第84話 海の街
異世界から帰ってきてからフー助を連れて少し日本を散歩してみた。フー助は身体のサイズを変えることができるらしく、数センチまで小さくなり俺の頭の上にのっけることができた。
これなら俺の髪の毛に隠れて他の人からは見えないし、監視カメラに映ったとしても、とても小さいからよっぽどのことがなければバレたりはしない。
フー助はやはりある程度の俺の知識を持っているらしく、車やテレビなどを見てもそれほど驚いたりはしていなかったな。
召喚獣の餌は数ヶ月に一度、小さな魔法石を与えればいいそうだ。とはいえ魔法石は小さいものでも100万円するから、なかなか餌代はかかりそうな感じである。召喚するのにも魔法石を使うし、召喚獣を持っている人を見たことがないのはこういう理由か。
とはいえそれだけではなんだか味気ないので、買い物ついでにフー助が食べられそうなものがないか、スーパーで探してみた。
ネットで調べてみたがフクロウは肉食性で、ネズミや小鳥、昆虫などを食べるらしい。本格的にペットとして飼うためには冷凍ラットなどを餌として与えないとダメらしい。
市販の肉も食べるらしいのだが、普通に売っている肉は血抜きがされており、栄養が不足する可能性があるそうだ。
これは普通に飼うにはなかなかハードルが高い。冷凍ラットを小さくカットして餌としてあげるのは俺には無理だ。それに冷凍ラットを家の冷凍庫に入れておいて、もし母さんが冷凍庫を開けてしまったら卒倒してしまうだろうな。
スーパーをまわりながらフー助が喜びそうな食材を探してみる。フー助の感情はなんとなく伝わってくるのだが、興味を持ったものはやはり肉コーナーにあるものだった。
家に帰って異世界で買った肉を生のままあげてみると喜んで食べていた。うん、冷凍ラットとかは無理だからうちでは生肉をあげるとしよう。
さて、異世界で連絡を受け取ることもできるようになったし、日曜日の今日は前から行こうとしていた海の街に行くとするか。
フー助にはお留守を頼むわけだし、お土産を買ってきてあげるとしよう。昨日の移動地点まで転移魔法で飛んで、そのあとはいつも通り走って海の街に向かう。
昼食を挟みつつ、夕方にようやく海の街であるロウアンの街に到着した。
「これが異世界の海か!」
うん、潮の匂いなどは日本の海と変わらないが、とても澄んだ青色をしている。元の世界と違ってゴミもないし、海水も汚染されていないからこれほど綺麗なのだろう。写真でしか見たことはないが、沖縄の海と似ているな。
街並みも青色と白色に統一されており、海の色にとても合っており、これこそが海の街といえるほどの絶景となっている。沖のほうには魚を捕っている漁船がいくつも見えた。
そして何より驚くべきことは人の多さだ。いや、もちろんトータル的な人口は王都であるルクセリアのほうが多いのだろうが、海の近くにある市場の混雑さは異世界に来て一番だ。おそらく、この街の漁師や商人、観光客などの大半がこの市場に来ているのだろう。
「さあさあ、今日の朝イチで捕ってきた魚だよ! 安くしておくよ!」
「ちょいとそこのお兄さん、捕れたてで新鮮なマキュロ貝はいかがだい!」
「種類の多さならうちがこの辺りじゃ一番だよ! ちょっとでいいから見てってくれよ!」
この辺りは捕れたばかりの魚や貝などを売っている区画のようだ。色鮮やかで、日本では見たこともないような魚や貝が売られていた。中には2mを超えるほどの大きな魚までも売られている。
さすがに魚の切り身を買ったことは何度もあるが、大きな魚一匹を買って調理したことはないな。先に屋台とかで調理済みの海産物を食べてみて、美味しかった魚や貝を買っていくとしよう。
市場の中をさらに進むにつれて、焼いた魚や貝のいい匂いが漂ってきた。これこれ、やはり海の市場といえば、捕れたばかりの魚や貝をその場で焼いたお店が最高だよな。
どれどれ、どのお店も混んでいるな。焼いたものをその場で食べられるお店が多いようだが、せっかくならゆっくりと座って、いろいろな料理を楽しんでみたいな。よし、少し並んでいるが、人気のありそうなあの店に決めた!
少し並んだあとに席に通された。
「お待たせしました、こちらの席にどうぞ!」
「はい」
綺麗な女性店員さんに案内されて、とある一席に案内された。
「こちらのメニューが当店のおすすめとなっております。どれも今朝捕れたばかりの新鮮なものを使っていますのでおいしいですよ!」
「ありがとうございます」
店員さんからメニューを受け取る。どれどれ、スライプサーモン、バルシュリンプ、イシナミ貝にオオビノス貝。……うん、簡単な説明が書いてあるが、メニューを見てもよくわからないな。おすすめにある、いろいろな種類の魚や貝が食べられるこのセットにしよう。
基本的には焼く料理だけみたいだ。この店は焼き料理専門なのかな? できれば刺身とかも食べてみたいんだけどなあ。あとで店員さんに聞いてみるか。
「すみません、このセットをお願いします」
「はい、少々お待ちください」
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