洞窟で迷子ナウ
「どうしてこうなった……」
俺は現在とある洞窟内で灯りもない状態で一人ぼっちである。
何故洞窟にいるのかと言うと……
昨日
「ごめんなさいロリアンさん」
お母様が突然謝りだした。
「え、なんですか急に」
「実は明日一日居ないのよ」
「はい、それが…」
「家事は大丈夫だからレイジーと一緒にいて欲しいの」
「留守番でも大丈夫ですけど」
「ロリアンさん、誘拐されたの忘れたの?」
「あ……」
そうだったこの世界は日本とは全く違う、しかも女一人なんて格好の的だ。
「でもレイジーさんってハンターですよね?」
「ええ」
「つまり、ハンターの仕事について行く……と?」
「そういうことになるわね」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫、あの子なら絶対に守り抜くわよ」
翌日
「と、言うことなのよろしくねレイジー」
「任せてくれ!」
朝から元気だな……
「さ、行こう!」
「うう……日差しが眩しい」
一応動きやすい服装と最低限の物は持ったが……
「これからどこに?」
「ん〜、とりあえず山の依頼だね」
「何の依頼ですか?」
「イノシシが出たらしい」
「イノシシ?」
それなら普通なのでは?
「何でも超大型らしくて被害が出てるっぽい」
「へぇ〜」
「納屋が潰れたそうだ」
「納屋……」
「文字通りぺしゃんこらしい」
「え」
近くの山
「うわぁ……」
なんだこの足跡、俺がすっぽり入ってしまうな。
「ふむ……近いな」
「近いの!?」
「む」
レイジーさんが俺の口に手を当てて口を塞いだ。
「(静かに、あの木陰から狙撃する)」
「(コクコク)」
レイジーさんは背中に背負っていた猟銃を持って構えた。
「……」
そして引き金を引いて爆裂音と共に弾丸が発射され、超大型イノシシの頭に直撃した。
「よし」
あっという間にイノシシを仕留めてしまった。
「うわぁ…デッカ」
「これは危険だな、早々に駆除できてよかった」
「これ、どうするんですか?」
「もちろん、持って降り……」
何故かレイジーさんは黙って遠くを見ていた。
「レイジーさん?」
「……ロリアン、予定変更だ」
レイジーは奥の方へ足を進めた。
「え、どこに」
「付いてきて」
黙って付いて行くしかなかった。
「洞窟?」
「ああ、声が聞こえてな」
声が?何も聞こえないが……
「よし、行こう」
「え、ちょっ」
ズンズンと進んで行った。
「これは……」
「うぇ…」
足元に何かの死体が転がっていた。
「……ゴブリンか、しかも傷を見るからに新しい、冒険者か?」
「うぅ…」
「大丈夫か?」
「はい……」
ゴブリンと言えども外見は人間に近い、そんな死体を見て気分を崩さいないのは無理だ。
「ふむ……」
まだ足を進めるレイジーさんは真剣な表情で歩み続けた。
「! 急ごう!」
「え!ちょっ」
急にレイジーさんは走り出した。
すると声が聞こえてきた。
「クソ!どんだけ居るんだ!」
そこには武装した若い四人の冒険者がゴブリンと対峙していた。
男二人に女二人、男二人は剣や盾。
女二人は杖を持っていた、典型的なパーティーのようだ。
「大丈夫か!」
「誰ですか!?」
「加勢する!ロリアンはそこで待機!」
「は、はい!」
レイジーさんは猟銃と短刀でゴブリンを退治するようだ。
次々とやってくるゴブリンを打ち抜き、切り裂き、魔法で射止める。
かなり時間がかかると思っていたが、レイジーさんが加勢してから驚くほど早く収まった。
「大丈夫かい、君たち」
『ありがとうございます!』
「ふむ……君たちはまだ駆け出しかい?」
「はい、俺たち全員初依頼でした」
「初依頼でゴブリン退治か……私が加勢しなければ間違いなく全滅だったね」
「そう……ですか」
「そうだな……駆け出しの場合は洞窟ではなく開けた土地での依頼が好ましいね」
「なるほど」
「ゴブリン退治はベテランの冒険者でも苦労する場合がある、だから最初は下から順にやっていくといい」
「なるほど……ありがとうございます!」
「それじゃあ気をつけて……」
すると急に視界が真っ暗になった。
そして今である……
「誰か居ませんかーー!!」
虚しく響くだけ……
「……」
次第に恐怖心が大きくなり始めた。
「っ」
一寸先も見えないほどの暗闇、声も虚しく響くだけ……孤独……死……
「ハァ……ハァ……ハァ……」
過呼吸になり始め、足元がふらつき始め、膝をついた。
「怖い……」
このまま、俺は孤独に死ぬのか?
「嫌だ……」
「おやおや?」
誰だ?
「お主……」
松明の炎が辺りを照らし、声の正体が現れた。
「誰……」
「儂はゼロ、冒険者じゃ」
声の主は一人の白い袴を纏った、太刀を携えた老人だった。
「ここはどこ」
「ここは洞窟……の見た目をした『ダンジョン』じゃ」
「ダンジョン?」
「うむ、ダンジョンは階層に分かれていてな、このダンジョンは全部で五階あるようでな」
そんなに広かったのか……
「ここは五階じゃな」
「……実は」
今までの出来事をゼロさんに話した。
「あ〜、それは『
「もしかして、一階層から五階層まで飛ばされた……と?」
「うむ、稀にある事故じゃな」
「事故……」
「それと、お主……ミリアルドと繋がりがあるな?」
「ど、どうしてミリアルドさんが?」
「儂は昔の仲間でな、お主から『月光』の力が感じてな」
「月光の力?」
「あやつの加護みたいなものじゃな、お主の体を守っているようじゃ」
「え……そんなのは見えないんですけど」
「見えないようにしているからな、しかも発動条件も絶体絶命の緊急事態のみ、という」
「どんな効果なんですか?」
「ふむ……近づく魔物や、悪しき者を遠のけ、浄化する効果じゃな」
「一体いつ与えたんだろう……」
そういえばミリアルドさんに最後に会ったのは……結婚式の時?
