第22話 お金儲けの方法
さて異世界で街に行くこともできたし、破滅の森にいる魔物の素材が高額で売れることもわかった。臨時収入も手に入ったし、これで向こうの世界での生活はなんとかなる。
あとはこっちの世界で何をするかだな。いつ異世界への扉が繋がらなくなるとも限らない。その場合は大魔導士から継承した力が消える可能性だってゼロではない。それなら今のうちにこちらの世界で一生を生活できるくらいのお金を稼いでおきたい。
……異世界で力を得てすることが金儲けとか何をしているのだろう。いや、お金はとても大事だ! みんなだって異世界に行き来できるとしたら、まずは金儲けのことを考えるはずだ!……はずだよね?
どうしようかな、一番手っ取り早いのは向こうで手に入れた金貨や宝石とかをこちらの世界で売り払うことだ。これがすぐにできて、しかも簡単に大金を得ることができそうな手段だ。
とりあえず素材を売って得た金貨と懸賞金で得た大金貨の半分は前に持ってきていた宝石と一緒に俺の部屋に隠してあるから、全部合わせて数千万くらいにはなると思う。
だが、こんなに大量の金貨や宝石を換金すると怪しまれたりする可能性も高い。というかそもそも未成年って売れるんだっけ? 後で調べてみるかな。
「おい立原、聞いているのか?」
あっ、やべ! 今は授業中だったのだが、上の空で考え事をしているのがバレてしまった。
「はい、聞いています」
「……じゃあこの問題を解いてみろ」
「はい」
スラスラスラ
「うん、ちゃんと聞いていたようだな。座ってよろしい」
あぶない、あぶない。大魔導士の力を継承してから頭の回転や記憶力も上がっているから勉強も前よりもできるようになった気がする。元から勉強は中の上くらいはできていたしな。
う〜ん、それにしてもなんかいい金儲けの方法はないかな? こういう時は異世界ものの小説をよく読んでいる渡辺に聞いてみよう。
「う〜ん、いいお金儲けの方法ねえ?」
放課後、先週渡辺と一緒にたい焼き屋に寄る約束をしていたので、たい焼き屋に向かいながらもし異世界でお金を稼ぐならどうするか聞いてみた。
前から一億円あったらどうするとか、くだらないことを話していたし、特に変に思われることもなかった。
「確か異世界から持ってきた金貨とか美術品とかをオークションとかで売ったりしている小説があったね」
なるほど、オークションとかなら母さんの名義を借りれば俺でもできるか。いや、売っている物の経歴とかを見られると説明が難しいか。
「異世界でお金を稼ぐなら香辛料とか砂糖とか石鹸を持っていって異世界で売れば簡単に儲けられそうだけど、案外こっちの世界でお金を稼ぐのは難しそうだね」
そうなんだよなあ。異世界でお金を稼ごうとするなら商売をしたり冒険者になって魔物を狩ったりすればすぐに稼げるが、こっちの世界ではそう簡単にはいかない。
「こっちの世界で魔法が使えるなら回復魔法で難病を治してお金をもらうとか? 悪いことをしてもオッケーなら銀行の金庫に転移魔法で移動して完全犯罪とか? 株価とか操作できるならデイトレーダーとか? あとは魔法を動画で撮ってユーチューバーとかもありかも」
なるほど、いろいろ考えがあるな。回復魔法は怪我には使えるけど病気には効果がないから一つ目の案は駄目か。犯罪系は駄目、さすがにそこまでしてお金が欲しいわけじゃない。株価操作なんてできすぎたスキルはないし、ユーチューバーとか手品師は目立ちすぎそうだし駄目だ。
「なかなか難しいな。やっぱり金貨とか異世界のものを売るのが一番なのかな」
「あとはヤクザとか犯罪組織を潰してそのお金を奪うのもありかも」
「……ギリギリセーフなのかな?」
限りなくグレーだがありっちゃありか。厳密に言うと間違いなく犯罪だが、悪人相手からなら心も傷まない。社会のためにもなって金も稼げる一石二鳥の方法だ。悪どそうな犯罪組織を探してみるかな。
「でも異世界なんて妄想してないでちゃんと勉強もしないと駄目だよね。もうすぐテストだし」
「それな。あ〜あテスト勉強とかマジだるい……」
もう少しすると中間テストだ。テスト勉強してる暇があったら異世界を探索したいんだけどなあ。
お目当てのたい焼き屋に着き渡辺と2人でたい焼きを買い、近くのベンチに座って食べる。やっぱりたい焼きは基本の小倉が一番ですよ。ちなみにちょっと前から天然たい焼きというたい焼きが出始めたが、天然は1匹か2匹焼きの鋳型で丁寧に焼いた物で、養殖物は5匹〜10匹を一気に焼ける鋳型を使った物だとか。これ豆な!
