第117話 祝勝会
「それではお世話になりました」
「いろいろとご馳走になりましたわ」
「ホー!」
「こちらこそニルを助けてくださいまして、本当にありがとうございますじゃ」
「マサヨシさん、ルルネさん、フー助さん、本当にありがとうございました。お金は必ず稼いで返しますね」
「ええ、ですが絶対に無理だけはしないでくださいよ」
「はい、もうあんな怪我はこりごりです。これからはもう絶対に油断しません。兄貴も本当にありがとうな、兄貴やみなさんのおかげで命拾いしたよ」
「……気にすんな。金は俺も一緒に稼ぐ、だからてめえも無理すんな」
「兄貴、ありがとう。でも兄貴こそ絶対に無理しないでくれよな。昔から兄貴のほうがいろいろ無茶してきたんだから」
「………………」
さすが弟さん、兄の性格をよく把握している。もうすでに無茶をしてきたことは秘密にしておこう。
「それでは失礼します。フー助」
「ホー!」
「兄貴、またな!」
「おう、元気でな」
「いい景色だな。すごいぞ、フー助!」
「ホー!」
今は日が昇っているため、昨日の夜と違って遠くまでの景色が隅々まで見渡せる。高い建物などの人工物がまったく見えないため、広大な自然の景色がとても綺麗だ。
「フー助ちゃん、本当にすごいですわ! それに毛並みがとてもモフモフしていて最高の乗り心地です」
ルルネさんはフー助のモフモフがとても気に入ったらしい。まあ気持ちはわかる。
「……まだ着かねえのか?」
「もう少しかかりますね」
アレックさんはフー助が飛び立ってからずっと目を瞑っている。どうやら高いところは駄目らしい。元の世界みたいに高い建物があるわけでもないし、当然こんな高い空から下を見下ろすなんて初めての経験だろうし、当たり前と言えば当たり前か。
「あ、シルビアの街が見えてきましたね」
フー助が飛び立ってから2時間ほどが経ち、無事にシルビアの街に帰ってきた。空を飛ぶという感覚は風魔法で空を歩く感覚とは違って楽しかった。またフー助にお願いして乗せてもらおう。
「あっという間でしたね。さすがフー助ちゃんですわ!」
「ホー!」
「……もう二度とごめんだ」
シルビアの街から少し離れたところでフー助から降りる。するとフー助はいつものサイズに戻って俺の肩に戻っていった。
アレックさんはよっぽど空の旅が怖かったらしい。あんなにいい景色だったのにな。
「お兄ちゃん!」
「おっと!」
ネネアさんがいつものように飛び込んできた。相変わらずこの人の反応は速いな。
「アレック! 弟は無事だったか!」
「ああ、マサヨシさんの回復魔法のおかげですっかりよくなった」
「そうか! そりゃあよかった!」
「さすがマサヨシだな。こんなに早く戻ってくるとは思わなかったぞ」
「マサヨシ兄さん、それにルルネも無事でなによりだ」
「ええ、ただいま戻りました」
「フー助ちゃんの背中、とっても気持ちよかったですよ!」
街に入るとすぐにリリスさん達や疾風迅雷パーティのメンバーが俺達を出迎えてくれた。そしてそのままシルビアの街でダンジョン攻略の祝勝会とアレックさんの弟の快気祝いを行うこととなった。
なお、今回の依頼は万緑の猫と疾風迅雷の両パーティ合同で達成したことにし、成功報酬と依頼が重なったことによる補償、ボスの素材を均等に分けるようにしたらしい。
俺の分はダンジョンのボス部屋の宝箱にあった腕輪とニルさんの治療報酬で十分だ。特にボスの素材については全力で受け取りを拒否した。あんな素材、収納魔法で収納することすら絶対に嫌だからな!
「「「乾杯!!」」」
「かあ〜、うめえ酒だ!」
「疲れていた身体に染みるぜ!」
アレックさんも他の疾風迅雷パーティのメンバーもあれだけ満身創痍だったのに一日ぐっすり休んだらもうすっかり復活していた。冒険者ってタフなんだな。
「いい飲みっぷりじゃねえか! 今回は俺の奢りだ、遠慮なく飲め!」
「うす、ご馳走になりやす、リリスの姉御!」
「姉御、最高です!」
リリスさん達の怒りも疾風迅雷パーティのメンバーが俺に土下座して謝罪したことにより、ある程度落ち着いたらしい。もう疾風迅雷パーティと普通に酒を飲み交わしている。
俺達がいない間にいろいろとあったのかもしれない。なんにせよ、いつまでもギスギスとした関係でいるよりもこっちのほうがいい。こういうサッパリしたところは冒険者らしいのかもな。
「マサヨシ兄さん、飲んでるか?」
「ええ、いただいてますよ。なかなか美味しいお酒ですね」
ん? こっちの世界のお酒に年齢制限はないよ。確か元の世界でも喫煙や飲酒の年齢はその国の法律に依存するから飲酒しても大丈夫なはずだ。……たぶん。
前に少しだけもらった酒はあまり美味しく感じられなかったのだが、このお店のお酒はなかなか美味しかったから少しいただいている。なにかあっても解毒魔法も使えるしな。
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