第2話 親猫探し
要と夏は、子猫がいた場所から離れ、周りに親猫がいないかと歩いていた。
が、捜索は一向に進まなかった。
何故なら。
「……?……夏、あんま離れんな。猫いた時にチビ見せた方がわかりやすいだろが」
「アンタの睨みのせいで、周りが大惨事なのわかってないの?!わざとだよ!」
「目つきが
「親猫を見つけるどころか、見つけた猫も、関係ない人達もうろたえるわ逃げちゃうわ……生まれて初めて死んだふりする猫見たよ!!」
そう、要に相手を睨むつもりはあまりないのだが、目を凝らしているので相手からは剣呑な顔にどうしても見えてしまう。
その結果、要が猫を探す度に商店街の一部で小さな騒ぎが起きていたのだった。
「お、猫」
要は先程からの出来事を繰り返さないように、おもむろに猫を両手で抱えこんだ。
ハシッ。
??!…フシャアアア!
あ?
フギャ?!!
ブラーン。
「こいつ、おとなしくて助かんな。チビ、どうよ」
なん。
「ちげーのか。次だな」
「(また猫に死んだふりさせてるよコイツ……)って!っていうか!何で通じるのよ!……え?え?要、まさかこのコが何考えてるのか解るの?!」
「わかるっつの。夏もわかんだろ?」
「うそ……全然わかんない。え、うそでしょ?要、すごいじゃん」
夏は、ないない!とは思いながらも、いや要なら獣の本能同士で通じ合えるのかも……と思い、ちょっとだけ、そう、ほんのちょっぴりだけ羨ましくなった。
それどころか、もしかしたら要のすっごい才能なのかも、とも思い直し。
「ね、ねえ、要。ずーるーいー……私もこのコの気持ち、知りたいなあ……」
気になる、遠い昔から非常に気になる幼馴染のすごいところを不意に見せつけられたような気がした夏は、口を尖らせつつ要の袖を摘んで右に左にそっと揺らす。
だが、要の反応はつれないものだった。
「あー?何でわかんねーの?チビに聞いてみ?」
要の言葉に『ガーン!コイツ冷たっ!そしてどうして私だけ?!』と両頬を押さえた夏だったが、それでも動物と心を通わせたいという欲求に勝てず、要の肩付近に居場所が移った子猫に恐る恐る話しかけた。
「ね、ね。子猫ちゃん、おチビちゃん♪……私の言葉解っちゃったりしてる?」
なん。
「わかんねってよ。ま、勉強すりゃそのうちわかるんじゃねーの夏も」
「う……そでしょ?そんな……え?勉強?何の?」
「フランス語」
「………………ふざっけんなー!!!」
がすっ!
夏は要の腹にヤクザキックを叩き込んだ。が、またしても学生カバンで止められてしまっている。
「フランス語を話す子猫、どこにいんのよ!」
「そこにいんだろ?クマパンツみせんなっつの」
「……!!今、クマさんの顔が伸び切っても私に後悔はないっ……!カバンどけなさいよ!どけなさいよ!私の純情を返せっ!」
「純情な女がヤクザキックするかっつの」
「素で返されたっ?!」
顔を赤らめスカートの前を押さえながら、ぐりぐり男子の腹を攻撃する女子高生。
それをカバンで受け止めているイケメンコワモテの不良。
もともと有名な二人が今や、商店街で一番目立っている事を夏は知らず。
そして子猫は、要の肩あたりで支えられ、超安心!といったような緩み切った顔でうつらうつらしていたのだった。
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