　キナフ星よ、こんにちは。

　地球よ、さようなら。

　僕らはどちらを選ぶのだろう？

　僕はあれからずっと考えていた。

　ツレが作ってくれたUFOは失神するほどおいしかった。

　僕のためを思って作ってくれたのがちゃんと伝わってきた。

　それは分かっている、分かっているけれど……

　やっぱり裏読みしてしまうのだ。全ては目的のだったのじゃないかと。

『ただいま』と『おかえり』を言える場所を作ること。

『いただきます』と『ごちそうさま』がある食卓と料理を作ること。

　僕がこの星でできることなんてそれだけだ。

　でもそれこそが大切なんだと今は思う。

　そんなことを考えながら、僕は商品のデザートの仕上げに取りかかっていた。

　最後を締めくくるデザート。カロリーなんて気にしない、とにかく甘くて、優しい味のする、ほっぺたが落ちそうになる、そんなとびっきりのデザートだ。

　新商品のことをツレにはナイショにしている。

　サプライズを仕掛けたいのは、僕の悪い癖だ。

　さて。これで準備は完了。

　エプロンを外して、小さな皿にきれいに盛り付ける。

「今日は最後にデザートを作ったんだ。一緒に食べよう！」

　思った通り。ツレはびっくりした顔でデザートを見つめている。

「今日は特別な日。そういう日にはデザートがぴったりだと思わない？」

　キナフ星よ、こんにちは。

　地球よ、さようなら。

　まぁどちらにせよ地球とは一生の別れではないのだ。

　その結末はデザートのあとで十分。

　今は一緒にこの甘くておいしいデザートをたっぷり堪能しよう。

　待ちきれないように、僕たちのお腹がぐぅと鳴った。

「いただきます！」

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