第85話 寄生虫
「お待たせしました、ご注文のセットになります。こちらの塩か魚醤をかけてお召し上がりください」
「ありがとうございます」
おお、お皿の上にはいろいろな種類の焼かれた魚や貝が乗っている。どれもジュウジュウといい音を立てて、とても美味しそうな匂いをしている。
こっちの皿が塩で、こっちの醤油のような色をしたものが魚醤か。確か魚醤というのは小魚や魚の内臓とかを塩と一緒に漬け込んで発酵させたものだったか。
「いただきます!」
まずはこの串を刺した魚の切り身に塩をつけて食べてみよう。
うん! ふっくらとした身からジューシーな旨味が溢れ出てくる。そしてこのパリパリとして脂が乗った皮がこれまた美味い! シンプルな塩味だけだが、それが魚の身本来の美味しさを引き出している。
どれどれ、今度はこの魚醤で食べてみよう。……なるほど、醤油よりも味がだいぶ濃いんだな。それにすごく独特な風味をしている。う〜ん、好きな人は好きなんだと思うけど、個人的には焼いた魚にあわせるのは微妙かな。これなら醤油のほうが美味しそうだ。
しかし、魚醤は魚醤でお吸い物だったり、ご飯と合わせると美味しいかもしれない。市場で売っていたら買ってみよう。
いやあ、どれもとても美味しかった。それに日本じゃ見たこともないような形をした貝もあって面白かったな。
「お皿をお下げしますね」
女性の店員さんがお皿を下げに来てくれた。海が近いからといって水着というわけではないらしい。……残念。そもそも異世界に水着というものがあるかはわからないけど。
「はい、どれもとっても美味しかったです。それにいろいろな種類の魚や貝を楽しめました」
「満足していただけたようでなによりです。新鮮なお魚や貝は海の近くでしか食べられませんからね」
「ごちそうさまでした。ちなみになんですけど、この辺りで魚を生で食べられるお店ってありますか?」
「……お客さん。魚を生で食べられる店なんてありませんよ。どんなに新鮮な魚や貝でも生で食べるとお腹を壊しちゃいますよ」
「あっ、そうなんですか……捕れたばかりの魚なら大丈夫だと思ったんですが」
海の街なら魚を生で食べられると思ったんだけどな。
「なんでも魚や貝には目に見えないくらいの小さな虫がついていることがあって、それが悪さをしているらしいんですよね。火を通せば大丈夫らしいんですけど」
ああ、もしかして寄生虫か。川魚は危険というが海の魚もダメなんだな。それに異世界の寄生虫とか、とてもじゃないが試してみたいとは思えない。確か浄化魔法を大魔道士から継承していたが、あれはアンデットの魔物とかにしか効かないからな。
……いや待てよ。寄生虫といえども生物だ。もしかしたら気配察知スキルで寄生虫がついているかわかるかもしれない。あとで市場に戻って試してみよう。
いやあ大漁、大漁!
お店で食べて美味しかった魚や貝を市場でいろいろと買ってくることができた。気配察知スキルで寄生虫がいるかを見抜けるか試してみたが、バッチリだった。
気配察知スキルを使って市場に並んだ魚を見てみると、その魚の何匹かの体内には細長い生物の反応があった。おそらくはこれが寄生虫だろう。つまりこれさえ避ければ刺身にして食べても問題ないはずだ。
今日はもう遅いから一旦収納魔法でしまっておいて、また来週に楽しむとしよう。さすがにこんな大きな魚は捌いたことがないから、サーラさんの屋敷の料理長であるファラーさんにお願いしないと駄目だな。
相変わらず困った時はサーラさん達頼みになるな。ちゃんと何かしらお礼も持っていくとしよう。
「ホー!」
「ただいま、フー助。お留守番ご苦労さま」
俺の部屋に戻るとフー助が出迎えてくれた。誰かが待っていてくれるというのは思ったよりも嬉しいものだな。ひとり暮らしをしている人がペットを欲しがるのもわかる気がする。
「お土産もあるんだけど、食べれそうなのはあるかな?」
「ホー?」
ロウアンの街で食材を買ったあとに、屋台のほうも回ってみた。美味しそうな貝や魚の串焼きなどを提供しているお店が山ほどあって、観光客で賑わっていた。
少し食べ歩きをして楽しんだあとにお土産をいろいろと買ってきたのだが、問題はフー助が食べられるかどうかだ。
ネットで調べたところ、肉の他に魚を食べるフクロウもいるらしいがフー助はどうなんだろう? スーパーに行った時はあまり魚には興味なさそうだった気がするが。
「ホー!」
あ、どれも食べられるのね。しかも自分の身体のサイズを小さくして、お腹いっぱい食べようとしている。やだこの子賢くて可愛い!
召喚獣は食事をしなくて大丈夫だと大魔道士の資料には書いてあったけど、普通の食事もできるようだ。
フクロウって何かを食べている姿も可愛いんだな。フー助の食べている姿を見ているだけで、とても癒される。
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