まさかその時に……
「なら、デュラハンに襲われた時発動しても良かったのでは?……」
「お!お主のお仲間が来たようじゃな」
「ロリアン!」
「レイジーさん!」
ああ……レイジーさんに抱きしめられて安心する……
「大丈夫ですか!?」
「おや、君たちは駆け出しの…」
『ゼ、ゼロ様!?』
なんかレイジーさんも驚いてる。
「おや、最強のハンターに名が知られているとは光栄じゃな」
「そんな、まさか最強の冒険者に会えるとは……」
最強の冒険者……そういえばキョウヤさんのバックについてたな……
もしやゼロさん?
「さて、ここから出たいなら攻略せねばな」
「なぜですか?普通に後ろへ戻れば……」
「よし、お主らに座学をしよう」
「まさか最強の冒険者から座学を受けられるとは……」
「メ、メモメモ……あった」
駆け出しの冒険者たちがいそいそとメモを取り出した。
「まず、普通のダンジョンならば撤退は出来た、しかしこのタイプのダンジョンは一筋縄ではいかぬ」
ゼロさんは洞窟の壁に短刀で図を掘り始めた。
「このダンジョンは偽装が出来るダンジョンじゃ」
「偽装……そんなことが」
「うむ、そのためダンジョンの構造もボスが自由に変える事ができる」
「ロリアンが消えたように……ですか?」
「うむ、あれは転送罠じゃが……団体行動をとり、ボスを討伐する、それが一般的な脱出方法じゃ 」
「ボス……強いんですか?」
「階層によるが、五階層なら雑魚じゃ
…あ、もちろん儂から見てな」
「どんな魔物が居るんですか?」
リーダーらしき人がゼロさんに質問したところ。
「それはお主らが確かめること、甘えてはいかぬ」
「は、はい!」
「それでは行きましょう」
ロリアンさんが先頭を歩き始めた。
しばらく歩くとロリアンさんが立ち止まった。
「ゴブリン……それも上位個体」
「ほほう、よく目が見えるようじゃな」
マジか見えてないぞ、それと。
「上位個体?」
「魔物には上位個体が存在してな、簡単に言えば強い個体じゃ」
ザックしてるがなんとなくわかった。
「ロリアンよ、種類と数はわかるか?」
「魔法使いと、通常四匹です」
「よく見えるのぉ〜、儂はもう年でよく見えておらんわ」
「ど、とうするんです!?」
「もちろん戦う」
「ロリアンよ、魔法ゴブリンと猟銃は相性最悪じゃが……」
「それ、どうするんです!?レイジーさん!」
「もちろん対策はしてる……これを使う」
金色の……弾丸?
「でも、弾が合わなくないですか?」
「これがある」
胸ポケットからハンドガンサイズの銃が出てきた。
「お!よく知っているな、その弾丸は魔法を貫通する特殊弾じゃ」
「結構値が張りましたけどね」
「来ます!」
バレた!
「〜〜〜〜〜」
魔法ゴブリンが何か呪詛?みたいなのを唱えてる!
「今だ!」
レイジーさんの特殊弾が魔法ゴブリンに向かって飛んでいく。
「!?」
そして魔法ゴブリンの脳天に直撃した。
「今だ!行くぞ!」
動揺したゴブリンに冒険者たちが畳み掛ける。
「ふぅ……終わった」
「まだまだじゃぞ?」
「うっ……」
「さて、そろそろボスが近くなって来たようじゃな」
「うわっ、何この趣味の悪い扉!?」
気持ち悪!なんか扉から触手がうねうねしとる!
「ほれ開けるぞ?」
え、触んの?
「ほい」
普通に開いた……
「……汝ラガ侵入者カ」
『………』
全員が言葉を失った。
それもそうだ、見た目が……
「おお〜、ビッグ・アイか!」
そう、ゼロさんが言った名前通り。
巨大な目玉だった。
「これは珍しい!のうお主ら!……どうした?」
『いや……キモイ』
「……」
「もしや、初見か?」
『はい』
「……」
「う〜む、初見は仕方あるまいな」
「……」
なんか目玉が静かだな……
「……あの目玉、泣いてないですか?」
『え?』
なんか目玉が泣いてる……なんで?
「そりゃあ……お主らがキモイとか言うからじゃろ」
「メンタルクソザコじゃん!」
「ロリアン、言い過ぎだぞ……」
「え」
「キモイ……」
「なんか……ごめん」
「……殺ス!」
目玉からレーザーが出てきた!
「危ない!」
「わ!」
レイジーさんが間一髪で俺を抱えてレーザーを躱した。
「これは儂がやろうかの」
「ゼロ様が直々に!?」
「なんてこった……」
ゼロさんは腰に携えた太刀に手を当てて、腰を落とし、居合の構えをとった。
「悪いな、ビッグ・アイよ」
すると背筋が凍るような感覚に陥った。
「一太刀じゃ」
いつの間にかゼロさんは太刀を振り切っていた。
「いつの間に……」
「ほれ、おしまいじゃ」
目玉を見ると横真っ二つになっていた。
「す、すげぇ……見えなかった」
「ありがとうございます、ゼロ様」
「気にするでない、ほれ出口じゃ」
後ろを見ると入ってきた洞窟の入口だった。
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