改心してももう遅い(真弥視点)
真弥のことを理解できないでしょう、普通の人には。
浮気する人間は、いつだって意味不明です。そんな真弥の結婚記念日後のお話。
思うところあれば、バンバン感想欄で吐き出してください。
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結婚記念日のことで和成を傷つけてしまった私は、ある決意をした。
尚紀と別れ、和成との日常に戻ろう、そんな決意。
私は今まで何を血迷っていたのだろう。
尚紀は、私を愛してはくれなかった。だけど私が一番好きだった男。
和成は、私をこれ以上なく愛してくれた。私が愛情にこたえたいと思っていた男。
好きだけど、尚紀と結婚しても幸せな未来なんて思い描くことができるわけがない。釣った魚にエサはやらない、そんな尚紀と。
だからこそ、尚紀の浮気が発覚したことを理由に、せめて幸せな未来が思い描けるような相手をさがす決心をしたのではなかったか。そうして巡り合った和成との平凡な幸せを求めていたのではなかったか。
なのに、実際に私がとった行動は──
自分を恥じて、自分を悔やんで。私は尚紀にメッセージを送った。
『もう、終わりにしましょう』
それを見た尚紀は、少し慌てたように、私を説得にかかった。だが、そこに愛がないことだけは、今の醒めた私にはわかる。
きっと、『愛してる』とささやくだけで好き放題させてくれる都合のいい女を手放すには惜しい、そんな理由からだろう。
『二人で話し合わないか』
答えを保留するかのように尚紀が返してきた答えに、私は従った。
だが、最初に別れてから、尚紀の部屋に行ったことはない。尚紀と会うときはいつもホテルだった。おそらく、他の女の影がちらつく部屋なのだろう。
そして、ホテルで会う以上、尚紀とすることは結局ひとつだけだった。
別れ話をするためにおち合っても、なぜか最後はホテルですることをしていた自分が嫌になる。私にできた精一杯の抵抗は、避妊をしてもらうことだけ。
尚紀に抱かれた汚い身体で、和成に抱かれるわけにもいかない。
結局、結婚記念日以降、和成とはレスだった。
──大丈夫。まだ和成に気づかれてない。心を入れ替えて尚紀との関係は終わらせ、もう和成に疑われるようなことはしない。これからずっと和成だけを愛していけば、尚紀とのことは隠し通せる。
そんな妙な自信みたいなものもあって。
バカだよね。
すでに追いつめられていた私に気づいてなかったのは、私自身という何とも間抜けな事実。
そうして、ようやく三回目の尚紀との話し合いで、行為を拒絶できたのに、もう遅かった。
──まさか、別れ話をしていた時に、尚紀とホテルに入っていたところを、写真に撮られていたなんて。
私は、これから和成だけを見ようと思って、和成だけを愛そうと思って、尚紀と会っていたつもりだったのに。
それが浮気の証拠写真となって残ってしまった私は。
「違うの、ちがうの、誤解なの!」
そう言うだけで精いっぱいだったのだ。
そうなの、誤解なの。
だから、生理が来ないことも、不安にかられて使った検査薬が陽性だったのも──
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