「……っん!」
久しぶりに危機察知スキルに反応があった。前回の交通事故からほぼ一週間くらいか。今回はここから少し距離がある。
どうやらこのスキル、病気で亡くなりそうな人には反応しないのかもしれない。危機察知スキルの範囲内を地図で確認してみたところ、いくつかの病院が含まれていたが、病院にこのスキルが反応することはなかった。
「ごめん、渡辺。ちょっと急用が入ったから今日はここで別れるわ!」
スマホを取り出して緊急連絡が入ったように見せる。
「うん、それじゃあまた明日!」
「おう!くだらない話に付き合わせて悪かったね。また明日!」
いろいろと為になる話を聞けた。今度お金を稼げたら渡辺には何か奢ってあげよう。よし、危機察知スキルの反応した方向に急がないと!
「頼む、命だけは助けてくれ!」
「もう嫌、いつまで経っても奥さんと別れてくれないじゃない! あなたを殺して私も死ぬわ!」
……なんだか昼ドラ真っ最中な現場に来てしまったようだ。ここはとあるラブホの一室、1人の下着姿の女性が包丁を振り回して裸の男を追い回している。男は血だらけで部屋の中を逃げ回っているが、足を切られて動けず最後の命乞いをしているっぽい。
「わかった、妻とは別れる! おまえがしたこともすべて許すから結婚しよう!」
すごいなこの男、この後におよんでよく不倫相手にそんなこと言えるな。
「……本当に?」
あれこの不倫相手もしかしてチョロい? 俺が間に合ったのもうまく不倫相手を説得していたからなのかもしれない。
「でも駄目! もうあなた嘘には騙されない! 私と一緒に死んで!」
「助けてくれええええ!」
おっと昼ドラを見ている場合じゃない。例え二股浮気男とはいえ人殺しを見逃すのはまずい!
「スリープ!」
「ふぁ……」
「はぁ……」
ふう、とりあえず間に合って良かった。2人を眠らせて浮気男の怪我を命に別状がないくらいにだけは回復魔法で治す。こう言う男は多少は痛い目にあった方が世界のためだよな、うん。
部屋の電話からフロントに電話して男が血だらけで倒れていると連絡して早々にラブホを出る。2人がこの後どうなるのかはわからないが、さすがにこれ以降は当事者の問題だ。浮気が奥さんにバレて、離婚してたくさんの慰謝料をふんだくられてしまえばいいとか思ってしまうな。
それにしても生まれて初めてのラブホがこんなのとか嫌すぎる。何が悲しくて人様の浮気劇を見なくちゃならないんだよ!
しかし今度からこの格好をなんとかしなければいけない。気配察知で他の人には気付かれずに移動することはできるが、監視カメラには映ってしまう可能性がある。
今回は上着を脱いで顔を隠して監視カメラを避けてきたから大丈夫だとは思うが、もし映ってしまったら学生服で学校も一発でバレてしまうし、なにか変装用の服を用意しておいた方がいいだろう。
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