第93話 結婚話
「とりあえず天災と呼ばれている変異種がいなくなってよかったですね。これでサーラさん達も引っ越す必要はなくなったわけですし」
「そうですね! 王都が天災によって壊されることがなくなって本当によかったです」
うん、王都に入る前に倒せて本当によかったよ。いくら王都の城壁が強固とはいえ、あの巨大な天災の侵入を防ぐことはできなかっただろう。
「……マサヨシ殿、その黒い仮面の男に心当たりはありますかな?」
「………………」
ドラゴンの時と同じで天災の情報もダルガさんとジーナさんから集めているから、たぶん気付かれているんだろうなあ。
「……ちなみになんですけれど、もし天災を倒した人が名乗り出たらどうなりそうですか?」
「国の者総出で囲い込もうとするでしょうな。なにせ300年間誰も倒すことが叶わなかった天災、あの大魔導士様ですら倒すことが叶わなかった天災を倒したのですからね。
王族や上流貴族から食事や夜会のお誘いが毎日のようにくるでしょうし、他にも身辺を探る者も現れたり、腕に覚えのある者達が自分の力を示そうと挑んでくるかもしれません」
「心当たりなんてこれっぽっちもないですね!」
いやだよそんな生活! なんで異世界に来てまでそんな面倒なことしないといけないんだよ。貴族達との夜会とか、いきなり腕試しを挑まれるとか本気で勘弁!
「……まあそちらのほうが我々にとってもありがたいですな。
「そうですね、あの他では絶対に食べられない料理やお菓子が食べられなくなるのは、避けなければなりません!」
……いろいろな日本の料理やデザートでだいぶ餌付けてしまったようだな。サーラさんやジーナさんがデザートに夢中になるのはわかるが、まさかダルガさんまで料理やお菓子に夢中だったとは。
「でもよろしいのですか、マサヨシ様? 確かあの天災には莫大な懸賞金がかけられていたと思います。それにあの天災の素材でしたら、考えられないような大金で売却できると思いますよ。
多少不自由な面もありますが、最高の名誉や地位も与えられて、何不自由なく優雅な生活を送れます。
お金も億あるから、もうこれ以上は必要ないんだよな。この異世界で永住する気はないから名誉も地位も今のところは必要ない。
「……そうですね、
「っ!! あっ、ありがとうございます。私もマサヨシ様とこうしてお話できてとても楽しいです! いつもご馳走いただいてばかりなので、今度お礼をさせてくださいね」
「いえ、こちらもいつもお世話になっていますから」
「……どう思います、隊長?」
「……姫様のほうはわかりやすいのだがな。マサヨシ殿の反応はなんとも言えん。好意はあるのだが、恋愛までは進んでいないといったところか」
「……意外と見ているんですね。隊長は恋愛方面にはうといと思っていました」
「……すでに女房と娘もおるぞ。姫様もどこぞの傲慢な貴族や他国の者と政略結婚させられるくらいなら、マサヨシ殿のような方と一緒にいるほうが幸せだろう。幸いマサヨシ殿はエルフという種族に偏見もないようだ」
「……そうですね。サーラ様も間違いなくそちらのほうが幸せでしょう。それにそのほうが我々も美味しいものにありつけますしね」
「……それよりもジーナ、お主のほうはどうなんだ? 相手はおらんのか?」
「……私には何にも聞こえません」
「あの、どうかしました?」
なぜかダルガさんとジーナさんがヒソヒソと話をしている。2人とも同じ隊だけにいつも仲が良さそうだ。
「いえ、大した話などしておりませんよ。ジーナに良い男でも現れないかなと話しておりました」
「隊長!!」
「ジーナさんみたいに素敵な女性なら、相手の人なんていくらでもいそうですけどね」
外見もとても綺麗だし、魔法使いとしても優秀で第三王女の護衛に付いているエリート。大魔道士オタクであることだけに目をつぶれば、かなりモテるのではないだろうか。
「マサヨシ様……」
「おいジーナ、お主がマサヨシ殿と良い雰囲気になってどうするのだ……」
「むう……羨ましいです」
いや良い雰囲気というがただ褒めただけなんですが。
「そうですな、もしも天災を倒した男が現れたなら、国王様が姫様と結婚させようとするかもしれませんな」
「「「結婚!?」」」
サーラさんと結婚!? いやいやまさかそんな!
でも日本でも江戸時代とかには、強い武将に政略結婚で娘を差し出すとかあったようだしな。
「天災を倒した男、伝説の大魔導士様と同じ圧倒的な力を持つ英雄、国王様としてはなんとしても王家に迎え入れたいでしょう。姫様には2人の兄がおり王位継承順位も低いので、国王様は英雄であるマサヨシ殿と結婚させようとする可能性は高いですな」
「サーラ様と結婚、素晴らしいです! マサヨシ様、すぐに名乗りをあげましょう!」
「いやいや、俺が天災を倒したというのは仮の話ですからね! それにそんな強制的に結婚させられるなんてサーラさんだって嫌でしょう!?」
「マサヨシ様と結婚……マサヨシ様と結婚……マサヨシ様と結婚……」
駄目だ、サーラさんはなぜか遠い目をしながらぶつぶつと呟きながら帰ってこない。どうしよう、この状況!?
ビーーーー!!
カオスな状況の中、突然けたたましい音が部屋中に鳴り響いた。
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