第79話 重度のシスコン?
「ふう〜ご馳走さまでした。どれもとても美味しかったです」
ついついお腹いっぱいになるまでご馳走になってしまった。異世界の料理も美味しいが、やっぱり日本の料理は日本の料理でとても美味しいな。
「気に入っていただけて何よりです。それでは今後のお話をしましょうか」
「……はい」
そうだよな、俺の素性や俺が持っている能力についてはすでにこの2人にはバレてしまっている。
「まず、立原さんの能力や個人情報、爆発事故やテロ事件に関わっていたことは誰にも言わないと誓います」
「私も誓います!」
「はい、ありがとうございます」
俺からもこれだけはお願いしたかった。今俺の素性がバレているのはこの2人だけだからな。制服を着たまま救助活動をしたのはあの時だけだったから、それ以外から漏れる可能性は少ないはずだ。
「そういえばドライブレコーダーのほうはどうなっています?」
「はい、そちらのほうはすでに事故を起こした者から回収しております。どうぞ、こちらになります。データのコピー等もございません。
この映像を見た者は事故の相手と私達と警察になりますが、この映像を回収した今では立原さんまで辿り着く可能性は限りなく少ないでしょう」
ポケットからドライブレコーダーを出して俺に渡す守さん。最初から俺に渡す予定だったのか。
「なるほど。そういえば事故の相手はどういう相手だったんですか?」
「一般家庭の主婦のかたでした。今回の事故は自動車事故には珍しく、自動車自体の問題でその人の過失はほとんどありませんでした」
へえ〜珍しい。たしか交通事故の原因は脇見運転やドライバーが安全確認を怠った場合がほとんどだったはずだ。たまにCMの間にやっている車に問題があってリコールとかしてるやつなのかもしれないな。
「……もしも飲酒運転や脇見運転などの過失で妹を巻き込んだ事故を起こしていたのなら、社会的に抹殺していたんですけどね」
怖っ! どうやら守さんは怒らせてはいけないタイプの人っぽい。
「こら、お兄ちゃん! そういう怖いことは冗談でも言っちゃダメでしょ。お兄ちゃんはいつも大袈裟すぎるのよ」
いや、たぶんこのお兄さんはマジだよ!? 俺を見つけ出すのに普通はあそこまでやらないし、普通はやれない。
「風華も風華だよ。だからあれほど毎日登下校は車で送り迎えすると言っていたのに。最近は変質者とかも多いんだから、可愛すぎる風華はいつ狙われてもおかしくないんだからな」
「絶対に嫌! 小学6年生にもなって兄が送り迎えするなんて恥ずかしすぎるよ! もし来たら絶対に許さないからね!」
「がはっ!」
ダメージを受けて机に突っ伏せる守さん。
「この前だって男の子の友達と話してただけなのに、その子のこと調べて私には相応しくないとか言って本当にウザいよ!」
「ぐはあああああああ!」
さらに追い討ちを受けて悶える守さん。ああ、あれだ、この人重度のシスコンかもしれない。
「すみません、兄はいつもこんな感じなのでしばらくはほっておいてください」
「あ、はい……」
どうやら慣れているようだ。よかった風華ちゃんはまともっぽい。
「あの正義お兄さん、もし言いたくなければ言わなくても大丈夫です。やっぱりあの力って本物なんですか?」
……おっと、やっぱりそこは一番気になるところだよな。一応2人にどこまでまで話すかも考えてきている。てか守さんはまだダウンしているんだけどいいのかな? まあ聞こえてはいるか。
「うん、信じてもらえるかはわからないけど、ある日いきなり身体中に鋭い痛みが走って10時間くらい動けなくなったんだ。
そのあと目が覚めたらいきなり身体が痩せてしまっていて、身体能力が急激に上がっていろんな能力に目覚めていたんだ。風華ちゃんを治すことができたのもその能力のおかげなんだよ」
自分でいいながらあまりにも胡散臭いな。漫画やアニメでもそんな設定なかなかないぞ。
一応嘘は言っていない。そして異世界のことについてはさすがに言えない。うちの天井が異世界につながっているとバレるのはさすがにまずい。
「信じます! 私、事故の時に意識はなかったんですけれど、途中から身体中が温かくなってきて、うっすらとした意識の中で正義お兄さんの顔が少しだけ見えたんです。その時なんとなくなんですけど、この人が助けてくれたんだなって感覚でわかりました!」
あの事故の時にまだ意識があったのか。それにしてもよくこんな話を信じてくれるよ。まあもう能力のことはバレてるし、実際に目の前で見せてあげてもいいか。
「うわ、すごい綺麗……」
水魔法で何もないところから球体状の水を出して宙に浮かせる。無重力状態での水の玉の動きと同じ感じだ。
たぶん、水魔法が使えるようになったら誰でも一度はやると思うよ。色を付けたり、中に泡を入れたりすると本当に綺麗に見えるんだよな。さすがにこれは手品とかでもできないだろ。
「……これはすごいですね、触っても大丈夫ですか?」
「ええ、もちろん。面白いですよ」
いつの間にか守さんも復活したようだ。指で触れるとポヨンポヨンと弾かれる。
「うわ、面白いです!」
「おお、これは綺麗だ」
楽しんでくれて何よりだ。さて、これで俺に能力があるという証明もできただろう。話を元に戻そう。
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