メイド救出作戦 その②

「ふー、ただいま」


部屋で休んでいたところにミリアルドさんが帰ってきた。


「おかえりなさいミリアルドさん」


「お変わり無いようで」


「ん、恐ろしい事に男に盛られるところだったぜ」


「大丈夫なんですよね?」


「おう、それでターゲットとは接触したか?」


「はい、ですが一言も発しませんでした」


「ふむ……なるほど」


「変わりにメイド長があの貴族を毛嫌いしていそうという情報は得ました」


「ほほう、なるほどな」


突然ミリアルドさんは首に着けていたチョーカーを取った……


すると体がいつもの男のミリアルドさんに戻った。


「ふー……疲れた」


「ミリアルドさん……服装が」


ミリアルドさんは女体化を解いたが服装はメイド服……なかなかに強烈な見た目……


「ま、それは置いといて、俺も情報を手に入れた」


「「!」」


「ターゲットはなんでも声が出せないらしい」


「なるほどだから無言だったんですね」


「これじゃあ本心は聞き出せないな」


「そうですね……なんとかして声を出させないと……」


「それができればなぁ〜」


「おそらくストレスが原因かも知れないですしね」


「う〜む、魔法を使えばなんとかなるが」


「それで良いのでは?」


「俺は魔法は使いたくないんでな、それに変身が解ける」


「どうします?しばらく潜入します?」


「いや、長くても一週間だ」


「理由を聞いても?」


「俺の仕事がヤバい事になる」


「「……」」


「それは置いといて、もう一つ情報がある」


「もう一つ?」


「メイドについてなんだが……何故か定期的に行方不明になるらしい」


「定期的に……ですか?」


「ああ、最近らしい」


「行方不明のメイドはどこに行ったんでしょうか……」


「さぁ?それは確かめてみないとわからん」


ミリアルドさんは再びチョーカーを首に着けた。


「さ、風呂に行くか」


「「はい……え?」」


「ん?なんかあったか?」


「いや……ミリアルドさん男ですよね?」


「ロリアンがそれ言うか?」


「でも体は女性ですしお寿司」


「おすし?」


おっと異世界ジョークになってしまった。


「ん〜……ならリーゼに変わるか」


「「変わる?」」


「おう、魂を入れ替える」


「そんな事出来るんですか?」


「いや不可能だ!この世のことわりに反している!」


「それが出来ちゃうんだよね〜」


「そんな……いくらミリアルド様でも無茶な……」


「まぁこの魔法に耐えられるのは俺と同等もしくはそれ以上の『神』耐性を持ってる奴だな」


「「『神』耐性?」」


「この世の全ての生物が持っている耐性で、神に対する耐性だな」


「ど、どういう効果が」


「そうだな……ロリアンなんかが一番わかりやすい例だな」


「私!?」


「転生者はみ〜んな高い神耐性を持ってる、まずロリアンは元いた世界とは性別が異なっているだろ?」


「そうですね」


「その時点でこの世の理に二回ほど背いている」


生き返りと性転換か……


「神耐性はわかりやすく言うと、常識外れの力や体、魂の事だな」


「「へぇ〜」」


「因みにリーゼと俺は神耐性が異常なほど高い」


「そうなんですか?」


「俺たちは神々の間で『異分子イレギュラー』とか呼ばれてるらしい」


「それって嫌われてるってことですか?」


「それがな、真逆なんだわ」


「え……じゃあ気に入られてる?」


「そう、神サマは退屈が嫌いらしくてな、俺らみたいな面白い奴は大好きらしい」


「神サマ……」


あの年老いた神様は何の神様なんだろう……


「そろそろ変わったほうがいいな……少ししたらまた会おう!」


「「はい!」」


「『操魂術そうこんじゅつ 転魂てんこん』」


ミリアルドさんが魔法を唱えた直後、ガクンと頭が項垂うなだれた。


「……久しぶりね二人共」


「昨日ぶりですねリーゼ様」


「ええ、さてお風呂行きましょうか」





浴場


「あら新入りの娘?」


「は、はい……」


思ったより人が……多い!


「!」


……ここが楽園パライソ……桃が沢山桃源郷!


「ロリアン」


「ハッ!み、見てない!」


「何も言ってないが、それよりあそこ」


あ、アソコだと!?


「ターゲットだ」


「あ、そっちね」


「何をさっきから……」


「……」


「行くぞ」


「はい」






「あ、あの……」


「?」


「お風呂、気持ちいいですね」


「?」コクン


頷くだけだった……


「こんばんは」


リーゼさんが今度は話しかけた。


「…」コクン


おそらく「こんばんは」と返したのだろう。


「はい、こんばんは」


「わかるんですか?」


「ええ、なんとなく」


「なんとなく……」


つまり勘か。


「…」


「…」


しばらく沈黙が続いた。


「……貴女のお母さんが待ってますよ」


「!」


勢いよく振り向いた!興味があるみたいだな。


「貴女はどうしたいですか?」


「…」


彼女は何も答えなかった……答えられなかったのではなく、答えられないようだ。


「貴女が話せないのはなんとなくですがわかります、なので答えられそうだったら……また私達の部屋で聞かせてください」


優しげな表情で語りかける姿はどことなく『聖女』を思わせる。


「……」コクン


彼女は一瞥いちべつして浴場を去って行った。


「どうでした?」


「彼女はミリアルドの推測通りストレスで声が出せないみたいですね」


「ん〜……どうしたものか」


「もし彼女が部屋にやってきた時は筆談するしかないですね」


「う〜ん」


「そういえばレイジーさんはどちらに?」


あれ……そういえば会ってないな。


「……すぐに浴場を出ましょうきな臭いです」


俺たちは急いで浴場を出た。





「居ました?」


「いいえ、居ませんね……」


屋敷中を探し回ったがどこにも居ない。


「部屋に戻りましょう、ミリアルドと交代します」




「何?レイジーが消えた?」


「はい」


「……お前は見てないのか?」


ミリアルドさんは水晶玉に話しかけた。


『私もターゲットを見つけて集中してたから』


「……任務は中止だ」


「!」


ミリアルドさんは床を叩いた。


「『探知ソナー』!」


「何を……」


『探知魔法よ』


「……クソが」


「『クソがって……』」


「ぶち殺してやろうか……あのクソ勇者が」

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