5話 観覧車デート

「お!きたきた!」

「千章連れてきたぞ。」

沙羅は2人が来たのを発見すると、手を振りこっちだよと合図をする。

どうやら彼女と色羽は先に待ち合わせ場所へ到着していたようだ。


「よし!じゃあ皆揃ったし観覧車へごー!」

「ちょっ、沙羅待って!」

「なんか沙羅気合い入ってんな。」

「観覧車が楽しみなのかな?」

今日のメンバーが揃ったことを確認すると、彼女は色羽の腕を引っ張りながら観覧車へと走る。

その後を元気だなぁと思いながらも、巽と千章はゆっくりついて行く。


「わぁ、ライトアップされてて綺麗だね!」

「でしょ!はい、じゃあお二人共お先にどーぞ!」

「へっ?」

「えっ?僕?」

目的地の前につくと、色羽はカラフルな観覧車を眺めながら目を輝かせているようだ。


その様子を見て沙羅はにっこりとすると、彼女と千章の背中を押して先に二人を観覧車に乗せた。

2人は戸惑いながらも向い合せで観覧車へ乗るも、少しの間静寂に包まれる。


「あのさ…聞きたいことがあるんだけど。」

「ん?」

「保健室で呟いてたこと、あれってどういう意味だったのかなって。」

そんな中、先に沈黙を破ったのは色羽だった。

千章の目を見つめながら、数日前のことについて問いかける。


「…あの言葉聞こえてたんだね。あれは僕自身が恋人らしくいられてないなと思って、今のままだと友達と変わらないかもしれないって考えてたら自然と呟いてたみたい。不安にさせてごめんね。」

「そうだったんだ。実は私も同じなのかも。私呼び方も変わらないし、思えば友達の時と変わらなくてこのままじゃ嫌われちゃうかもって焦ってた。」


彼は彼女の目をしっかり見て、思っていたことを伝えた。

すると彼女も自身の気持ちを彼に話す。

どうやらお互い受け身になってしまい、行動が伴わなかったようだ。


「だからち、千章!私もっと頑張るから!」

「っ!色羽、嬉しいよ。」

色羽が意を決して名前を呼ぶと、彼は一瞬驚いた顔をしたがすぐ嬉しそうに微笑んだ。


そうしているうちに2人の乗る観覧車は色とりどりの光を輝かせながら、だんだん頂上へと向かっていく。


「僕も恋人らしくなれるように頑張るね。」

千章も彼女の気持ちにお返しをしようと思ったのか、色羽の前髪をあげると照れくさそうにおでこへそっとキスをした。

すると、彼女はキョトンとしながら顔は見る見るうちに赤くなっていく。


「あれ、もしかして期待した?」

「え?そ、そんなことないよ!!」

彼は頬を染める相手に少しいたずらっぽく話すと、色羽はさらに真っ赤になりながら慌てて否定をするも満更でもないようだ。


「色羽はほんとに可愛いね。じゃあもう一回?」

そんな彼女の様子に愛おしく思ったのか、千章は右手で1を表すと真っ直ぐ色羽を見つめお願いする。


「ち…ち、千章!」

「よくできました。」

彼のお願いに彼女はもう一度勇気を振り絞り名前を呼ぶと、千章はにっこりと微笑みながら彼女に口づけをした。


観覧車の頂上でキスをすると幸せになる。

ジンクスではなく、そんな幸せが2人にいつまでも続きますように。





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名前を呼んで 雪ウサギ @yukiusagi-839

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