第4話 双星の魔剣
深雪は左手をかざすと、数十発ものホーリネス・ リンケージレイ(聖炎の烈光)を発射する
詩織はその無数のホーリネス(烈光)を同じく数十発ものソーサリー(烈光)を発射して正面衝突させて迎撃する。
ホーリネス・ リンケージレイ(聖炎の烈光)などの遠隔ソーサリーを近距離で迎撃すると、爆発に巻き込まれてダメージを追ってしまう。
そのため遠隔ソーサリーによる攻撃に対しては防御する側も極力遠隔ソーサリーを使って迎撃するのが鉄則とされている。
深雪は後方に下がりながらさらに無数のソーサリー(烈光)を発射する。
ホーリネス、フレイム、フローズンアロー、サンダー
それを詩織はやはり無数のソーサリー(烈光)を発射して誘爆させる。
ソーサリー(烈光)の質量、破壊力は、圧倒的に深雪が上だ。
詩織はその数倍はある破壊力のソーサリー(烈光)に衝撃を与えて誘爆させているに過ぎない。
だが、数倍の魔導力の保有量を持つ深雪と遠隔ソーサリーで撃ち合い続ければ、いつか魔導力を消耗してエレメントを創生出来なくなる。
詩織は危険を覚悟で少しづつ前進していく。
何とか接近戦に持ち込まなくては。
詩織のリカを想う気持ちが、彼女を突き動かす。
ソーサリーの力を開放させる。
プロミネンス・フレイムレイ
灼熱の奔流の如きソーサリー(烈光)が無数に発射され、前後左右斜めに様々な曲線 の軌道を描きながら、あらゆる
角度、方向からソーサリー(烈光)が詩織に向かって襲いかかる。
深雪の遠隔ソーサリーが詩織の射程圏内を突破した。
詩織は爆発による多少のダメージを覚悟して、武器を精製する。
詩織は聖剣を創生すると、右袈裟から円を描く動きで一回転させて剣撃を放ち、プロミネンス・フレイムレイ(灼熱の烈光)を全弾爆発 させる。
いつものナイフではなく、長剣を選択したのは、射程範囲が大きく迎撃のしやすさを重視したからだ。
詩織は跳躍すると、さらにサーベルを創生して二刀流になる。
そして一気に斬り込んでいく。
深雪も、もう一本長剣を創生すると、二刀流になって剣閃を放つ。
キィィーン
激烈な火花が散り、エレメントが拡散される。
超高速の剣撃の嵐が続く。
2人の聖剣が衝突しあい、無数の火花と虹色の魔導力が噴水のように吹き荒れる。
一瞬で数発の剣撃が放たれ、それをお互いに迎撃し合う。
距離が少し離れれば、再び剣を消滅させてソーサリー(烈光)を発射する。
そして接近すれば、また剣を創生して剣撃を放つ。
時には片手剣でもう一方の手だけをかざしてソーサリー(烈光)を放つこともある。
数十、数百の剣撃とソーサリー(烈光)が暴風雨のように撃ち込まれていく。
それらが激突し、炸裂し合い、
消滅する。
一見戦いは拮抗しているかのようだったが、魔導力、経験、技量、その他様々な要因が重なり、詩織は少しずつ切り裂かれ、劣勢に追い込まれていく。
「そんなにあの娘の事が大事なの。詩織。
ほかの組織のスパイ(諜報員)であるあの娘が。
裏切り者のあの娘のことが。
あの娘の名前も知らないんでしょう?」
「お姉様、貴女は、あの娘の事を何も知らない。
あの娘の名前は、冬河リカよ。
少なくとも、私にとっては。
冬河リカ、彼女は私にとっての、戦友であり、掛け替えのない親友だわ。」
詩織が断固として、深雪の誘惑を拒絶する。
リカとの絆は、鋼鉄のように強固で、例え数分で数百人のトリプルSソーサレスを殺害した深雪でも太刀打ちできない。
リカと詩織の関係は、誰にも邪魔できない。
リカの事は、ずっと一緒にいた詩織にしか解らない。
中間距離になった瞬間、詩織が自動小銃を精製して弾丸を発射する。
深雪は聖剣でそれを弾くと、その聖剣で斬りつける。
勝ったと思った瞬間、詩織はその自動小銃で聖剣を受け止め、右手のサーベルで斬りつける。
深雪の魔導服が切り裂かれ、深雪は顔をしかめる。
「詩織、想像以上の成長だわ。」
詩織が、想像以上に強くなっている。
覚醒した詩織は、予想以上に成長している。進化している。
今まさに、聖天使として覚醒して、翼を拡げて羽ばたこうとしている。
まさかそこまで、あの女の事を気に掛けていたとは。
あの女に対する友愛や想いの力が、これ程までに強いとは。
手加減してほぼノーダメージで倒すつもりだったが、そうも言えなくなってきた。
詩織はさらに前進して剣撃の乱舞を繰り返す。
深雪は詩織の剣撃を後ろに下がって払いのけていく。
深雪お姉様は何か考えているー
だが、義姉が次にどんな策を打って来ようと、リカとの濃密な訓練で身につけたソーサリーの聖剣を撃ち込むのみ。
深雪は聖剣にパーガトリー・フレイムを付与すると、魔導剣を精製する。
そして、その灼熱の炎の剣を詩織に打ち込む。
詩織は両手の聖剣でそれを受け止める。
