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「最近よく来るんだよ」大連のおやじさんが僕に言う。

 奥のテーブルにいる若いカップル。仲良さげにラーメンをすすっている。僕は久しぶりにナシゴレンが食べたくなって、カウンターにすわっておやじさんと話をしている。フミちゃんは別の用事があって僕が代わりに大連にギョウザを持ってきた。

「この間あんたの助手さんが女のほうを連れてきたんだ」

 まあここは夜遅くまでやっているし、値段も手ごろでおいしいから若いカップルが通ってくるのも不思議なことじゃない。

「あんたのことは話さない方がいいんだろう」

「お願いします。特にマリとの関係は」

 逆に探りを入れてもいいのかな。僕はふとそんなことを思った。でも、今のところはこのままのほうがいい。

「これからミミちゃんの店には寄るのかい」

「そうだね。あっちにも少し持っていくから」僕がそう言うと、おやじさんはタッパを僕の前に置いた。

「焼きそば。試作品なんだけど」

 僕はアミといっしょにいる若い男を見ていた。マリが言うほどしょうもない男には見えないけど。ともかく、あの二人についてはマリに任せておくしかない。

「この焼きそば抜群においしい」

「ナシゴレンの味付けだね」

 僕も一口食べてみた。

「フミちゃんは忙しいんだ」ギョウザをつまみながらミミちゃんが言う。

「おじさん裏メニューで作ってくれるかな」

 週末でもないのにネネちゃんも店に出ていた。

「作ってくれるよ」

「でも、どうして今までこの発想がなかったのかが不思議」

「ナシゴレンは大連の看板メニューだからね」

「この焼きそばにラーメンのスープかけてもおいしいかも」

 ミミちゃんが言う。

「今度おじさんに言ってみよう」

 ミミちゃんとネネちゃんはやけにうれしそうだ。

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