第120話 詐欺師集団の拠点


「はい。俺が小さい頃からお世話になってた母の職場の先輩の方なんですが、どうやら詐欺に遭って数百万円を騙し取られてしまったらしくて……


 以前に守さんは警察の方とも関わりがあると聞いていたので、アドバイスをいただけないかと思いまして」


「それは災難でしたね。詳細を伺ってもよろしいでしょうか?」


「ええ、実は……」


 俺は昨日母さんに聞いた事件の詳細を守さんに伝えた。




「……そうですか。詐欺と気付いて警察に連絡をして銀行口座を凍結してもらった時には、すでに口座にはお金は残っていなかった訳ですね」


「はい」


 その日の晩に話を聞いたおばちゃんの夫が不審に思って口座の残高を確認したところ、口座にあったはずの数百万円が消えていたため、すぐに警察に連絡をしてこの詐欺事件が発覚した。


 手続きを行い、数百万円を下ろした口座を凍結したのだが、すでに何者かに引き下ろされていた。その引き下ろした人物を監視カメラから追っているそうなのだが、犯人はまだ捕まっていない。


「立原さんからの話を聞くに、犯行グループは偽の銀行員や警察の制服や名刺などを用意していたところを見ても、計画的な常習犯でしょう。実際のところ、この手の事件ですでに口座からお金が引き下ろされている場合にお金が戻ってくることはほとんどありません……」


「警察の方からもそう言われたらしいです。こういう場合って、詐欺師集団が捕まったらお金は戻ってきますか?」


「そうですね……詐欺師集団の手元にお金が残っており、相手が使用していた口座への振り込みが確認されれば、振り込んでしまった方に返ってくると思います。ただ、常習犯ということもあってお金を別の場所に移動したり、口座情報を破棄している可能性が高いので、なかなか厳しい状況かと思います」


「……ですよね。でもお金が返ってくる可能性が少しでもあるなら犯行グループを追ってみたいと思います。守さん、お忙しいところ申し訳ないですが、力を貸してくれませんか?」


「勿論です! こうして立原さんに頼ってもらえるとは嬉しい限りですよ。全力でサポートさせていただきます!」


「ありがとうございます!」


 守さんの手助けは本当にありがたい。俺の力だけでは何から始めていいかすらわからないからな。


「それではこちらでいろいろと調べてみたいと思います。篠崎さんという方に多少話を聞いてみたいのですが」


「はい、母経由でまとめて聞いてみます。ただ、結構気落ちしているらしいので、あまり何度も聞かないようにしようかなと思っています」


「承知しました。それでは後ほど確認したいことを最小限にまとめてメールでお伝えします」


「わかりました。よろしくお願いします」


 守さんに手助けをお願いしてフー助と一緒に家に戻った。ちなみに俺が戻った時にはフー助も風華ちゃんも楽しそうに遊んでいた。フー助も遊び相手が俺しかいないからな。たまには風華ちゃんに遊んでもらうのもいいかもしれない。


 そしてマンションを出てすぐに守さんから確認したいこと一覧の連絡がきた。内容はいつどこの銀行のカードを犯人に渡したのか、どこの交番に相談に行ったのかなど、おばちゃんに配慮された内容だった。


 確認しても問題ない内容だったので、そのまま母さんにメールで送っておいた。ちょうど母さんもおばちゃんも今日は出勤していたらしく、1時間もしないうちに返事が来たので、すぐに守さんに内容を送った。


 俺も大魔導士の力で何かできないかを考えてみたり、ネットで詐欺について詳しく調べてみたが、あまりいい手段が浮かばずに1日が経ってしまった。やはり俺の頭では限界があるな。明日になったら安倍や渡辺や川端さんに相談してみるとしよう。少なくとも俺よりはいい手段を考えてくれそうだ。






 そして次の日の朝、みんなにアドバイスをもらえないか相談しようとした直前に守さんから電話がかかってきた。


 なんだろう、昨日の夕方ごろにおばちゃんからの返事を守さんに送ったばかりだし、何かヒントになりそうなことでもあっただろうか。それとも追加で確認したいことができたのかな?


「おはようございます、立原です」


「おはようございます、朝早くからすみません」


「いえ、夏休み中なので大丈夫です。それよりも昨日の件についてでしょうか?」


「はい、詐欺師集団の拠点と思われる場所がわかったので連絡させていただきました。詳しいことをお話ししたいので、お手数ですがもう一度家まで来れますでしょうか?」


「は!? え、詐欺師集団の拠点!? 昨日の夕方から調べ始めたばかりですよね!?」


「はい。いやあ、今回は結構苦労しましたよ。可能性のある人物や場所をシラミ潰しに探しました。詳細は後ほどお伝えします」


「……は、はい。すぐにそちらに向かいます!」


 え、嘘だろ!? まだ半日しか経っていないのにもう詐欺師集団の拠点がわかったのか? てかどうやって?


 いろいろと聞きたいことが多すぎた。とりあえず、守さんの家に急いで行って話を聞こう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る