2話 名前

「しのちーおはよー!」

「おはよう、色羽。今日も元気だね。」

朝校門前でいつもと変わらない挨拶を交わす2人。

そこへ彼女達を見つけた沙羅がやってくる。


「あ!色羽、千章おはよー!もしや一緒に来たのかな??」

「さらちーおはよ!って違うよ!!」

「おはよう、沙羅ちゃん。さっき会ったばかりだよ。」

彼女は挨拶をすると2人をからかうように話す。

色羽はその発言に頬を赤らめ反論するが、千章は至って冷静だ。


そんな話をしていると、千章は思い出したような表情をして、今日日直当番だから!と校内へ駆けていった。

彼を見届けたあと、校内へ向かいながら沙羅は1人になった色羽に疑問を問いかける。


「そういえば気なってたんだけど、もう付き合って3ヶ月?くらい経つのにまだしのちーって呼んでるんだね。」

「うん、呼びなれてるからそのままでもいいかなって。…なんかダメ?」

「いや、せっかく付き合ってるんだし、千章も名前で呼ばれたら嬉しいと思うんだけどなぁ。」


彼女の問いに色羽は平然とした様子で答える。

名前呼ぶことに特別感をいだいていないようだ。

色羽の反応に彼女は続けて、イメージしやすいように話す。


「ほら!色羽もさ、名前で呼ばれると嬉しくない?」

「確かに、嬉しいかも。」

「でしょ!?だからチャレンジしてみない?名前で呼ぶの!」

「そうだね。うん、頑張るよ!」

彼女の言葉を聞いて色羽も彼が喜ぶ姿がイメージできたのか、あだ名から名前で呼ぶことを決心した。


それが今回のことの始まりである。







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