第五膳 『おでかけとちらし寿司』(お題編)

 朝起きて『おはよう』のあいさつをするのは、ずいぶんと久しぶりのことだった。  

 朝ごはんを人のために作ったのも久しぶり。

 今日の晩御飯はなに? なんて聞かれたのも久しぶり。

 なにが食べたい? そう聞くのも久しぶりだった。

 

 そして返ってきた答えに固まったのも久しぶりだった。


『チラシズシ』


 それがリクエストだった。お、おう。ちらし寿司ね。

 なかなか渋いリクエストで。


 まぁ寿司よりはハードルが低いか。いや、むしろ高いか?

 どの程度本格的に作るかにもよる。


 そもそもちらし寿司っていろいろ種類があり過ぎるし。

 とにかく見た目はきれいに仕上げたいところ。


 と、そんなわたしの胸中を知るはずもなく、期待に目を輝かせて見上げてくる。

 その様子からして、ちらし寿司には何やら思い入れがありそうな様子だった。


 そういえば、ちらし寿司を作るなんて何年ぶりだろう?

 そもそも具材は何を入れてたんだっけ?

 刺身系の具材は大丈夫なのかな?

 これだけ頭を使う料理も珍しい。


 そうだ。それをいっぺんに解決する方法があった。


「よし、今日は一緒に買い物に行こうか!」


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