まで急いで向かう。とはいえさすがに真昼間から空を飛んでいったり、転移魔法を使用するのは憚られたため、電車を使用して移動した。


「お邪魔します!」


「いらっしゃい。だいぶお早いですね」


「急いできましたから。それよりも詐欺師集団はどこにいるんですか?」


「とりあえず順を追って説明しますから落ち着いてください。どうぞ、中にお入りください」


「あ、はい。失礼しました」


 驚きすぎてだいぶ焦っていたようだが、少し冷静になってきた。ゆっくりとドアを閉めて守さんの部屋へ案内してもらった。


「そういえば風華ちゃんはお出かけですか?」


「はい、今日は友達と一緒にプールに行ってますよ」


「夏休みですもんね」


「本当は私も一緒についていきたかったのですが、どうか立原さんのことを優先してくれと風華に頼まれましてね。いやあ、本当によくできた妹です!」


「……そうですね、本当によくできた妹さんです」


 それもあると思うが、たぶん守さんについてほしくないのもある気がする。風華ちゃんも小学校高学年だし、友達と一緒にプールに行くところに自分の兄がついてくるのはちょっとアレだろう。相変わらず妹さんにべったりのようだ。




「ここに詐欺師集団が潜伏していると思われます」


 守さんがPCに映し出した地図は同じ県内ではあるが、ここからだいぶ離れた場所だ。


「昨日の今日なのにすごいですね! どうやってこの場所がわかったんですか?」


「昨日立原さんから情報をいただいたあと、まずは篠崎さんと接触していた警察官と銀行員の服装をした者達を調べてみました。


 しかしすぐに車で移動したのか、残念ながらその者達の足取りは途絶えてしまいました。このあたりはそれほど店やビルもなく人通りもないので、なかなか情報を得ることが難しかったです」


 偽物とはいえ警察官の格好をしているわけだから目立ちそうなものだけど難しかったか。このあたりはそれほど人通りが多いわけではないので、詐欺師達もそれを狙ったのかもしれない。


「しかし、銀行で金を下ろした男を監視カメラで確認することができました。金を引き落とした男は別の者に雇われていただけの者でしたが、雇った者の足取りを追うことができ、この場所に辿り着くことができたというわけです」


「すごいですね、そんなことができるなんて!」


「幸いお金を下ろした銀行の近くにはコンビニやお店などが多く、監視カメラが多くありましたからね。ちゃんと警察の許可をとって付近の店の監視カメラの映像を手に入れることができました」


 ……監視カメラか。そういえば守さんは工場の爆発事故や駅でのテロ事件でも監視カメラの映像を手に入れて俺を見つけていたもんな。


「最近の監視カメラは優秀です。店内からでも外の様子がある程度鮮明に映っているものが多いので助かりますよ」


「な、なるほど。それでも監視カメラで人を追うのは大変でしたでしょう?」


「いえ、最近では顔認証により、登録した人を付近の監視カメラ映像を検索して跡を追うソフトを開発したのでそれについては問題ありませんでした。どちらかというとお金を引き落とした者と雇った者が接触した時が大変でしたね」


「というと?」


「その者達はとあるビルの中で会っていたようなのですが、監視カメラのないビルでしたので、どの人物が雇った者なのか分からず、その時間にビルに出入りした人物すべてを洗い出して、また監視カメラで跡を追うというのをひたすら繰り返しました。


 また、その者が別の者に雇われているという可能性もあるので、同様にビルや店に入った場合には、接触した可能性のある人物をすべて洗い出します。


 もちろんビルや店の外の監視カメラのない場所で接触している可能性もありますが、移動速度と監視カメラに映っていない時間を計算してその可能性は低いと判断しました」


「………………」


「そして対象人物が最終的にたどり着いた家やビルを調べていき、その場所が会社として登記されていない怪しいこのビルにたどり着いたというわけです」


 俺には難しくてよくわからないが、PCがあったとしてもとても大変な作業であるということはよくわかった。よく見ると守さんの目の下にはクマがあるし、ほとんど寝ていないのかもしれない。


「本当にありがとうございました」


「いえいえ。ですがまだ完全に確定したというわけではありません。それでこの後どうするかを相談したくて立原さんに連絡したわけです」


「この後ですか?」


 あとは警察に任せるだけではダメなのか?


「いくら私が警察に伝えたとしても、証拠のないこの状況ではそう簡単には動いてくれないでしょう。私のほうでこのビルに監視カメラや盗聴器を仕掛けるという手段もありますが……」


「いえ、守さんにそこまでしてもらうわけにはいきません! ここからは俺が行きます!」


 いくらなんでも守さんをそこまで巻き込むわけにはいかない。相手は犯罪者集団だし、何をしてくるかはわからないからな。


 その点俺なら隠密スキルでバレずに潜入できるし、仮に相手にバレたとしても銃やナイフでは俺を傷付けることはできないだろう。


「……相手は犯罪者集団です。立原さんなら大丈夫だとは思うのですが、どうかお気をつけて」


「はい!」

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