第13話 大天使ツォルゼルキン
突如、空に現れたツォルゼルキンの姿は、無数の歯車が複雑に絡み合いながら動く壮大な時計仕掛けのようだった。
その威容には圧倒的な存在感があり、大森林の上に静かに浮かぶその姿は、まるで時をつかさどる神そのものが具現化したかのようだった。
「何あれ…? 歯車で作られた巨大なゴーレム?」
「あれは、魔王国を封印した天使ですわ! 魔神十三旗にも描かれているツォルゼルキン! 時の守護者とも呼ばれている
カチカチ、カラカラカラ、カチカチ、カラカラカラ。
ツォルゼルキンの全身から、歯車の回転音が聞こえてくる。
ディアリーネの言葉に応えるかのように、ツォルゼルキンは巨大な首を傾げて頷いた。
「然り。汝らが黒の封印を破壊し、魔王国を地上に復活させようとしていることを、我は既に知っていた。汝らが、今日このときここにあることを既に知っていた」
カチカチ、カラカラカラ、カチカチ、カラカラカラ。
「残念でしたわね! わたくしたちがここに着いたのは一昨日ですわ! 未来を視ると言われているあなたの力も、大したことないですわね!」
ディアリーネがツォルゼルキンに向かって叫ぶ。
カチカチ、カラカラカラ、カチカチ、カラカラカラ。
「然り。汝らが、この場所で二日に渡って情事に耽ることを、我は既に知っていた。今この時まで待っていたのは、これからの戦いにおいて汝らが、その力の最大を発することを望むが故なり」
カチカチカチカチカラカラカラカラカラカラ……。
ツォルゼルキンの全身の歯車が急速に回転速度を上げた。
『敵性生命体検知! 脅威度SSSクラス』
間髪入れずに、ぼくはミスリルジャイアントを戦闘指揮モードに移行する。
「ビバアルバ!」
タンデムアルバがせり上がってきて、ぼくとディアリーネを乗せた。
シートが高級皮になったからか、なんだかお尻のフィット感が前回よりも良くなっている気がする。
『武装展開のためディアリーネ充足度をDSPより補充しました』
カラン!
頭上から降りてきたミスリルコントローラーを、さっと手に取る。
ディアリーネがぼくの腰にギュッとしがみ付いてきた。
彼女は、ぼくの背中に大きな胸を押し付けつつ声を上げる。
「
「わかった!」
ぼくは声を張り上げてミスリルジャイアントに命令を出す。
「ジャイアント! 全速力で離脱だ! ジャイアントジェット点火!」
ジャッ!
ゴゴゴゴゴゴゴッ!
ミスリルジャイアントの背中にあるジェットパックから白い炎が噴き出し始める。
「魔神の力の全てを見せるがよい!」
大天使ツォルゼルキンは微動だにすることなく、ただ言葉だけを発した。鋼の仮面の口が開かれることなく、ただ声だけが聞こえてくる。
「歯車時空間……展開」
ヴォワワワワワワワン!
ツォルゼルキンの全身から沢山の歯車が飛び出して、巨大なドームを形成する。そのドームの中にミスリルジャイアントは取り込まれてしまった。
ゴォォオオオオ!
ミスリルジャイアントが宙に浮かび始める。
「そのまま突っ切れ! ジャイアント!」
ジャッ!
ゴォォオオオオ!
ミスリルジャイアントは、ツォルゼルキンの歯車時空間を突き破って脱出しようとする。するとジャイアントの前に無数の歯車が収束し、巨大な壁を作った。
ゴオォオン!
ミスリルジャイアントが巨大な壁に激突した。ジャイアントはそのまま地上に落下してしまう。
「わっ!」
「きゃっ!」
ミスリルジャイアントが受けたそのままの衝撃ではないにしろ、タンデムアルバにも激しい衝撃が伝わってくる。
衝撃に戸惑っている間に、ツォルゼルキンが再び声を発する。
「然り。第一の試練、ギアドール……」
カラカラカラカラカラカラカラ!
ツォルゼルキンの腹部の歯車がひとつ外れて、こちらに向ってきた。
歯車はミスリルジャイアントの前にやってくると、激しく回転を始める。
ジャキンッ!
回転が急に止まったかと思うと、歯車で形成された人型が現れた。プレートアーマーに似たそれは、よく見るとツォルゼルキンと同じように無数の歯車で構成されている。
歯車アーマーの右の前腕は剣のような形で、左手は小型の盾状になっていた。
「
「くっ! ジャイアント! アイツを倒すぞ!」
ジャッ!
ミスリルジャイアントが魔神信仰ポーズをとるやいなや、歯車アーマーがジャイアントに向って突進してくる。
ピロロンッ!
目の前に使用可能なアタックコマンドの一覧が表示される。
>> 回避 [
ぼくは咄嗟に回避コマンドを入力して、歯車アーマーの突進を交わす。
それと同時に、すかさず[R1]を押して追撃を入れた。
ジャッ!
突進を躱されて背中を見せる歯車アーマーに、ミスリルジャイアントが右腕を振り下ろす。
ドゴォオオオン!
ズシャァァァ!
歯車アーマーが地面に叩きつけられた。
ぼくはたて続けにアタックコマンドを入力する。
>> 必殺攻撃 [R2]長押し
「いまだジャイアント! 必殺攻撃ミスリルストンピング!!」
ミスリルジャイアントが右足を大きく上げると、そのまま歯車アーマーを何度も踏みつける。
ゴォオオン!
ゴォオオン!
ゴォオオン!
踏みつける度に、歯車アーマーの歯車が砕けていった。
そして、
ギュルギュルギュルギュル、ギギギッ、ギッ、ギッ、ギッ、ギッ……。
歯車アーマーは完全に動かなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます