第80話 協力の申し出
「立原さん、コーヒーでよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
水魔法を使って俺の力を見せたあと、場所を移して守さんの部屋に案内された。この部屋もとても広い。一部屋だけで俺の家以上の大きさがありそうだ。部屋の中にはたくさんのPCモニタやタブレットなどがあった。
「すみません、ここから先は風華には内緒にしたかったもので。先程の話の続きですが、まずは立原さんにお礼をしたいと思っております。
うちは他界した両親が多大な資産を持っておりました。このマンションもその資産の一部です。他にもかなりの資産がありますので、ぜひお礼を受け取っていただきたいです」
こんな暮らしをしているこの人にとってはお金には余裕があるんだろうな。だがしかし……
「……いえ、お金のために風華ちゃんを助けたわけではありませんので」
正直にいうとこっちの世界のお金はものすごく欲しい……でもそのお金は受け取っては駄目だ。見返りを求めて人を助けようとしたわけではない。ものすごく欲しいけど……
「ですが、もし本当に助けが必要になったら、その際は手を貸してくださると助かります」
と綺麗事をいってもお金の力は偉大だ。もしも本当に困った時には助けてもらえるとありがたい。大魔道士の力でもできないことはたくさんあるからな。
「……立原さんならそう言われるかもしれないと思っておりました。わかりました、なにか困ったことがございましたら遠慮なくお伝えください。
立原さんほどではございませんが、私もかなりの力があると自負しております。いろいろとお力になれると思いますよ」
「はい、そのときはよろしくお願いします」
「それとこちらからひとつだけ立原さんにお願いがあります」
「……なんでしょうか?」
神妙な面持ちで守さんが俺を見つめてくる。……俺の能力を見て何かに利用するつもりではないよな?
「もしもまた風華や私が大きな怪我や病気になったら、もう一度助けていただけないでしょうか? もちろんその際はきちんと対価を払わせていただきますので」
ああ、そっちか。それくらいなら問題ないだろう。
「わかりました。おふたりの知り合いくらいまでなら構いませんよ。ですが、俺が治せるのは外傷だけで病気に関しては治すことができませんので、その点はご理解くださいね」
「本当ですか、ありがとうございます! 外傷だけですね、それだけでも十分助かります!」
すごい喜びようだ。外傷が治せるというだけでも、大怪我をした時の保険にはなるからな。
「まあこれも何かの縁ですからね。ですが、知り合いに伝える際はくれぐれも俺のことは秘密にお願いしますね」
「ええ、もちろんですとも!」
あとはこの人たちを信じるしかないかな。うちよりもよっぽどお金は持っているし、裕福な生活をしているから、お金欲しさに俺の情報を誰かに売ることはないとは思う。
「最後になるのですが、私に立原さんの活動を手助けさせてもらうことは可能でしょうか?」
「手助けですか?」
「はい。ここからは推測になるのですが、立原さんは自分の生活に支障の出ない範囲で、事故や事件が起きた時に人助けをしていたのではないですか?」
「……はい」
「その人助けのお手伝いをさせていただければと思います。ひとつ目は立原さんの行ける範囲内で起きた事故や事件の中で解決可能なものがありましたら、立原さんに連絡するということができます。もちろん立原さんの負担が増えすぎないよう、お伝えする情報は厳選致します。
私は日中は家におり、警察の情報収集の手伝いをしております。幸い他界した両親が多くの遺産を遺してくれまして、働かなくとも良い生活を送れるので、まあ趣味のようなものですね。その際に得られる情報などをお伝えすることができます」
趣味で警察の情報収集の手伝いってそれもすごいな。確かに情報をもらえるのはとても助かる。工場の爆発事故の時はクラスメイトが話してたのを偶然耳にしただけだし、テロ事件の時にはたまたま朝のニュースを見ていて気付けたにすぎない。
大魔道士の力を継承して以来、頻繁にニュースを見るようになったが、それでもニュースには上がらない事件や事故もたくさんあったはずだ。
「もうひとつは警察への連携や連絡ですね。前回のテロ事件のような事件や大きな災害の際に、うまく警察や救急隊と連携が取れるとより効率が上がると思われます。
例えば、大きな地震や津波で人命救助を行う際に、救急隊はこちら側から捜索し、立原さんには反対側から捜索するというように、連携が取れればより多くの命が救えるかと思います。
あとは警察への連絡ですね。今回のテロ事件のような事件後の報告や後始末など、それと警察にいろいろと便宜を図ってもらったりすることもできます」
なるほど、確かに警察や救急隊と連携が取れると効率がだいぶ上がりそうだ。そして警察に便宜を図ってもらえるってやばいな。
「俺にとってはメリットしかないのですが、守さんにとって何かメリットはあるのですか?」
「……特にありませんね。警察から礼金がもらえる時もありますが微々たるものです。強いていうなら人の力になれたという自己満足を得るためですかね。ですがそれをいったら立原さんも人助けをするメリットはあるのですか?」
「……いわれてみれば俺も自己満足のためですね」
何か見返りを求めて人助けをしているわけでもない。だが、人を助けられる力があるのなら、俺にできる範囲でそれを使って人を助けたいと思っている。
「そんなものですよ。人が人を助けるのに理由なんていらないと思いますね。それに男なら誰しもヒーローというものに憧れるものじゃないですか?」
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