3話 お腹減った!
搾性の呪いを掛けられてから数時間、家に帰った私はものすごい空腹に襲われて、冷蔵庫からいろんな物を口に入れては青冷めた顔になって絶望していた。
「な、なんで…」
ぎゅるるるぅ…とお腹の虫が鳴る。
さっきから色んなものを食べてるというのに一向に空腹が終わる気配はなかった。
「これが…呪いの力」
拳に力を入れて握りしめる、恨みは勿論お姉さんの方に飛ばしてく。
これが呪いの力、まるで身体そのものが変わってしまったみたいだ…。
どれだけ食べ物を口に入れても食欲は収まらない、というよりもっと悪化していく始末。
呪いの悪質性に奥歯を強く噛みながら、覚悟を決める…。
それは勿論、えっちな事をするということ!
背に腹は変えられない、私はスマホを取り出して親友のハナに助けを求めることにした。
「も、もしもし…ハナ?」
『ユウちゃん突然どうしたの?』
「そ、そのさ…」
『うん?』
「わ、わたしと!えっちしてくれないかな!!」
我ながらなんて最低な電話なんだ!!
心の中で大号泣しながら、やってきた静寂に身を震わせる…。
数秒ほどの無、私の心臓はドキドキと鼓動を打ち続け、破裂しそうになったところで。
ハナの綺麗な声がスマホから耳へと届いた。
『うん、いいよ』
「え、いいの!?」
『いいの!だってユウちゃんは私の親友だもん!いや、カノジョ…だもんね?』
最後の「カノジョ」が強調されすぎて怖いけど…うん、でも助かった。
飢える私は「ありがとう…」と何度も言ってから、ハナの家に向かうことにした。
◆
「お、おじゃま…します」
空腹で耐えられない。
飢えるお腹を右手で押さえながら、なんとか辿り着いた、私はハナの家で倒れそうになるのを我慢して家に入る。
玄関はすごく静かだった。
生活音がなくて、誰もいない!?と思ったけれど階段からとたとたと音がして、ゆるふわな髪の女の子がやってくる。
「あっ!ユウちゃん!!」
「ハナ、ごめんあんな電話して…」
彼女は江野崎ハナ、高校一年生で私の親友。
私より背は低いのに、どこか大人びていて私の目標の人物でもある…のだけど、最近はどこかこわいという印象がある。
私は突然あんなことを言ったことに何度も謝りながら事情を説明した。
別にお姉さんに口止めされてるわけじゃないし、そもそも信じられないからさっきまで起きた事を話した。
ていうか、信じられないよね?
だって呪いとかサキュバスとか!そんなのあり得ないし!いや、あり得たんだけどね?
ハナは全てを聞いた後、うんうんと深く頷いて…。
「じゃあユウちゃんはえっちしないと生きていけないんだぁ!」
なぜか凄く嬉しそうな笑みを咲かせた。
「あぇ?」
思ってもみない反応に変な声が出る。
こんな話、信じてもらえないと思ってたからかなり驚いた。
驚く私に対してハナはニコニコと笑って、「あっ!」と思い出したように服を脱ぎ始めた。
「ちょっ、は、ハナ!?」
「え?今からエッチするんでしょ?だったら脱がないと…」
一枚、一枚と身を包んでいた衣服が無くなっていく。
布の擦れる音と興奮するハナの吐息、私はそれをただ見ているだけ…。
衣服を脱ぎ終わって、下着姿だけになったハナは私を見て妖艶な笑みを見せた。
ごくり…と生唾を飲む。
すごく…お腹が減る。
ぐぎゅぅ…とお腹の虫が鳴った。
私は思わず隠すけれど、音に気付いたハナはクスリと笑った。
「本当にサキュバスになっちゃったんだ」
「は、ハナ?」
「昨日、ユウちゃんがこういう事はやめようって言い出した時すごく悲しかったんだよ?でも、よかったぁ…!」
「隣のお姉さんには感謝しないとっ!」
「あ、あのこわいんだけど…」
「ユウちゃん」
「は、はい…!」
「お腹いっぱいにしてあげるから、服脱ごっか?」
◆
ベッドの上に裸体が転がっている。
私はそれにまたがるように、荒い吐息を吐きながら見つめ続けていた。
はぁ、はぁと息がうるさい。
異常なまでの空腹感が私を襲う。
まるで犬みたいな私は、何もせずにただハナをじっと見つめていた。
「やらないの?」
艶かしい声で尋ねる。
その声が耳からするりと入ると、ゾクゾクっと背筋から快感が走った。
私は言葉を返さずに、こくこくって首を縦に動かすと。
ハナの唇に私の唇を近付けた。
柔らかな唇が重なる。
キスなんて何度もしてるのに、今回のはいつもと違った。
味が…広がった。
口の中というより身体の中心から全身に広がるように、すごく美味しい…表現も出来ないような味が広がった。
「な、なにこれっ…!?」
突然すぎて、私は思わず顔を離した。
くらくらと目眩がする…。
もっとしたいって身体が疼く。
発情したみたいに吐息と心臓がうるさくて…。
「あはっ、ユウちゃんすごい顔してる」
ハナの声で一瞬我に返った、ハナは面白そうにクスクスと笑って鏡を見るように促す。
私は、言われた通りに横にある姿見を見た。
「うわぁ…」
ほのかに赤い身体、蕩けた表情、だらしなく垂れた涎。
まるで、お酒に酔った人みたいだった。
でも、それがすごくエロく感じる。
「すごくえっちだね…ユウちゃん」
「ぁっ…」
私の肩に手と顔を乗せて、ハナは意地悪な笑みを浮かべて私を見つめる。
「ねぇ、まだまだお腹減ってるでしょ?」
「………っあ」
挑発するような笑顔。
クスクスと耳元で囁かれて、私はハナの腕を掴んだ。
ぷつんって糸が切れた気がした。
「ハナ…ごめん」
「我慢、できないかもっ….!」
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