第99話 久しぶりのパーティハウス


 2週間ぶりくらいに異世界への扉を通り、異世界へやってきた。前回は変異種を倒したあとの確認に行ったんだっけな。


 あの時は事故があって、サーラさんの屋敷からものすごい中途半端な状況で戻ってきたんだっけ。しかも初めて転移魔法を見せてしまったから、ジーナさんから質問責めになってもおかしくはない。もう少し時間を置いてからまた遊びに行くとしよう。


 というわけで今日はエガートンの街に来ている。といってもリリスさん達がパーティハウスにいるのかわからない。


 実は試験の勉強期間中も魚だけでもお裾分けしようと何度かパーティハウスを訪ねたのだが留守だった。高ランク冒険者としていろいろな場所に出かけているのだろうな。


 コンッ、コンッ


 パーティハウスの扉をノックする。いなかったら冒険者ギルドのほうにも行ってみようかな。


「お兄ちゃん〜!」


「うおっと!」


 いきなり扉が開いてネネアさんが飛びついてきた。しかし今回も扉越しだというのによく俺だとわかったな。扉には覗き穴みたいなのは付いてないように見えるのに。


「ネネアさん、久しぶりですね。みなさんいます?」


「みんないるニャ! でも、もう少ししたら出掛ける予定だニャ」


 ありゃ、残念。今日もどこかに出かけるみたいだ。魚だけでも渡せるかな?


「ネネア、お客さんか? お、マサヨシ兄さんじゃないか?」


「マサヨシ様、お久しぶりですわ!」


 ノノハさんとルルネさんも来てくれたようだ。リリスさんは部屋の中かな?


「ノノハさん、ルルネさん、お久しぶりです。ブラッドリーの森の変異種以来ですね」


「その節はとても助かりましたわ。あまりにも数が多すぎて、私達だけだと対処できたかわかりませんでしたから」


「変異種討伐後の祝勝会にも来なかったし、ギルマスからはマサヨシ兄さんのことは黙っておくように言われたぞ」


「すみません、あまり目立ちたくなかったので先に帰っちゃいました。ギルマスのギルダートさんにもお願いして討伐に参加していたことを秘密にしてもらいました」


「とりあえず中に入ったらどうだい? マサヨシ兄さんにはいろいろと聞きたいこともあったしな」


「これから出かけるって聞いたんですけど大丈夫ですか?」


「まだ少し時間がありますから大丈夫ですわ!」


「ありがとうございます、それじゃあ少しだけお邪魔しますね」




「おお〜い、リリス。お客様だぞ、早く着替えろ」


「ああん、どうせマリーだろ? 別にいいよこのままで」


「マサヨシ様ですわ。早く服を着てください!」


「マ、マサヨシだと!? ちよ、ちょっと待ってろ! お前ら、絶対に中に入れるんじゃないぞ!」


 部屋の中でバタバタと音がする。


「……あの、リリスさんは?」


「リリスは家ではいつもパンツ一枚で過ごしているニャ……」


「………………」


 パンツ1枚……いわゆる裸族というやつか。獣人という種族を街でもよく見かけるが、その毛深さは個人によってだいぶ異なるようだ。それこそ全身が体毛で覆われていたり、手まで毛深く、長い獣の爪を持っている獣人さんも多くいた。


 リリスさんは人族にだいぶ近く、ネコミミと尻尾があるだけで人族とほとんど変わらない容姿をしている。


 そんなリリスさんがパンツ一枚だと!? いかん、正常な男子高校生には想像しただけで刺激が強すぎる……




「ひ、久しぶりだな、マサヨシ! 元気だったか?」


「え、ええ。みなさんも元気そうで何よりです」


 少しするとリリスさんが着替え終わり、今は全員でパーティハウスの大広間にいる。


 着替えたリリスさんの格好は薄めの上着と短パンで、それでもなかなかに刺激が強い。さっきのこともあってか、まだ少し顔が赤いリリスさんは、年上のお姉さんであるにもかかわらず、ちょっと可愛らしかった。


「そういえばマサヨシ様にお聞きしたいことがありますわ! 少し前に王都で天災が消失したと聞いております。やはりあれはマサヨシ様が?」


 空気を読んでくれたルルネさんが天災について話を聞いてくる。リリスさん達には俺の能力も知っているし今更である。


「ええ。ルクセリアの街を拠点にしていましたし、知り合いも結構多かったので、駄目元で試してみたらなんとか倒すことができました」


「やっぱりマサヨシ兄さんだったのか! 王都から来たと言っていたし、あんな化物を倒すなんてことができるとしたらマサヨシ兄さんしかいないと思っていたよ!」


「俺達も天災に挑んでみたけれど歯が立たなかったぞ。よくあんなやつを倒せたな?」


「私も気になりますわ。あの天災には魔法がすべて無力化されてしまうのに、どうやって倒すことができたのでしょうか?」


 どうやらリリスさん達も天災に挑んでいたようだ。そしてルルネさんは同じ魔法使いとしてどうやって天災を倒すことができたのか気になるようだった。


「俺も魔法はすべて無力化されてしまいましたね。苦肉の策で魔法を使わずに爆発させる特殊な道具と毒ガスを発生させる道具を天災の腹の中に押し込みました」


 テロリストが使おうとしていた爆弾と、工場の廃棄物を使ったとは説明し難い。まだ火薬すらこの世界にはないのかもしれないからな。


「さすがお兄ちゃんだニャ!」


「よくわからないがとにかくすげーな! これもドラゴンと同じで他の人には秘密ってことにしておいた方がいいよな?」


「ええ、名誉とかお金とかは今いらないので、秘密にしておいてください」


「マサヨシ兄さんは相変わらず謙虚だな。でも確かに天災を倒したとなると、いろいろと面倒ではあるかもしれない。すでに王都では天災を倒した者を見つけた人にも莫大な懸賞金が出るって話だぞ」


 え、マジで!? 名乗りをあげないのだからそこら辺は察してほしいんだけどな。


「ええ、冒険者ギルドにも黒い仮面の男の人相書が貼ってありましたわ」


 まるで犯罪者だな。同じような黒い仮面を装備している人がいたら迷惑をかけてしまうかもしれない。今のところはそんな人見たことないけどな。


「絶対に秘密にしておくニャ!」


「ああ、俺達は絶対に言わないから安心してくれ」


「ありがとうございます」

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