【12月24日 クリスマスイブ】



 遠くの水平線がのぞく世界に赤い線が広がる。


 まだ誰も浴びせていない太陽の陽光が空と海の間で水彩画のように一筆で横に描かれる。横浜の街の街灯がポツポツと消えていく。


 いま、まさに世界が洗いなおされていく。


 日付が変わるのではない、新しい日になったことをこの世界が教えてくれていた。


 昨日が消しとばされていく。


 なにもかも、無くなっていく。


「私の昨日は、終わったんだ。もう、終わったんだ」


 苺依は窓の外の景色をみながら、過ぎ去った昨日を見つめていた。


 街中は赤と緑色の装飾が忙しい。そこかしこで、クリスマスの讃美歌が流れる。


 世間では今日は恋人たちの日だ。


 そんな日は苺依にとっては来ることのない明日と知った。

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