第86話 祝日の火曜日


 さて今日は学校だが、今週は明日の火曜日が祝日だから他の週より多少は楽だ。とはいえ個人的には火曜日が祝日なのが一番もったいない気がするんだよな。


 月曜か金曜が休みで三連休なのが一番いいのは間違いない。次は木曜であと1日頑張れば週末だ。それと水曜が祝日なら週のちょうど真ん中で、残り半分頑張れるという気になる。火曜日だけは、たった1日だけ学校に行ったあとに1日休んで、またあと3日も学校に行かないといけないからな。まあどうでもいい話だ。


「ホー!」


「フー助、外では静かにな」


 頭上の髪の毛に小さくなったフー助を隠して学校に連れていく。俺が異世界に行く時は留守番してもらうことが多くなりそうだし、日本ではなるべく一緒にいてあげよう。何か不測の事態がおきたら転移魔法で俺の部屋まで送ってあげればいいだけからな。




「そういえば、今話題の工場の爆発事故とテロ事件の動画が削除されちゃったらしいよ」


「そうなんだ」


 相変わらず安倍と渡辺の情報は早いな。


「しかも他の人がこの動画をあげてもすぐに削除されちゃうらしいぜ! 巷じゃヤバい組織が目を付けたんじゃないかってもっぱらの噂だぞ!」


「へ、へえ〜そうなんだ」

 

 ……動画を消したら消したでとんでもない噂が広まりそうだな。ヤバい組織ってなんだよ。


 しかし本当に守さんは自分以外があげた動画を削除したりできるんだな。警察に協力していると言っていたが、サイバー警察とかいうやつなのか? うーむ、謎だ。


 それにしても最近は学校生活も平和だな。露原達は相変わらず俺には近付いてこないが、約束はちゃんと守っているようで、誰かをいじめたりはしていないようだ。


 そしてちゃんと約束を守っていれば、俺が手を出すことはないことがわかったのか、今では前と同じで楽しそうにリア充の生活を送っている。


 多少思うところはあるが、最近は俺も学校生活を楽しんでいるし、あえてこちらからあいつらに関わる気はない。まあ約束を破っていじめをしたり、俺や俺の周りの人に危害を加えようとしたら遠慮はしないけどな。




 月曜日の授業が終わる。どうやらフー助も一緒に学校に行って特に問題なさそうだな。一緒に授業を受けていて楽しいのかは微妙なところだが、学校が終わったあとに聞いてみたら一緒に学校に来たいようだ。ういやつめ!


 唯一気をつけなくてはいけないのは体育の授業だ。特にサッカーとかでヘディングとかしたらさすがにヤバいかもしれない。まあ大魔道士も召喚獣と共に多くの敵と戦ってきたらしいから、同じ召喚獣であるフー助もよほどのことがなければ大丈夫だと思うがな。

 

 




 さて今日は祝日の火曜日だ。日曜日にロウアンの街でたくさん買ってきた魚や貝を楽しもうと思う。とはいえ、スーパーで魚を買うことはよくあるが、切り身や刺身ばかりで加工されていない魚を三枚におろしたことはない。


 ここはまたサーラさんの屋敷の料理長であるファラーさんに教えを乞うとしよう。


 というわけでいつも通り異世界の扉を通って、転移魔法で王都のルクセリアの街までやってきた。今回もフー助はお留守番だが、せっかくだから料理ができたら呼んで一緒に食べよう。


 相変わらず第一王子と第二王子がサーラさんを守るために派遣した護衛の人達が大勢いる。屋敷の門番の人に案内されて屋敷の中に入れてもらう。今日もサーラさんは習い事中らしい。


「こんにちは、ファラーさん。何度もお願いをして申し訳ないです」


「お久しぶりでございます、マサヨシ様。こちらこそ勉強させていただいております。先日ようやくシュークリームを再現することができましたよ。マサヨシ様にいただいたものには到底及びませんが、それでもサーラ様にはなんとか及第点をいただきました」


「おお、おめでとうございます。販売とかをするなら自由にしてもらって構いませんからね。次に目指すのはショートケーキとかですか?」

 

「ありがとうございます。そうですね、クリームができたので次はフルーツタルトなどに挑戦してみようかと思っております。もしかしたらシュークリームのレシピを登録させていただくかもしれません。もちろんその場合の使用料はマサヨシ様にお支払いされますので」


 どうやらこちらの世界の食材でもシュークリームを作ることができたようだ。そもそもこちらの世界の人達には卵を生で使うという発想がなかったらしい。


 生で使えるくらい新鮮な卵を探すのにだいぶ時間がかかり、バニラのような香りのする木を探すのも大変だったとかでなんとか完成することができたとのことだ。


「それで本日は何をお求めでしょうか?」


「今日は魚の捌き方を教えてほしくて来ました。ロウアンの街で新鮮な魚や貝を手に入れたのですが、魚や貝を捌いたことが一度もないんですよ」


「なるほど、収納魔法を使うことによって、新鮮な魚や貝をいつでも食べられるというわけですか。収納魔法とは本当に便利な魔法ですね。


 もちろん引き受けました。この辺りでは川魚か、干物や酢漬けにした魚しかありませんからね。とても楽しみですよ」

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