雨の日、とある文学徒と大学教員の、情事の後のちょっとしたひと幕のお話。
ひたすら高湿度なボーイズラブです。雨に濡れた痩身男性のこの艶っぽさたるや。
お話そのものは事後の対話が主なのですけれど、それでも(あるいはだからこそ)匂い立つような妖艶さのようなものを感じて、なんともたまらないものがありました。
読み口は分厚く重厚で、描かれた情景そのものはあくまでワンシーンでありながらも、そこにしっかり物語があるところが本当に良い……。
ふたりの関係の始まりと、そして唐突に訪れるその終わり。
紹介文にある通りふられるお話で、でもそれまで彼らの享楽的な関係は、どうしても退廃と停滞の匂いを感じさせるものがある。
唐突に訪れた終わりは、でもどうあれいずれはそうなるべきものでもあったように思えて、つまり悲劇ではあってもあくまで前に向かう形であるところが、この「前に向かわねばならないことこそが悲しい」ところが好きです。
甘い夢の終わりのような、なんとも言いようのない切なさを感じさせてくれる作品でした。