第118話 大魔導士を継ぐ者
「いやあ、それにしてもマサヨシさんの回復魔法はすごかったな」
「ああ、まさかあれだけ大怪我を負ったニルを治しちまうなんてな。マサヨシさんは冒険者にならねえのか?」
「なんだか聞いたらいろいろと制限があるそうじゃないですか。緊急の依頼とかで自由に動けないと困るんですよ」
「なんだか勿体ねえな。あれだけの回復魔法や氷魔法が使えるなら、すぐにAランク冒険者にもなれそうなのによ」
「というかマサヨシ兄さんならそれ以上にもなれるだろ。Aランク冒険者のうちら4人全員でかかってもまるで歯が立たないしな」
「……え!? ノノハ姉さん達が束になっても敵わないなんて冗談ですよね?」
「いえ、マサヨシ様には指一本触れられないでしょうね。それに、かの大魔導士様ですらすでにマサヨシ様は超えておりますわ」
「だ、大魔導士!?」
「いやいやいや! さすがにそれは言い過ぎですからね」
「……そんなすごい人だとは思わず変なことを言っちまって本当にすみませんでした!」
「いえ、謝罪はもう受け取ったので、もう気にしないでください。そういえば大魔導士も冒険者だったりしたんですか?」
たぶん天災を倒したから大魔導士を超えたと言ってくれているのだろうけど、実際には爆弾を使っただけだし、魔法を使いこなせているわけでもないから、大魔導士を超えてはいることはないだろう。
「いや、確か大魔導士は冒険者じゃなかったはずだぜ。自由にいろんな国に移動していたらしい。大魔導士の子孫は今もいろんな場所にいるからな」
そういえばいろんな場所に嫁がいるとか言ってたな。嫁を放っておいて破滅の森なんかに家を建てて魔法の研究をしていたくらいだ。よっぽど自由な性格だったのだろう。
「そういえば大魔導士といえば、最近
「ゴホッ、ゴホッ!」
「お兄ちゃん、大丈夫ニャ?」
「す、すみません、大丈夫です。その大魔導士を継ぐ者について詳しく教えてください!」
大魔導士を継ぐ者? 大魔導士の力を継承したのは俺のはずだが、まさか俺の他にも継承していた人がいるのか? というかあの継承魔法は複数の人間に使うことができるのか!?
疾風迅雷パーティのリーダーであるボリスさんに詰め寄る。
「あ、ああ。俺も実際に会ったわけじゃないんだが、隣の国では結構噂になっているぜ。なんでもそいつの魔法はかの大魔導士に匹敵するほどの力らしい。
歴史上数人しか使うことができない極大魔法を使えるって話もある。それで誰が呼び始めたか、大魔導士を継ぐ者と呼ばれているってよ。あの天災を倒したってのもそいつじゃないかと噂されているらしいぜ」
……なんだ大魔導士の力を継承したわけじゃなく、大魔導士ほどの力を持っているからそう呼ばれているのか。だが極大魔法を使えるということはかなりの実力者なんだろうな。
「なんだかうさん臭えやつだな。本当にそんなに強えやつなのか?」
「あくまで噂っすからね。冒険者ギルドに所属するわけでもなく、名前を名乗るわけでもなく、ひたすら強い魔物を狩ったり、名のある強者に挑んでいるって聞きやしたぜ」
腕試しでもしているのかな。大魔導士と関係しているわけではなさそうだし、特に気にしなくても大丈夫だろう。
とはいえ大魔導士に詳しいジーナさんに今度会ったら聞いてみるか。あの大魔導士マニアなら大魔導士と名の付くものならなんでも調べているはずだ。
「はん、たとえ極大魔法の一つや二つ使えようが、マサヨシには敵わねえぜ! いつでもかかってこいってんだ!」
「その通りだ! マサヨシ兄さんなら大魔導士だろうと余裕だぜ! おら、お前らももっと飲め!」
「あざす! マサヨシさんに乾杯!」
「「「乾杯!」」」
……完全に酔っ払いのテンションだな。みんなだいぶ飲んでいるようだし、大学生の飲み会とかこんな感じなのかもしれない。
それにしてもこんなに大勢の人と話すのはもしかしたら初めてかもしれない。意外とみんなで騒ぐのも楽しいものなんだな。少しだけリア充に近付けた気がする。
「それではここで失礼しますね」
「いろいろありましたけれど、とても楽しかったですわ!」
「また一緒に冒険するニャ!」
「こちらのほうこそダンジョンはとても楽しめましたよ。またぜひご一緒させてくださいね!」
「ええ、またいつでも来てください。リリスがもう言ってしまいましたが、今度はマリーにもぜひ会ってくださいね」
そういえばドラゴンの肝からできた秘薬で治ったマリーさんにはまだ会ってないな。領主と言っていたが、リリスさん達がお世話になった人なら、たぶんいい人なんだろうな。
「はい、また寄らせてもらいますね」
「お兄ちゃん、またね!」
「またね! ……え〜と、リリスさんとノノハさんにもよろしく言っておいてください」
「まったくこの2人は……」
リリスさんとノノハさんは酒を飲みすぎてダウンしてしまったようだ。近くにある宿まで背負うのを手伝うと言ったんだが、なぜかルルネさんとネネアさんに拒否されてしまった。……別にやましい気持ちなんてなかったからな。
俺も多少は飲んだはずなんだが、それほど気持ち悪くなってはいない。少し身体が熱く、少しテンションが上がっているくらいだ。むしろ酒を飲まなかったらみんなのテンションについていけてなかったかもしれない。
「それではまた!」
いろいろあったが、泊まりがけのダンジョン攻略は楽しかった。大魔導士を継ぐ者と呼ばれる人が現れたのは驚いたが、大魔導士とは関係ないらしい。たとえどこかで出会ったとしても、いい関係を築ければいいんだけどな。
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