第二十四話 基本剣技と実力の差
「極心技・
おじさんの猛攻は止まらない。ショボそうな火を纏う刀に1000℃を超える熱が込められる。リュートが見せた業火の太刀よりも高温だが、それは少しの間だけ。
火は面倒だ。刀で受け止めれても熱が俺を襲う。刀も傷つくし熱によって溶かされるのも嫌な俺はそろそろ遊び始めてやる。
「極心技・
極心技の中で上位にあたる
ちなみにこの世界には水級剣技の他に
おじさんは猛攻を止め再び4歩下がる。
「君……一体何位なんだい?50位以下ではない。30位はあってもおかしくない強さと余裕だ」
「おじさんバカなのか?7位だって言ってるだろ」
「くだらん冗談を」
冗談なのはこのおじさんだ。先程から使う剣技はどれも知っているもの。書庫で盗んだという剣技は見せていない。
「おじさんの名前を教えてくれたら俺も正直に教えてあげる。俺が何位なのか」
「ふんっ、いいでしょう。では冥土の土産に、私の名前はフィート・キュルス。男爵としての地位を持つ、この王国を裏から破滅させるために存在する者です」
やはりこいつがフィート。男爵としての地位に満足できなかったからアズバン伯爵の事件を再来させようとしているのか?こいつは幹部クラスだろうから首謀者ではないことも耳にしている。
「次は君の番ですよ」
「あぁ、俺の神託剣士の位は――ない」
「……は?ない?」
「ないぞ。だって神託剣士じゃないからな。この王国には強ければ神託剣士にならないといけないって義務はないだろ?」
神傑剣技だからな。嘘ではないし、義務もない。神託剣士より上にいるからなる必要もないしな。満足満足。
「ははっ……ははははっ!そうですね。見事にやられましたよ」
右手には力が込められる。相当頭にきたのだろう、血管が浮き出すぎている。千切れる寸前だ。まぁその考えが無かったフィートが悪いんだがな。キレられる意味が分からん。
そのまま血管千切れてくれればラッキー。
「ではもう君を生かす必要もない。決めますよ」
ブワッ!と殺意を解放する。さすがはレベル5の犯罪者といったとこか、レベル4でも圧力に押し負けそうだ。学園生徒のレベル4なら半分生き残れて半分死ぬ感じだな。
「最初からそうしていれば俺を殺せたかもしれないのにな」
んなことはない。神傑剣士に負けるならまだしもレベル5のバブちゃんに負けるなんてあるわけがない。もし負けたなら俺は卒業後の冒険を諦め、1から鍛錬し直すな。
俺は、さすがに調子に乗りすぎていると傷を付けられかねないのでリラックスして剣技が来るのを待つ。
殺意は依然として高まるばかり。俺だけにそんなイラッとしたのか?フィートは見た目に反してガキだな。まぁ不自由なく育って最高潮の時、剣技の才が神傑剣士に劣ったって事実が身を以って証明されればこうやって闇落ちするか。
「名も知らぬ少年よ、さらば。極心技・
極心技ばっかり使いやがって。たまには繊心技とか使わないと腕は上がらないってのに。
俺とフィートの距離は二桁。縦に伸びた刀がその距離を詰める。溜められた殺意が刀に込められ、その全てを俺に向け空気中に放つ。それは殺意には似合わぬ、白百合色をした斬撃。キレイで見たことも聞いたこともない初見の技。これは我が物に――。
「私の想いが消えぬ限り!君に向かうその斬撃も消えぬ!そしてこれを受けた剣士は例外なく死んだ!君も死ねぇ!」
声を荒げる。こういうやつの特徴は勝ちを確信しているということ。バカバカしいな。何を以って俺の前で勝ちを知るのやら。
「はぁぁ……」
呆れた。慢心は死を生む。まさにその通りだな。
「遊心技・虚空」
直径10mの虚空を作る。するともちろん、放たれた斬撃は止まる。
「なっ!?虚空……だけで!?」
驚くのも無理はない。虚空では極心技を止めるのは難しい。神託剣士の上位10名ですらできない剣士もいるぐらいだからな。
それに永劫白虎という、極心技の最上位剣技であろうものが遊心技の最上位剣技に止められたのだ。赤ん坊に刀を受けられたようなもので信じられないだろう。
「虚空だけ、だと?知らないのか?剣技は極めれば極めるほど強固な力となる。常識だろ」
「バカな!今まで虚空を使った剣士とも戦った!しかし1度も防げなかったのだぞ!」
「ならその剣士がまだまだってことだろ。お前の受けた刀の精度で俺の剣技を評価するな」
「っクソ!まだだ!」
よく喋る弱者だ。いっそこいつも虚空に閉じ込めてやろうか。
「極心――」
「極心技・
極心技最上位剣技である黄泉闇月下。刀を肩に載せ重心を低く保つ。距離二桁を0.2秒で詰める。
「っ!?」
まだ技を出す前のフィートに、肩から神速で刀を振り下ろす。暗闇の中で突如として現れるまさにその姿は光の届かぬ黄泉に一筋の光が差し込むような太刀筋だ。
時間にして1秒足らず。気づけば俺はフィートの左足を切断していた。
「っぐぁぁぁ!!!」
猛烈な痛みが体を襲う。耐えられるはずがない。しかしこれ以上の苦痛をお前は味あわせてきたんだ。まだヌルい。
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