パーガトリー・フレイムが爆発し、詩織は滑りながら後方へと押し込まれる。
距離が出来た瞬間、深雪は遠隔ソーサリーを発射した。
高速回転する球状の竜巻が、周囲に稲妻を発生させながら飛んでくる。
詩織は両手ナイフを精製して、斬りつけて、迎撃しようとする。
その刹那、その暗黒の竜巻の中核にある、溶岩のように燃え盛る灼熱のエレメントの熱量と存在を感知する。
詩織は瞬時に、ソーサレスとしての本能で危険を察知した。
ナイフを消滅させ、そのエレメントを魔導の盾の防御に変換させ、側面に飛びのいて路面に転がり込む。
暗黒の竜巻が通常の烈光や灼熱の炎とは比べ物にならない、遥かに強力で巨大な大爆発を起こし、周囲を飲み込む。
ダークシェリング・インフェルノ
暗黒の竜巻の内部にある空洞に、つまり台風の目の中に、極小の人工の太陽を作り出し、爆発させる超高等技術のソーサリーである。
ソーサリー(烈光)や魔導銃の弾丸を周囲の竜巻が跳ね返し、至近距離に到達すると極大の大爆発を引き起こす特殊ソーサリーである。
収縮と膨張を繰り返す恒星が爆発する原理で、衝撃を与えなくても時間差で自動的に爆発させる事ができる。
地面を転がって距離をとり、辛うじて致命傷を避けた詩織が跳躍して深雪の射程距離内に突っ込んでいく。
またあれを撃たれたらまずい。
深雪の振り下ろした片方の剣が詩織の右腕を切り裂く。
詩織はすぐさま反撃して深雪の肩口を切り裂く。
さらに深雪は詩織の胸を切り裂き、詩織は深雪の左腕を切り裂く。
詩織は、相討ちに持ちこそうとしている。
そう読んだ深雪は2本の聖剣に再びパーガトリー・フレイムを付与すると、魔導剣を精製する。
そして、その煉獄の魔剣を詩織に叩きつける。
刃が詩織の身体に到達する前に、彼女の周囲を保護している魔導力の障壁に接触する。
そのため魔導剣が誘爆するため、彼女の身体を切り裂いて直接灼熱の炎を流し込むことは出来ないが、爆発の衝撃で彼女の身体を後方に下がらせる事ができる。
それでも距離を取られまいと、詩織は必死に踏みとどまって反撃しようとする。
詩織の剣閃が深雪の右腕をかすめる。
深雪は更に、2撃目、3撃目の魔導剣を放つ。
魔導剣が爆発し、灼熱の炎があふれ、衝撃波とともに詩織は後方へと滑りながら追いやられる。
深雪との距離が少し出来てしまった。
深雪は2本の剣を消滅させると、ダークシェリング・インフェルノを精製する。
深雪のかざした左手の先に、稲妻が収束して暗黒の渦が出現する。
インフェルノが精製され、発射される瞬間、詩織は2本の聖剣を消滅させてバスターソード(大剣)を精製する。
そして、右足を踏み出しその剣の先端で暗黒の竜巻に斬りつける。
武器をバスターソード(大剣)に変更したのは、少しでも距離を稼いで爆発によるダメージを緩和したかったからだ。
周囲の竜巻が切り裂かれ、内部の
灼熱の炎の塊が誘爆する。
極小の太陽が出現し、詩織と至近距離からインフェルノを発射した深雪がその灼熱の炎に飲み込まれる。
詩織は爆発の衝撃波で後方
に滑っていく。
深雪は再び、インフェルノを精製する。
更に詩織は跳躍し、その暗黒の渦を
バスターソード(大剣)で斬りつける。
極小の太陽が出現し、やはり2人はその煉獄の灼熱に飲み込まれる。
2人とも、インフェルノの爆発と灼熱の炎に飲み込まれているのは同じだが、保有している魔導力の量が違う。
防御力、耐久力とに深雪のほうが格段上だ。
後1度繰り返せば詩織の方が力尽きる。
万策尽きた。もはやこれまでかー
そう思われた時ー
「これで終わりよ」
諦めては駄目よ、詩織ー
詩織の魂に、リカの声が思念となって直接流れ込む。
絶命絶命の窮地に立たされ折れそうになる詩織の心をその声が引き戻す。
リカ。
最後の、インフェルノのが精製された。
詩織は再び二刀流の聖剣を創生する。
そして、渾身の力で前方へ跳躍して左手の聖剣で暗黒の渦に斬りかかる。
そして、暗黒の渦は誘爆しないで、一刀両断されて真っ二つに分裂する。
切断された暗黒の竜巻は半球状となって、その剣撃の衝撃で大きく引き離れる。
詩織が精製した魔導剣、ブリザード・ブレス・ソードの冷気が暗黒の渦の中に流れ込み、
一時的に内部の灼熱の温度を下げたのだ。
!!
深雪が驚愕する。
詩織はさらに一歩踏み出し、切断された2つの暗黒の半球の間から右手の聖剣で斬撃を放つ。
インフェルノが沸点に達し、爆発する。
極小の太陽が二人を飲み込み、消滅すると、魔導力が限界に到達した詩織が力尽きて膝をつく。
深雪はそれを見上げ、嘲笑するが、口から血を吐く。
深雪の肩から胸は切り裂かれ、心臓には折れた聖剣の刃が突き刺さっていた。
「詩織、私は貴女の、義姉なのよー」
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