暴力の使い所
「うぐぅ……」
「だ、大丈夫かい?ロリアン」
「結構キツめの筋肉痛かも……」
俺は筋肉痛により動けないため、レイジーさんに背負われている。
「まさか、朝起きたら冷や汗ダラダラでこっちを見つめてるものだからびっくりしたよ」
「本当に申しわけない……」
「何をしたんだい?」
「二階の廊下を雑巾がけ……」
「ああ〜、なるほどたしかに普通の人なら筋肉痛になるが……」
「?」
「ここまで酷くはないと思うけど?」
「うぅ……」
背負われていても階段を降りるたびに振動で全身に痛みが走る……普通に痛ぇ!
「あらあら、やっぱり筋肉痛になったのね」
「母さんも分かってロリアンに無茶させたでしょ」
「あら、なんのことかしら」
「母さん、ロリアンは普通の人なの、母さんみたいに頑丈じゃないんだよ?」
「ハッハッハッ!昔の母さんの二つ名が思い出されるな!」
お父様がいつの間にか椅子に着席している……っていうか。
「二つ名?」
「そういえばロリアンさんには母さんの二つ名は言ってなかったな」
「その二つ名はハンター時代のって事ですか?」
「そう……現役時代母さんにつけられた二つ名は……『
「樋嘴?」
「ガーゴイルの事だ、体が石でできていて結構厄介な魔物なんだ」
流石現役ハンター、知識が豊富だなぁ。
「しかし父さん、砕きは普通ではないのか?ガーゴイルは石なのだから倒すとなれば破壊が正規方法のはず」
「まぁ、メイスやハンマーなどで倒すのが普通かつ常識だが、母さんは『素手』で破壊したからな」
「素手!?」
「石ならまだしもガーゴイルの体は魔力で強化されてるはず……それを素手で?」
「そう、父さんも始めてみたときは度肝を抜かれたよハッハッハッ!」
おっと……後ろから『樋嘴砕き』が。
「……お父さん?」
「あ……っと」
「ふふふ……ハンターを退いたとはいえ、まだまだ力は残ってますよ?」
「そ、そうだな」
「ふふふ……ガーゴイルの体って、人間の頭蓋骨より硬いらしいですよ?」
「か、母さんなぜそんな話を……?」
「ふふふ……」
すると、お母様はお父様の頭を両手ではさみ圧力をかけ始めた。
「痛たたたたた!?」
「ふふふ……」
「母さん!割れる!?頭割れる!」
「ふふふ……」
「ねぇ!聞いてる!?」
「聞いてますよ〜」
「なら止めて!?」
「まぁ、今日はここまでで許しましょう」
「あぁ……痛った…」
「正直父さんの自業自得」
ここにきて追撃を入れるか、レイジーさん。
「ぐっ……」
「ロリアンさん、今日は軽めの家事を手伝ってもらおうかしら」
「あ、はい、ありがとうございます」
「さ、朝ごはんにしましょうか」
「……お母様、ガーゴイルを素手で倒したのは本当なんですか?」
「ふふふ……試してみます?」
「あ、大丈夫です」
下手な事を言えなくなった……
朝食を終えた俺は寝室を掃除していた。
「ふふふ……」
「ん?」
謎の笑い声が……聞こえた気がする……
「だ、誰か居る?」
怖っ!
「……気のせいか……」
ふぅ……びっくりした〜
「いるよ」
「ひぇ!?」
何で居んだよ!
「ど、どこに!?」
「ここ……」
どこだよ!
「足元」
「足元?……ヒュッ」
足元に生首あるんだけどぉぉ!?
「びっくりした?」
「ヒッ!……」
こ、こここここ怖い!
「ふふふ……楽しい、生者を驚かせるの楽しい!」
たちが悪い!!
「だ、誰か……」
「駄目だよ……」
う、腕が動かない!
「声……出したら折るから」
「っ!」
『ロリアンさん?』
お母様だ!
『あら、どこに行ったのかしら』
足音が遠のいてしまった……
「……ふふふ、ざぁ〜んねん」
「ッ!」
「あ、その顔最高」
も、もう駄目なのか……
「痛めつけたらもっといい顔になるかな?」
「ッ!?」
腕が逆方向に曲がり始めてる!
「折れちゃうよ〜?」
痛い!
「いい顔〜」
「あらあら生首が
「!?」
お母様!
「ロリアンさん大丈夫?」
喋れないから顔を縦に振る。
「良かったわ……さて」
「な、なんで折れないの!」
そういえばさっきから腕がそのまま止まってるな……
「ふふふ、何でかしらね?」
「まさかお前が止めてるのか!」
「正解よ、私、霊体にも触れるのよ」
「くっ!」
「さて……」
お母様が生首を片手で持った……何をするんだ?
「な、なにを……ブッ!?」
まさかの掴んだ逆の腕で、生首を殴り始めた。
「な、なにを!がッ!」
「私なりの除霊方法よ」
脳筋すぎません?
「そんな馬鹿みたいな方法で」
「あら、まだ喋れるのね」
「ヒィ!」
さらに殴る速度が早くなった。
「さて、そろそろね」
「あ……」
最後の拳が炸裂した後、生首は光になって消えていった。
「大丈夫?」
「は、はい……」
「まったく、娘たちの寝室に入り込んで来るなんて」
「今のは?」
「デュラハンの生首ね」
「デュラハン?」
「アンデッド系の魔物で、頭と体が分離した霊体よ」
「何で生首だけが…」
「昨日レイジーがデュラハン討伐の任務を受けたの、そのときにひっ付いて来たみたいね」
「ひぇ〜」
超悪質ストーカーじゃん。
「ロリアンさんに大事なくて良かったわ」
その後は普通に掃除して1日が終わった。
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