黒き鏡の玉兎。

a letter

28. September

 確固たる目的を持って旅をしているが、決してそれが揺らがないわけではない。

 例えば夜、眠りに就く前に、己の使命について問答を繰り返すことがある。

 新天地は本当に見つかるのか。

 家で子どもたちの成長を見守っていたほうが良かったのではないか。

 理詰めの男は私の心情を理解せず、空の星月も答えを示さない。

 ……などと、人間らしくセンチメンタルめいた思考が及ぶことさえある。


 星と月だけでは、我らの求める新天地には辿り着けない。

 地図もまた、手元にない。


 こういうとき君はどうするだろうか。


 しるべがほしい。そう願ってしまうのは、我が心の弱さだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る