第109話 嫌がらせダンジョン
「なるほど、俺達が休んでいる間にあいつらは先に行ったんだな」
「このダンジョンが10階層までなら、もうそろそろボスと戦っていてもおかしくありませんね」
「ダンジョンが機能を止めてないから、まだボスは倒されていない。あるいは休憩もせずに進んで自滅してボスにやられていたりしてな。ま、さすがにBランク冒険者がそんなヘマをしてないとは思うが」
「そういえばダンジョンってクリアされるとどうなるんですか?」
考えたことはなかったが、そのままダンジョンが閉じたり消滅したりとかないよな? まあそんな仕様だったら誰もダンジョンなんかに入らなくなるけど。
「ああ、その場合はダンジョンが機能を停止して、数日かけてゆっくりと明かりや空気がなくなっていくんだ。魔物も新しく生まれなくなって、少しずつ減っていき、最後には廃墟みたいになっていく」
「なるほど。じゃあその場合はまた一階まで戻らないといけないんですね?」
「ボスを倒すと一番下の階層にダンジョンの一階まで転移できる魔法陣ができるからそれで戻るニャ」
おお、それはありがたい。そうだよな、このダンジョンならまだいいが、もしも100階層とかあったら帰るのが嫌になるぞ。それにせっかくダンジョンを踏破したのに帰り道で死んでしまったら笑えない。
「ゆっくり休めたし、俺達も先に進もう。このダンジョンが10階層よりも深ければ追いつけるだろ」
「そうだな。さっさと追いかけようぜ!」
すぐに準備をしてダンジョンの先に進み始めた。昨日の探索のペースから考えると、階層が10階層よりも深ければ道中で追いつけるだろう。
2日目の探索を始めてから約3時間。ダンジョンの10階層目でさらに下へと続く階段を発見した。どうやら少なくともこのダンジョンは11階層以上はあるようだ。
「やっぱりまだ下があるニャ!」
「これならあいつらに途中で追いつけそうだ」
今のところはまだ疾風迅雷パーティと遭遇したり、あの人達が倒した魔物の死骸などは見ていない。
昨日よりも少しペースを上げているつもりなのだが、下の階層に降りるにつれて階層はより広く、魔物の数も増えてくるし、なかなかペースが上がらない。
いや、いくら疾風迅雷パーティと勝負をしているからといって、焦って急いで先に進もうとして怪我をしてしまっては意味がない。魔物の強さも少しずつ強くなってきているわけだし、命もかかっているわけだからな。
「しかしこのダンジョンは人を呼び込む気があるのか?」
「……本当ですわね」
リリスさんとルルネさんが言う気持ちも非常によくわかる。1階層から出てくる魔物はネズミやコウモリ、トカゲ、蛾、イモムシ、クモなど食材にも素材にもならない魔物ばかりだ。
そしてこの11階層目からはサソリとヘビ、そしてハチ型の魔物が新しく現れるようになった。気味の悪い魔物達を倒してようやく10階層まで来たと思ったら、今度は毒を持つ魔物のオンパレードだ。
毒性はそれほど強くないらしいのだが、解毒薬や解毒魔法を多く必要とする。一応素材にはなるそうなのだが、解体をする労力と割に合わないので、今回も倒した魔物はそのまま放置している。
「……できれば俺も二度と来たくはないですね」
気持ちの悪い魔物ばかりで食材や素材にもならないし、あえて人を離れさせようとでもしているんじゃないのか、このダンジョン?
「今のところなんの成果も得てないな。これはダンジョン踏破の報酬がもらえなければ赤字になりそうだ」
そしてこれまでに見つけた宝箱は大半がすでに開けられており、開いていない宝箱はすべて宝箱型の魔物だった。疾風迅雷パーティのメンバーも言っていたが、ダンジョン自体の報酬はほぼないみたいだな。
「まあ依頼に使った装備や道具が依頼料を超えてしまうことはたまにある」
冒険をしていると赤字になってしまう依頼もあるらしい。武器や防具を破損してしまったり、食料や薬などを使いすぎてしまうこともあるのだろう。
途中で一度、昨日と同じサンドウィッチの昼休憩を挟んで探索を進めていく。しっかりと休息を取ったおかげか探索自体は特に問題なく、誰ひとり大きな怪我をすることなく14階層までやってくることができた。
「ちょうど安全地帯があって休むことはできるが、まだ体力に余裕があるし、今日はもっと先に進んでみたいと思うがどうだ?」
時刻は夕方の16時ごろ、昨日よりも朝早くに探索を始めたため、階層を降りるごとに広くなっていくダンジョンもかなりのペースで進んでくることができた。
「まだまだ余裕ニャ!」
「20階層までは無理でも15階層までは確認したいですわね」
「行こうと思えば20階層までいけると思うけど、そこまで無理する必要はないな。次の安全地帯までいってそこで考えればいいんじゃないか?」
「ええ、俺もそれでいいと思いますよ」
「ホー!」
「よし、それじゃあ先に進むとするか!」
とりあえず次の安全地帯まで先に進んでから、さらに先に進むか考えるようだ。
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