必要とされること(真弥視点)

 I Love You.


 I Need You.


 どちらも告白の言葉だ。


 だけど、果たして。

 愛があったとしても、今のわたしは、誰かに必要とされているだろうか。


 相手を必要とし、自分が必要とされる。

 そんな関係は、もう崩れてしまった。いや、わたしが崩してしまった。後悔なんて生ぬるい言葉では言い表せない。


 むろん、必要とされる理由も重要だと、百も承知している。

 尚紀と和成では、そのあたりに大きな違いがあったんだ。


 尚紀は、わたしを都合のいい女として必要としていた。セックスのためだけに必要だった女として。


 和成は、人生を一緒に歩いていく女として必要としてくれてた。信頼できるパートナーとして。


 快楽におぼれているうちは、そんな違いも分からなかった。ただ、わたしを必要としてくれてることだけが喜びだった。


 じゃあ、今は──?


 誰も、わたしを必要としていない。

 誰も、わたしを見てはくれない。


 わたしは、いらない女。尚紀にも、もちろん和成にも。


 虚無だ。


 だけど、今のわたしは尚紀に必要とされても、ぜんぜん嬉しくなんか感じないのに。

 和成から必要とされないことだけは、こんなにも苦しい。


 こんなにも強く、和成だけを、求めたい。求められたい。


 今さらなのだろう。

 誰かに必要とされることで得られる幸せは、愚かな行いで、こんなにも脆く崩れる。

 それを今さら痛感しながら、わたしはベッドに入った。


『いちおう夫婦だから、一緒の寝室に寝るのは仕方がないだろう。だが、ベッドは別だ』


 和成から同じ部屋で寝る許可は得たが、心はこんなにも遠くて、自然に泣きそうになる。


「やっぱり、わたしを……抱いては、くれませんか」


 せめて、性欲のはけ口としてでもいいから、和成に必要としてほしいから。

 ついつい口から出てしまうそんなお願いを、和成が聞き入れてくれるわけもなく。


「無理だ。俺はもう勃たない」


 責めるようにそう吐き捨てられた。

 誰のせいか、言わずもがな。


 お風呂であんなに洗ったにもかかわらず。

 わたしの身体は、和成おれがその気になるような、きれいな身体ではない。間接的にそう言われてるんだ、ということに改めてショックを受け。


「だいいち、真弥を抱いたとして。俺は、また比べられるのか?」


 そして、追加された和成の言葉が、ただただ心に刺さった。

 何も言い返せなかった。


 尚紀は、ただわたしをもてあそんでいただけ。わたしは、ただ和成をもてあそんでただけ。

 そんなつもりはなかったなんて、自分にすらも言い訳できない。


 なぜ和成と結婚したのか、その目的を見失ってたわたしは。


 ──誰からも、必要とされなくなって、当たり前だ。

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