I Can't Explain(美月視点)

 あたしの初めては、尚紀だった。

 中学二年の時だ。


 それ自体は後悔してない。

 あの時のあたしは、尚紀のことが本気で好きだったから。

 そして、尚紀もまだ、まともな性格をしていたから。


 でも、尚紀をあんな性格にしてしまったのは、あたしにも一因があるのかもしれない。求められるがまま、あたしは必死で応えようとしてた。

 やがてあたしが、もう付き合っていられない、となるまでは。


 尚紀は、それで調子に乗った部分もきっとある。


 だけど。

 尚紀との縁は、そこで完全には切れなかった。なぜか別れてから少し経って、尚紀がまたあたしへと近づいてきたからだ。

 正直、あたしには尚紀が何を考えているのか、わからなかった。


 自分でも不思議だけど、なぜか見捨ててはおけなくて。

 もう男女の仲になることはないと自分でわかっていながら、近づいてくる尚紀をはっきり拒絶することができなかった。

 そう、いうなれば、腐れ縁に近い。それなのに、尚紀を心底嫌いになれない自分がいることもまた確かだったから。


 ──あたしみたいなダメ女じゃなく、ちゃんとした女とつきあったら、ひょっとすると尚紀もちゃんとした男になれるかもしれない。


 そう思って、高校時代に、真弥を尚紀へと紹介したのが、今思えばあたしの最大の過ちだった。


 尚紀は、真弥と付き合って、さらに増長した。

 見てくれだけはよかった尚紀が、その時に『女なんて使い捨てでいい。惚れさせて自分のいいように扱う。この世の半分は女なのだから、たとえ別れても代わりはいくらでもいる』などと、ゆがんだ考えへと至ったのだろうから。


 真弥も、あたしと同じタイプだったのだ。類友だったのだ。


 そうして、真弥は裏切られ、傷ついた。

 あたしにしてみれば、責任を感じるどころの話じゃない。


 だから、あたしはその時、性格を意識して変えたつもり。

 強くあるように、男に流されないように、と。


 不思議と、自分がそう変わると近づいてくる男の種類も変わってくるものだ。

 そして、信頼に値する男というものは、その友人もまた信頼できる、簡単には人を裏切らない人間であることにも気づいた。


 だから、今度こそ。

 以前に傷つけてしまった真弥を、大事な友人を少しでも幸せにしたくて、信頼できる男へと紹介したのだ。そこには悪意など少しもなかった。


 なのに。


 真弥は、尚紀に毒されてしまったのだろう。

 まさか私の親友が、裏切るほうへ回るとは思いもしなかった。


 それから、罪深い自分に耐えられなくなって、あたしなりに責任を取ろうとして。さらに深く泥沼にはまっていくさまは、はたから見ると滑稽なことこの上ないはず。


 だけど、あたしは必死だったんだ。


 そうして、真弥を含めたあたしたちと今後いっさいの縁を切るために、自分の犯した罪を償わせるために。

 話をつけようと、尚紀のもとを訪ねたことが。


 さらなる間違いを、生んだ。





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ここから徐々に、伏線を回収しに進みます。

尚紀も、別れてから美月の良さに気づいたのかもしれませんね(尚紀の話参照)

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