「ねえコウちゃん、今日は忙しい」

 出かけようとしたところに、フミちゃんが下から上がってきた。

「出かけるの」

「ちょっとね」

「仕込みの手伝い」

「今日お父さん用事があって」

「しかたないね。コウちゃんが来るまでは一人でやってたんだし」

「ごめんね」

 僕は急いで事務所を出た。

「アミと連絡が取れたの」

「それでどうだった」

「つけられているように思ったことがあったみたい」

 僕とマリは石けんの匂いのするせまい部屋の中にいる。マリの吐き出したタバコの煙が、僕の頬をかすめていく。

「でも、この仕事していれば全然ないわけじゃないのよ。あたしだって経験あるし」

「お客さんとか」

「まあね」

「でもストーカーで本当にヤバいのは関係があった人だよね。付き合ってたとか」

「元ダンナとか」

 マリはそう言いながら意味ありげに笑う。

「アミにはそんな人はいないみたい。本当のところはわからないけど」

「こればっかりはね」

「いろいろ知ってるんだ」

「知りたくないこともね」

「でも、コウさんの依頼人と関係があったとは思えない。アミは若い子好きだから」

「年下とか」

「年下もありだね」

「とにかく、男がいたとしてもそんなお金持ちじゃないよ」

「そうするとやっぱりそっちの関係かなあ」

「あたしの調べた限りそっちの線はないんだけどね」

「そっちの人なら僕のところには来ないよね」

「多分」

「やっぱり依頼人調べないとダメかな」

「出来る」

「どうにかやらないとね。そっちも引き続き頼むよ」

「わかった」

 マリがそう言ったとき、はだけた胸元から乳房が見えた。そんなに大きくはないけれど形はいい。

「揉んでいく」

「いいよ」

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