第45話 地震
……うん、最後にリリスさんから命に代えてもなんて言葉が聞こえたのは気のせいかな。うん、気のせいということにしておこう。
いやね、今の俺の感覚でいうと軽い気持ちでドラゴンを狩りに行こうと思って行ったら、もっと重い使命を持った人達がいて、その人達が必要だったものを売ってあげたら、奴隷になってもいいとまで言われてちょっと重いわけですよ。
とはいえやっぱりハーレム物とかはいいなあ。あんな綺麗なお姉さん達に囲まれて暮らすとかもう人生のゴールじゃん。渡辺だったら死ぬほど嬉しいんだろうな。あっ、渡辺が好きだったのはイヌミミだったか。
……閑話休題。
さてリリスさん達のことについては一旦置いておいて今目の前にある問題について考えよう。
……そうこのバカでかいドラゴンの解体を俺一人でやらなければいけないという大問題である。今は時間がないから、それではまた(キリッ)なんて格好つけている場合ではなかった!
明日くらいにまたエガートンの街を訪ねてみてリリスさん達に助けを求める?いや、男としてそんな格好悪いことはできない!ただでさえ俺は何やら崇高な使命の為にドラゴンを狩りに来ていたと誤解されているわけだし。
かといって街の冒険者ギルドに持っていくなんて目立つことはしたくないし、完全にお手上げである。諦めて一人で作業するしかないわけか……
「……ふう今日はここまでだな」
ドラゴンの亡骸を収納魔法でしまい、大魔導士の家の庭に移動してから解体作業を始めた。今やどんな動画でもネットに出回る時代だからな。『一般人でもできる猪解体方法♡』という動画を、一般人は解体作業なんかしねえよ!とツッコミを入れながら、参考にしてドラゴンを解体していった。
昨日ワイバーンの解体方法を冒険者から教えてもらっていたことや筋力を大魔導士から継承したこともあって解体作業自体は順調に進められたが、いかんせんドラゴンの身体が大きすぎる。
頭と内臓部分はそのまま収納魔法で収納し、ひたすら枝肉を切り分けていく。最初に首を一刀両断したのも実はよかったようで、あれで頸動脈から血が噴き出して血抜きになったようだ。ちなみにドラゴンの血は結局木の樽5つ分にもなった。
少なくとも解体が終わるまで数日はかかりそうだ。こりゃ今週は学校から帰ったらひたすら解体作業だな。
そういえば月曜日の今日から磯崎の謹慎期間が解けるんだっけ。
ただでさえ憂鬱な月曜に嫌なことを思い出して更に憂鬱になってしまった。さすがに威圧スキルで結構強めに脅しておいたから、もうこちらにちょっかいを出してくることはないと信じたいが、磯崎のやつはかなりの脳筋だからなあ。一応警戒しておいて損はないだろう。
俺の不安は特に当たることはなく、磯崎は特に俺と目を合わせようとすることなく、そのまま月曜日が終わった。
そしてそのまま金曜日まで特に大きな出来事が起こるとこなく過ぎていった。まあ最近は忙しすぎたから、たまにはのんびりと普通の高校生活を送るのも悪くはなかった。……いや、普通の高校生活ではないな。どこの世界に放課後黙々とドラゴンの解体作業をする高校生がいるのだろう。
ちなみに解体のほうは毎日頑張っていたおかげで肉の方は一通り終わった。後の問題は鱗なんだよな……だってあれ一枚ずつ皮から剥がして残った皮の身を綺麗にしなくちゃいけないんだぜ? 何かあった時のために10枚くらいは確保しておいてあとは収納魔法で放置だな。
それにしてもこれでようやく待ちに待ったドラゴンの肉を食べることができる! なんとなく解体が終わるまでは食べるのをお預けにしていたからな。
せっかくだからサーラさんの屋敷に持っていって屋敷のシェフに調理をお願いしてみようと思う。解体が素人だったからせめて調理はプロにね。本当はお金を払ってもいいから解体もプロにお願いしたかった。
キーンコーン、カーンコーン
金曜日の授業も終わり、あとは帰りのHRを残すのみである。
「はあ〜やっと今週も終わったな。」
「まあ来週頑張ればライブがあると思って乗り切るしかないよね」
「ほんとそれな」
来週の日曜日は佐山さん達アイドルグループのライブがある。すでにチケットも予約しているし、飯島さんや川端さん、佐山さんにも連絡済みだ。初めてのライブかあ、楽しみだなあ。
グラッ
「うおっ!」
「きゃ、地震!」
地震だ、それも少し大きめだな。
「びっくりしたあ、結構揺れたんじゃないのか?」
「震度5くらいはあったよね」
スマホでネットの情報を見てみる。どうやら震源地は隣の県で、震度6弱あったようだ。こっちの方も5弱はあったらしい。
「5弱か〜でかいと思ったわ」
「びびった、てか電車止まったりしてねえかな?」
まあ今の日本だとこんな反応が普通だよな。震度7近くないとそれほど驚きもしない。
「おお〜結構揺れたな。それじゃあ帰りのHRを始めるぞ〜」
うちのクラスの担任が教室に入ってきた。まあ5弱くらいなら特に心配する必要もないか。
「ねえねえ、今の地震で隣の県にある工場が爆発したらしいよ!」
「マジ〜、怖くね! 原発とかじゃないよね?」
「それはだ〜じょぶ! よくわかんないけど、なんかの機械の工場らしいし!」
「っ!!」
「こらそこ、スマホはしまえ」
「は〜い! すみません」
隣の県で爆発事故? 大丈夫なのか?
こっそりとスマホで検索してみるともうツイッターに情報が上がっている。地震の少し後に爆発があり、今も燃え盛る工場の中に何人か取り残されている人がいるらしい。
「すみません、ちょっと体調が優れないので早退させてください!」
今日の授業は終わったし残りは帰りのHRだけだ。ここで早退しても問題ないだろう。早退で多少は目立ってしまうが仕方がない。今は少しの時間が惜しい。
「ああん、何を言ってるんだ、立原? あと10分くらい我慢しろ! ほらさっさと席に戻れ!」
今はその10分が惜しいんだよ!
「だいたいなあ、最近痩せたからってちょっと態度が生意気になってないか? この前だって……」
その痩せたことに最後まで気付かなかったのはあんただろうが! 駄目だ、このクソ担任と話していても時間の無駄だ! てい!
「それになあこの前も……うっ!」
睡眠や麻痺と同じ下級状態異常魔法をかけ、担任を下痢にする。
「……すっ、すまん、すぐに戻るから少し自習にしててくれ!」
「先生まだ話が終わってないです。俺も体調が悪いので帰ってもいいですよね?」
「うぐ、いや、すぐに戻るから立原は席に戻っているんだ」
教室を出ようとするが、クソ担任の手首を掴んだ。
「先生、急に体調が悪くなったんです、早退させてください!」
「わっ、わかった! 急な体調不良じゃ仕方ない、帰っていい! だっ、だから早く手を離してくれ〜」
「はい、それでは失礼します」
よし、勝った! 俺が手を離すと担任は急いでトイレへ走っていった。俺もカバンを持って教室を出た。
しかし、このままじゃ俺と話した時に担任が急に下痢になってしまって不自然だな。このクソ担任には悪いがこれからしばらくの間、俺以外の誰かと話している時にちょくちょく下痢にさせてもらおう。俺も本当はそんなことしたくはないのだが、本当に残念だ。残念で仕方がないんだよ。
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