第六膳 『初めてのハンバーグ』(お題編)
僕の家には料理の本がたくさんある。
僕は昔から料理本を買うのが好きだった。
写真を見て、材料を見て、作り方を見て、どんな料理が出来上がるんだろう? どんな味がするんだろう? なんて想像するのが楽しかった。
ツレはこの家に来てからというもの、その料理本ばかりを眺めていた。それ以外の本がないというのもあるが、次々にページをめくっては熱心に眺めていた。
「なにか食べたいものはあった?」
ツレは小さくうなずくと、一番年季の入った一冊を取り出してきた。まぁ偶然かもしれないが、それは僕が初めて買った一冊で、今も一番のお気に入り本だった。ツレはページをパラッとめくり、両手で開いて僕に見せてくれた。
「お。ハンバーグか! いいね。これは作ったことあるよ。すごくおいしかった」
そう。この本のレシピはいろいろと作ってみた。どれも写真通りに作れて、すごく優しい味がしたのを覚えている。僕が料理の楽しさを知ったのは、まさにこの本からだったのだ。
そこでひらめいた。
「あのさ、このハンバーグ、自分で作ってみたらどう?」
あれ? なんか白くなってる。
どうやら想定外すぎて思考がパンクしているらしい。
「あのさ、料理ってね、食べるばかりじゃなくて、作るのも楽しいんだよ。それにねこの本の通りに作ればちゃんと美味しくできるんだよ」
どうやらその言葉が効いたらしい。ツレはひとつうなづくと、決意の表情も凛々しく自分でエプロンを巻いたのだった。
さて、ツレはどんなハンバーグを食べさせてくれるのだろう?
今日は僕のお腹がぐぅと鳴った。
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