名前を呼んで

雪ウサギ

1話 どーしても

「やっぱりムリだー!!」

昼休みの時間。学校の中庭に色羽の声が響き渡る。


「ちょっ!声大きいって!」

「あ!…ごめん。」

大きな声に驚いた生徒が何人か彼女をみている。

その様子に気付いたのか色羽は恥ずかしそうにベンチに座り直す。


「もー急にびっくりしたじゃん。うちまで変な目で見られたし…あ、もしかしてまだでうじうじしてるの?」

「はい、お察しの通りです…うぅ。」

彼女の友人沙羅はやれやれという表情でパンをかじりながら問うと、色羽はうなだれた。


「ふつーに名前で呼ぶだけなのになぁ、『千章』って!」

「それはそうなんだけど私、呼び捨てで名前呼んだことないからくすぐったくって。」

沙羅は彼女を横目に見ながらイチゴ牛乳を飲み干すとそう洩らす。

色羽も名前で呼ぶだけとは分かっているものの、どうしても前に踏み切れないようだ。

さて。なぜこのようになったかというと、それは数日前に遡る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る