4話 朝チュン

 

 柔らかな唇が、私の唇を塞いだ。

 荒い吐息を吐きながら、お互いの口をひたすらに侵していく…。

 ねっとりと舌と舌を絡めあって、息継ぎをするために一瞬だけ口を離した。

「ぷぁっ…」

 つぅ〜っと光る涎の橋が掛かる…。

 橋は私の舌からハナの舌まで掛かっている。その涎の橋がポタリと落ちていく…。

 それがあまりにもエロくて、一瞬だけ息を吸ってから、身体を前に突き出してもう一度口の中を侵略し始める。

「んぅっ…ハナぁ!」

 嬌声が溢れて、身体が火照る。

 キスしてるだけで、性欲と食欲が同時に満たされていくのを感じる…。

 ああこれはダメだと思った。

 ブレーキの効かない車みたいに、止まらない。止められないっ!

 あふれてこぼれそうで、でも物足りなくて切なくてッ!

「ハナぁ!ハナぁっ!!」

「ユウちゃんっ!あ、はげしぃっ!」

 光を求める亡者のように、私はひたすらにハナの身体を蹂躙する。

 肌と肌を押し付けて、秘部を擦り合わせたり、獣の如く快楽のままに体を動かしていく。

 

 貪って、求めて…波に呑まれていく。


 いつもとは違う快感の波と、満たされていくお腹。

 気が付けば私は、恍惚な表情でハナを見つめていた。その顔は快楽の波に攫われて、のぼせたように呆けている。

「あぁ、だらしなくてえっちな表情カオ

 とろん…と、とろけた瞳と目が合った。

 ハナはふにゃって微笑むと「幸せ…」とだけ呟いて私の唇を奪う。

 

 ああ、本当にだめだ。

 だめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめ!!!


「もっとシたくなるじゃない!」

 口角を歪めると第二ラウンド。

 もちろん私の一方的な快楽の押し付け合い、結局…搾性は朝まで続いて、気が付けば私達は疲れ果てたように眠っていたのだった。



 カーテンの隙間から太陽の光が差し込んだ。

 ああ、なんて眩しいんだろう。鬱陶しい事この上ないなと心の中で文句を垂れながら瞼を開ける。

「あっ…」

 視界に映るのは服一枚も着ていない、あられもない親友の姿。

 そうだった、私昨日ハナと…。


 思い出した途端に、ぼんっ!と蒸気が立ち昇る。熱烈でねっとりとした記憶が一気に蘇って、更に顔が熱くなる。

 まさかハナと朝チュンすることになるなんて…!!

 熱くなる顔のまま、私はハナを見つめて数十秒…。


 キス…したいなァ。

 なんて思いながら、私はもう一度瞼を閉じた………いや、閉じちゃダメな気がする。

「そ、そうだった!今日学校だよ!!」

 そうなんです、今日学校なんです!!

「ハナ!今日学校だよ!!」

「ん、うぅん……あ、ユウちゃんおはよう」

 うっすらと瞼を開けて、ふにゃっと微笑む。そのあまりの可愛さに心臓が跳ねたけど、それどころじゃなかった。

「起きて起きて!学校だよ!?」

「んー…サボってもいいんじゃない?それよりこのまま続きしようよ…」

「サボるのはよくないよ!」

「ユウちゃんは真面目だなぁ…」

 むぅ…と不満げな表情を浮かべると、ハナは大きく溜息を吐いて立ち上がる。

 けど、布団からスラリとした裸体がそのまま現れて、私は思わず目を見開いた。

「わ、わっ…!」

「あれ?興奮した?」

「し、してないしてない!さっさと服着てよぉ!」

「はいはい…」


 その後、家に制服があるので一度家に戻った私はもう一度ハナの元へ行くという二度手間をしてから学校に行く事になった。

 道中、少し空腹を感じてしまい不安を抱きながら…。



「あのさハナ、どこか変なところはない?」

 ふと、気になる事があった。

 それは搾性のこと、サキュバスといえば相手を搾り取るまで絞った後、干からびて死んでしまう…なんてお話があるくらいだ。

 もしもハナの体調に変なところがあったら…と思うと気が気でならなかった。

「ん?別になんともないんだけど…強いていうなら」

「い、言うなら?」

「昨日の夜が激しすぎて身体がちょっと気怠いかも」

 クスッと意地悪そうに微笑んで、緊張してた自分の糸がぷつんって切れると意地悪してくるハナに対して頬を膨らませる。

「もお!ビックリしたじゃん!…それはそれで、昨日はゴメン」

「謝らなくていいよユウちゃん、次も期待してるからね!」

「う、うん…」

 次。

 そう、次もあるんだった。

 私は呪いのせいで毎日エッチな事をしないと生きていけない。だからと言って毎日ハナにああいう事をさせる事に、すごく申し訳ない気持ちになる。

 けど、昨日の事を思い出すと同時に、あの時味わった味を思い出す。


 あれは今まで食べてきたものよりも美味しかった。

 ずっと味わっていたい、浸っていたい…そう思わせるほどの美酒。

 だからこそ、その為だけにハナとエッチする事に抵抗があるっていうか…。

「ユウちゃん」

「あ、ごめん考え事してた…」

「私はユウちゃんの彼女なんだから、だから心配しなくていいからね?」

 そう微笑んで、ハナは私に顔を近付けるとお腹をさすりながら言った。

「だからね?そのお腹を私で満たして、ね?」

「……う、うん」

 冷や汗を流しながら、こくりと頷く。

 ハナ…私達まだ付き合ってないよ。なんて言える訳もなく黙って頷くことしか出来なかった。

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