第82話 召喚獣
「まずはお願いされていた魔法石のほうですね。運良く大きな魔法石をひとつ手に入れることができました。あとは小さな魔法石が合計で84個あります」
ギルダートさんがジャラジャラと黒くて小さな石を袋から取り出していく。見た目は綺麗な黒い宝石みたいなものだから、なんだか宝石商にでもなった気分だ。
「大きな魔法石は4000万Gです。そして小さな魔法石はひとつ200万Gなので1億6800万Gなので合計で2億800万Gになります」
……ん? 聞き間違いかな。2億って聞こえたぞ。確かこの世界では宿代や飯代を日本の円換算すると2Gで1円だから1億円……
「あの、聞き間違いでなければ2億Gと……」
「はい、できるだけ多くの魔法石をご要望でしたので、様々な伝手を使って市場に出回っている魔法石を買い取りました。いやあ苦労しましたよ!」
「………………」
……苦労してくれちゃったんですね。どうしよう今更そんなにいらないとは言えない。というかそもそも手持ちがそんなにないのだが。大丈夫だよね、変異種とドラゴンの素材で賄える範囲内だよね?
「そしてこちらが変異種の買取金額分ですね。1体が1000万Gの15体分で1億5000万G、オリジナルの変異種が5000万Gで合計2億Gとなります。
こちらがドラゴンの買取金額です。爪1本が1000万Gの15本分で1億5000万G、鱗が1枚500万Gの50枚で2億5000万G、すべての買取金額の合計で6億Gとなります。こちらから魔法石の2億800万Gと端数を除いて4億Gがマサヨシ殿にお渡しする金額となります。
先日の変異種討伐のお礼も含めて買取金額は高めに設定したつもりなのですが、こちらでいかがでしょうか?」
……おう、頭がフリーズしそうだ。4億G……2億円……話が大きくなりすぎて、小市民である俺にとってはあまり現実味がない。
「……あっ、えとはい。その金額で大丈夫です」
ギルダートさんはいい人だし、冒険者ギルドマスターである人が不正をするとは考えづらい。むしろお礼といって、相場より高い金額で買い取ろうとしていないかのほうが心配だ。
「ちなみにその金額で冒険者ギルドのほうは損とかしていないですよね?」
「ご心配ありがとうございます。確かに金額的にはあまり利益はでない買取金額となっておりますが、大手の鍛冶屋や貴族達に大きな恩を売れますし、この街での取引が活発になりますので、我々にも十分利益がございますよ」
なるほど、さすがにそのあたりはギルダートさん達の方が詳しいに決まっているか。とりあえず冒険者ギルドが損をしないなら、ありがたくいただくとしよう。
「承知しました。それではそちらの金額でお願いします」
「かしこまりました。この度は本当にお世話になりました。またあまり公にしたくないような素材の買取がありましたらこっそりと教えてくださいね」
ギルダートさんは唇に人差し指を当ててウインクをした。普通のおっさんがそんなことをしても気持ちの悪いだけだが、ナイスミドルなギルダートさんがそれをすると様になるからずるいよなあ。
しかし4億G、日本円にすると2億円か。しかもまだドラゴンの素材も半分以上残っているし、もうこちらの世界でお金に困ることはなさそうだ。手持ちが数千万Gから一気に10倍くらいに増えたな。
そしてなにより今回の変異種の討伐で、この魔法石をこんなにたくさん手に入れることができた。これでいろいろと試してみることができる。
というわけで大魔道士の家に戻ってきて、前々から試してみたかったことを試してみようと思う。それは何かというと……
「よし、これで準備は整った!」
大魔道士の家の庭に小さな魔法石を砕いて作った粉で魔法陣を描いた。そしてその陣の中央に大きな魔法石を置く。これは俺が狼型の変異種を倒して手に入れたほうの魔法石だ。
これから何をするかというと悪魔の召喚儀式……などではなく、召喚獣の召喚だ。
大魔道士の遺した資料の中に召喚について詳細に記載されているものがあった。だがそれには魔法石が必要とあり、王都に行った時も軽く探してみたが見あたらなかったから諦めていた。それが今回の変異種討伐戦で偶然にも手に入れることができたというわけだ。
そしてジーナさんから貰った大魔道士の資料の中に、大魔道士が召喚獣を使役していたとの記録も残っていた。どうやら大魔道士は時に獅子型の召喚獣を召喚し、それにまたがり戦場を駆けていたらしい。
召喚獣に関しては知性を持ち、人の言葉を話すこともあるようだ。そしてその姿や大きさ、強さは召喚した者によって様々らしい。
俺の場合はどうなるんだろうな? 大魔道士の力を継承したから同じ獅子型の召喚獣になるのか、それとも狼型の変異種の魔法石を使うから狼型の召喚獣になるのか、それともまったく別の召喚獣になるのか?
こればっかりは実際に召喚をしてみないとわからない。大魔道士が遺した資料通りに、魔法陣を描いて中央に魔法石を置いた。あとは魔法陣に魔力を込めて召喚と唱えるだけでいいらしい。
「召喚!」
魔法陣が光り輝き始めた!
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