第98話 お土産


 ピンポーン


 ガチャッ


「ようこそ、立原さん」


「正義お兄さんいらっしゃい!」


「守さん、風華ちゃん、お邪魔します」


 今日は守さん達の例の高級マンションにお邪魔している。昨日まで母さんと出かけていた神奈川旅行のお土産を渡しに行こうとしただけだったのだが、せっかくなのでと食事に誘われてしまった。


「あ、これ神奈川県のお土産の生シラスと鳩サブレーと横濱ミルフィユです」


 持ってきたお土産を守さん達に渡す。あと神奈川土産は崎陽軒の焼売も有名なんだけれど、風華ちゃんにはお菓子とかのほうがいいかなと思って、ネットで調べてお土産ランキングの高いお菓子を買ってきた。


 母さんと旅行に行っていた時も、わざわざ横浜や鎌倉付近で何かあれば教えてほしいとお願いをしていたからな。


 守さんにはこれからもだいぶお世話になるだろうし、こういうお付き合いも大事だ。ちなみにお土産代は異世界で買った食材により浮いたへそくりから出しているから懐は痛んでいない。


「うわあ、正義お兄さんありがとう!」


「立原さん、ありがとうございます。ささ、どうぞ中へ」


 うん、やっぱりお菓子にしておいて正解だったようだ。あ、部屋の中に入る前に一応確認しておかないといけないな。

 

「あの、部屋の中に動物を入れてしまっても大丈夫ですか?」


「動物ですか? はい、それほど床を汚さないようでしたら大丈夫ですよ」


「床は汚さないので大丈夫です。ちょっとだけ羽が落ちちゃうかもしれないくらいです。フー助!」


「ホー!」


 俺の頭の上に隠れていたフー助が大きくなってその可愛らしい姿を現す。そして俺の頭の上から肩に移動してきた。俺の能力を知っている2人にならフー助を見せても大丈夫だ。


「うわ! 可愛いフクロウさんだ!」


「驚きましたね。身体のサイズを自在に変えられるフクロウですか……あ、もちろん部屋の中に入ってもらっても大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。いろいろあって召喚したフクロウです。名前はフー助っていいます。意思疎通もできるので部屋の中を荒らしたりはしませんので」


「召喚ですか……もはやなんでもありですね」


 守さんが苦笑する。まあいろいろと気になるところはあるのだろう。


「フー助ちゃん、よろしくね!」


「ホー!」




 部屋の中に案内されるとすでにテーブルにはたくさんの料理が並んでいた。


「僕は料理をしないので、すべてケータリングで申し訳ないのですが」


 ケータリングというが、よくあるチェーン店のケータリングとは全然違う。お寿司とかスーパーで売っているパックのやつとは次元が違うのだが……


「い、いえ、どれもとても美味しそうです」


 いや、お世辞とかではなく本当に美味しそうである。さすがにお金持ちはケータリングひとつとっても違うな。


「それではまずは食事にしましょう。フー助さんはなにが食べられますか?」


「なんでも食べられますから大丈夫です。普通のフクロウと違って、焼いた肉や魚とかでも喜んで食べますよ」


 いろいろな食べ物を食べさせてきたけど、基本的には人が食べられるものならなんでも食べれるようだ。今のところ一番好きなのは生肉のようだけどな。


「なるほど。それでは適当にお取りしますね」




 高価そうな料理をみんなで楽しんだ。うん、どれもケータリングとは思えないほど美味しかったよ。たぶん俺が持ってきたお土産よりも全然高価なんだろうな。


「……あの、正義お兄さん、フー助ちゃんに触っても大丈夫ですか?」


「もちろん。この首すじの辺りを撫でてあげると喜ぶよ」


 風華ちゃんはフー助に興味津々のようだ。さすがにフクロウと触れあえる機会なんて、よっぽどのことがなければないもんな。


「モフモフしていて温かいです! 大きな目がパッチリしていて可愛いですね!」


「ホー♪」


 テーブルの上にいるフー助を撫でてあげたり餌をあげている風華ちゃん。サーラさんの時も思ったのだが、小さな女の子がフー助と触れあっている姿ってとても癒されるよね。


「ああ〜可愛いよ、風華!! くっ、やはりうちでも何かペットを飼おうか悩むところです!」


 ……守さんはフー助を可愛がっている風華ちゃんの写真を熱心に撮っている。いつの間にかその手には高そうなカメラが握られていた。


 さすがに俺もこの姿を見て少しだけ引いていた。フー助もちょっとビクッとしている。しかし張本人の風華ちゃんはほとんど気にしていないようだ。


 よっぽどの精神的にタフなのか、守さんのこういう行動に慣れているかのどちらかだろうな。


 そんな感じで守さんと風華ちゃんとフー助で美味しいご飯を食べて楽しませてもらった。こっちの世界でフー助のことを唯一話せる人達だからな。またお邪魔させてもらおう。


 さて、安倍と渡辺と約束していたライブは来週だから、明日は久しぶりに異世界へ行ってこようかな。魚もまだまだあるし、リリスさん達にも魚料理を楽しんでもらおう。

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