第二百五十五話 イレギュラー
この世界を1つにすることが許される剣技。剣技世界の頂点である剣技。それが創世の力だ。
端的に、
ここに来て、なんだが、実は創世剣術士という存在は――精霊種を超えている。かつて2人の仲間が死んだのは――2人が俺に全てを託したからだ。故に、それから最強を語る俺に、一切の偽りはなかった。全てを凌駕し、剣技世界としてこの世界を縦横無尽に駆け巡った俺の答えが、この剣技だ。
虚空の上位互換とも思える剣技。世界で2人だけしか使えない剣技。使用時に世界の時間を止める剣技だ。いや、正確には、全てを許される場所だ。
俺はその最強に相応しい場所にて、ドグルの行動を、首から上だけ許す。
「――くっ!貴様ぁ!」
即座に叫びだすが、そんなこと耳に届いてないように、俺は言う。
「例えばここで、俺がお前に向けて、何も考えず無に右腕を狙って刀を振ったならば、お前の右腕はどうなると思う?」
「どうせ斬れるのだろうがぁ!!!」
「どこが?」
「右腕に決まってる!!」
「ぶっぶー。残念。正解は――」
静かに刀を振り下ろす。狙う先は右腕。気派も飛ばさず、無音で下がった刀。斬撃も飛ぶことはない。しかし。
「ぐぁ"ぁ"!!!」
「痛覚が5倍になって、左足が斬れる、でした」
止まる時間の中でも、俺の刀に触れたものは全て時を得る。斬り落とされた左足は、右足と真逆に位置する四肢。そんな予想外のことに、ドグルは痛みに堪えて睥睨する。
「そんな睨むなって。ここでは刀を使えば、俺の思い通りになるんだ。だから、痛覚操作なんて朝飯前だ」
全てを許さない空間。聖域とは良く言ったもので、こんなのただの一方的な蹂躪でしかない。精霊種なんて敵じゃないし、この世界自体俺たちの敵じゃない。宿命という名の、お遊びに付き合わされているだけに過ぎないのだ。
「貴様ぁ……そんなやり方で楽しいのか?最強として、弱者を痛めつけることが楽しいのか?お前との差は歴然だと、過去に仲間を殺めた際に思っていた。だから殺そうとしたのに、貴様は逃げ隠れ成長し、再び俺たちの試練のように立ち塞がるというのか!!!」
憤怒に満ちていた。これ以上の怒りを俺は知らない。しかしまぁ、そうなのだろう。言い分も分かる。俺自身、自分に持たされた圧倒的な力が、正直退屈でもある。
入学当初、優越感に浸れることを嬉々としていた。これから俺は、この学院で1番となり、密かに名を馳せよう、と。情報は隠されていたが、その力で這い上がろうと。
しかし、現実は甘かった。唯一の混血種ということで、自覚していたが俺は強かった。力を授けられてから、カグヤに創世剣術士としての力を封印されてから、それはもう、余裕でしかなかった。
精霊種からすれば、俺たちは悪で、いや、俺は悪で、この世界のために俺を殺すべき宿命を背負っていたのだろう。しかし、立場が逆転してしまった。カグヤにもディアムにもデルアにも言われたのを思い出す。
――お前、イレギュラーだな。
そうだ。俺はこの世界に生まれてはならない存在だったのだ。創世としても、3人が、良くて足元にしか及ばない実力。その3人でも、集まれば聖霊種を根絶まで行けるほどなのに、その3人を相手にしても勝てる存在が生まれてはいけなかった。
――この世界の力の均衡を崩した存在。
ホントに、そうだ。
「立ち塞がるさ。お前たちからすれば、この世界を支配することが、神に課された宿命かもしれないが、俺たちからすれば、お前たちを根絶させ、平和を築くことが神に課された宿命だ。どれだけ先を目指す気持ちが同じだろうと、対立する俺とお前に、最強を偽ることは絶対にない」
「何故だ……何故だ!何故だ!!お前のような、俺らでも歯が立たない相手を、何故この世界の神は創ったのだ!誰が勝てる!支配しろだと?!巫山戯るな!!こんな力の差を生んでおいて、容易く叶えれると思うなよ!!!」
天を仰いで、首から上を歪ませる。その不満は、ごもっともだ。
「そう言うな。神は俺を最強として生んだんだ。ならば、お前が負けるのは当然だろ?最強に勝てるのは、
「クソが!このまま死ねと言うのか?!ありえん!ありえんぞ!こんな無慈悲で理不尽極まりない道理など、あってはならんのだ!俺は絶対に認めん!」
「認めなくても、お前は死ぬ。これまで殺めてきた人間は、帰ってこないんだから、それだけの罪は、せめて絶望の中で償う必要がある」
もしかしたら、なんて考えたことはあった。実は最強として、俺がこの世界で何者にも負けない猛者なのではないかと。
そしたらまさかホントにそうだったとは。最強という名に相応しい、圧倒的で絶対的な力。苦戦をせず、死を知らない器。我ながら、生まれてからこれまで、敗北を知らないとは思わなかった。
「来世は善人として、俺と肩を並べて戦おうじゃないか」
「認めん!認めんぞ!!この世界の――イレギュラーがぁぁぁぁ!!!!」
刀を2cm振り上げ、首と胴体を斬り離すよう
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