第十二話

 私は昔から姉さんに全てが負けて育ってきた。

 

「真奈ちゃんって可愛いね!」

「真奈ちゃんって頭がいいよね!」

「真奈ちゃんって運動できるよね!」

「真奈ちゃんって優しいよね!」


 何もかもが姉さんの方が私より優れていた。

 だから、私は何のために生きているのか分からなくなっていった。

 だって、私ができることは姉さんができるしそれも私よりもよくできるから。

 何度か姉さんよりもと、頑張ったことがあった。

 でも──。


「真奈ちゃんってすごい!」


 そのどれもが結局、姉さんの方が上だった。

 だから、私は決めた。

 一生姉さんの劣化版として生きていこうと。

 気づけば自分という人間が"無"だということに気づいた。

 


 桜が散りつつある、中学三年の春のことだった──。


 俺、黒宮光一が彼女──白原夢芽とはじめて話したのは雨の中、傘もささずに公園のブランコに座っている彼女に声をかけたのがきっけだった。


「……あの、雨に濡れて風邪ひきますよ」と俺は彼女が入るように上から傘をさす。


 同じ中学の制服だよな。

 傘もささずに何をしてるのだろうか。

 あとは誰かに少し似ている気がするが、気のせいだよな。


「…………」

「ん?」

「……ありがとうございます」とこちらを振り向く彼女の目はどこか寂しそうで死んでいた。


 恋人ととの失恋とかか?

 他に考えられるのはいじめ?

 ……わからないな。


「風邪ひくし、送ってくよ」

「いえ、大丈夫です……いつも私、こうやって放課後はブランコに触りながらぼーっとしているので。雨に濡れるのなんて慣れてますよ」


 いや、そうはいってもだな。


「いや、ダメだ。ほら、立って」

「いえ、大丈夫です……この世界に私の居場所などないので」


 本当に困った人だな。

 これなら喋りかけなければよかった。


 一度助けようとした人を見捨てれないのが俺の悪い癖だ。


「もう、わけがわからないこと言わないで、ほら」


 俺をじーっと見る少女。


「はあ……まあ今日はそうするとします」

「いやっ、今日はじゃなくて雨の日は傘もささずにこんなところにいちゃダメだろ」


 おかしな人だな。

 とりあえず説得ができてよかった。


「じゃあ……」

「?」


 少女は立ち上がり、俺の両手を勢いよく掴む。

 同時に俺は傘を離した。


「私がこうして一人でいないように……私の相手をしてください!」

「えっ? 言っている意味が……?」

「えーっとですね、放課後は毎日、私のおうちに来てください。そうすれば、私が家にいる意味もできますから」


 大変なことになってしまった。

 初対面の相手であるこの子とこれから放課後はこの子の家で遊ぶ!?

 いや、でも、それでこうして公園でぼーっとしているのもなくなるのか。


 正直、彼女がここでこうしているのは風邪を引く以外にももっと重要な理由があった。

 それは、彼女みたいな可愛い人が公園に一人でいたら誘拐されてしまうかもしれかいからだ。


「わっ、わかった。じゃあ、約束。あー、俺は黒宮光一高校三年生、よろしく」

「はいっ、先輩っ。私は白原夢芽です、二年生です。先輩は姉さんと同じ歳なんですね」


 姉さん……?

 ん、白原ってもしかして。


「え、もしかして白原真奈さんの」

「はい、妹です」


 だからか、だから彼女を見て誰かに似ていると思ったのか。


 これが俺が白原夢芽とであったきっかけだった。

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