第十三話
「はあはあ……」と苦しそうに息を整えている夢芽。
「じゃあ、俺は先に帰るとするよ」と服を整えてカラオケボックスを後にしようとすると。
「待ってください……先輩っ♡」
その言葉に俺は足を止めた。
「どうした?」
「……もう一回、シませんか?」
「いや、もうないよ」
さすがに生でシたくはない。
これで妊娠とかめんどくさいことになりたくない。
「いいえ」
スクールバッグを漁り出す夢芽。
「私、お守りとして財布の中にいつも一つ入れてるんですよ?」
こんなにバカみたいにシておいて、なお俺の性欲が尽きないのは不思議でしょうがない。
でも、そんなこと考えたところで何かなるわけでもないし、どうでもいいじゃないか。
「わかった、もう一回な」
「はい、先輩っ♡」
○
「はあはあ」と私は息を整える。
……疲れた。
「いや〜やっぱり真奈ちゃんはサイコーだわ」とコップを持ち水を飲む喜一先輩。
また、私は汚れてしまった。
「このメイド服はどうしたらいいですか」
「ん〜下着ごと買うわ〜」と財布を漁り出す喜一先輩。
「二万でいいか?」と一万円札を二枚私に向ける。
「はいっ、喜一先輩っ♡」
自分が何をしてるのかなんてわかっている、私は狂っている。
もし仮に光一くんがこれを知ってしまったらそれでも光一くんは私を好きでいてくれるだろうか?
ううん、そんなはずはない。
「じゃあ、そろそろ帰るとするか♪」
「はい♡」
ごめんなさい、光一くん。
「あっ、ダチの話だけどさっき連絡きてよ、今週の土曜にお前の家じゃなくてホテルでってなったわ。だから二日間はなしな。あと……お前の彼氏に会いたいわ、今度学校で話す機会が欲しい」
「え……なんでですか?」
「だってお前、彼氏とはまだシたことないんだろ?」
「はい……」と下を向く。
こんな汚れた私を光一くんは抱きしめてくれるのだろうか。
「だからだよ、お前の彼氏にもお前とヤる気持ちよさを知ってもらいたいからよ、お前とヤるように誘導してやるよ」
その言葉に私はまるで花が咲くようにパッと明るくなり。
「ほ、ほんとですか!?」
「おいおい、俺とヤるときより嬉しそうじゃないか」
「す、すみません」
私自身、もう光一くんとヤりたいけれどダメだと拒否してしまっている。
だから誰かの力を借りてヤれるのだったら……。
「まあいいや、とりあえず名前教えろ」
「はい……♡」
これで私は光一くんとできる!
そう思うと先程までの罪悪感が消えて嬉しさへと変わっていた。
「彼氏とヤる際はしっかりゴムはしてくれよ。妊娠とかつまらんことになんなよな」
光一くんとできるなら別に妊娠したって構わないよ、だって光一くんとの子なんだもん。
そんなの宝物じゃん、自分の命よりも大切だよ。
ああ、喜一先輩って優しい人だなあ……。
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