マリは少し驚いたような顔で僕を見ている。

「じゃ、コウさんの依頼人はこっち関係の人じゃないんだ」

「こっち関係っていうのがよくわからないけど、多分マリちゃんの考えている人たちではないと思う」

「変装はしてなかった」

「僕が見た限り、してなかったと思う。ホームレスの格好は怪しいかもしれないけど」

「あの子ね、すごく心配していたから。捜されること」

「でもさ、何でそんな子がマリちゃんと同じ店で働いていたの」

「それがね、あたしにも謎なの」

「実家がそんなにお金持ちなら、捜す気になればいくらでも捜せるんじゃない。優秀な探偵だって雇えるだろうし」

「コウさんより」

「もちろん」

「それで本当にマリちゃんは居場所わかってるの」

「まあね」

「でも、教えちゃっていいのかな。ストーカーかもしれないし」

「ホームレスのストーカーなんているのかな」

「依頼人がストーカーとは限らないし」

「確かに悩ましいところだよね」

 僕はマリにそのへんのところを探ってくれるように頼んだ。

「こんなにいただいていいんですか。ありがとうございます」

 マリは思いがけない収入に少し驚いていた。そしてぼくのほうをじっと見ている。

「今回の情報料だけじゃないからね。この先の分も入っているから」

「必要経費も」

「もちろん」

 マリの後姿を見ながら、僕は少し憂鬱になっている。パソコンはまだまだ遠いかな。

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