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 その昔は洒落た店だったのかもしれない。「マイアミ」なんて時代を感じる名前だよね。僕はコーヒーの香りといっしょに、昭和の香りも漂う喫茶店に来ている。イスやテーブルは多分開店当時のままで、どうにかその役割を果たしているといった感じ。僕は店の奥の席にすわって、窓際に席をとるはずのノブさんたちが来るのを待っていた。本当にノブさんは僕の依頼人を連れてくるのだろうか。ドアが開いて、ノブさんがスーツを着た男を連れて店の中に入ってくる。そして予定通り入口近くの窓際の席にすわった。僕はすぐにその男が依頼人ではないと感じた。たしかにあの時は変装していたのかもしれない。でも違うよなあ、あのタラモア・デューとは。そんなことを考えながら男を見ていると、僕はその男と目が合ってしまう。男は僕に気がつくと軽く会釈をした。

「おい、こっちに来いよ」ノブさんが僕を呼ぶ。僕が少しためらっていると、

男は席を立って僕のほうに向かって歩いてきた。

「居場所が分かったみたいですね」

 男がにこやかに話しかけてくる。

「タラモア・デュー」

 僕はいまだにこの男があの時の依頼人なのかどうかわからずに、男の顔をじっと見ていた。

「ネットで調べたら、ジェイムソンも人気のようですが」

「なるほど」男はそう言ってゆっくりとうなずいた。

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