第九話 決闘と第12座

 「そういえばメンデ、国務の方はどうなんだ?そろそろフリードから引き抜く時だろ?」


 「あ?あーそうだな。今はまだ手はつけてねーがそろそろ選定しないとだな……思い出させるなよめんどうなこと」


 「やり返しだ」


 神傑剣士にはそれぞれ国務がある。メンデは守護剣士と呼ばれる神託剣士の1つ下に類する剣士団を指揮しているのだが、毎年この時期にフリード学園から数名スカウトするのが決まりだ。


 人数は決まっておらず何人でもいい。だから100人の年もあれば0人の年もある。今までの歴史の中で最少人数は2人、最多人数は33人であり、最少人数の2人のうち1人はメンデだ。


 「とはいえ、この前テンランを茶化しに行こうとフリード学園に行ったとき少し見たが、全員そこまでだったな。今年はもしかしたら0かもな」


 相変わらずテンランとは仲がいい。よくテンランが放つ言葉の棘に刺さってるが。


 「ちゃんとまで見てやれよ。じゃないとお前の評価が下がるだけだぞ」


 「子供の評価なんざ興味ねーよ。毎回言ってんだろ、俺が興味持つのは強いやつだけだって」


 「はいはい。聞き飽きたって」


 メンデの強いの基準は知らないがほとんどの人間に興味がなさそうだ。


 ちなみに俺とメンデは自然と友達のように話しているが年は12も離れている。しかし敬語を使わない。理由は楽だから、ただそれだけ。最初は敬語を使っていたが距離があると感じてから使っていない。そんな俺や自分より年下の剣士に不満を抱く剣士もここにはいない。


 決して見下しているわけではない。己が猛者であるために少しでも今を生きやすくすることは必要なことだから使わない。


 12人しかいないこの部屋も国王のいない今では12人の声量かと信じられないほどうるさかった。理由はシウムがほとんどだが他にも何名かいる。逆におとなしい剣士もいる。圧倒的におとなしい剣士のほうが多いのはシウムとメンデのせいで麻痺ってるから。


 はぁぁ、落ち着かねぇ。


 帰ってもすることがないので、いや、今さっきすることができたが今からやることではないので明日からするとして、ここで退屈しのぎになるようなことが起きないかと机に伏す。


 そんなとき、今までいいことをしてきたおかげかタイミング良く扉が叩かれ誰かが部屋に入ってくることが前もって知らされる。俺はバレてはいけないため身を隠す。


 「入れ」


 ルミウの声掛けにより扉が開く。国王がいない場合第1座が統率することになっているのでマニュアル通りだ。しっかり俺が隠れたのを確認して呼ぶとこもツンデレで可愛い。あ、こんなこと思ってると殺されるわ。


 「はっ!失礼します」


 元気な守護剣士が1人入室してくる。表情は固く緊張しているのがバリバリ伝わってくる。汗もにじみ出てるな。


 「決闘デフィートのお知らせをしに参りました!」


 決闘デフィートとは神傑剣士の入れ代わり戦のこと。主に神託剣士や守護剣士が神傑剣士に対して行うものだ。


 「おぉ?!誰?私?!」


 シウムは威厳を保たなければならない守護剣士の前でも変わらなかった。まぁ国王の前で変わらないなら守護剣士なんて変わるわけないよな。どうしたらこの子は変わってくれるんでしょうかね。


 「い、いえ……」


 ほら、申し訳無さそうだろ。なかなか圧を込めてるからさらにおどおどし始めてしまった。全てはシウムが悪い。


 「今回の申し出は神託剣士第53位、ケンマ・ザックベルト様になります。そしてケンマ様の希望星座は第12座とのことです」


 希望星座とは決闘デフィートを申し込む側が決める対戦相手のこと。星座とは俺たち神傑剣士の座の総称だ。


 にしても53位か……これまた中途半端な力量の相手だな。何かに浮かされたか、天狗になったかのどっちかかな。どちらにせよ99.9%勝てないだろうな、第12座には。


 「俺ぇ?まじで?」


 気怠げな話し方に姿勢。どれを見ても神傑剣士とは思えないが、実は刀を抜くとこの中でベスト3に速かったりする。人は見かけによらないの権化だ。


 「これだからぁ12座は嫌なんだよねぇ」


 12名の中で1番指名されるのが第12座。神傑剣士で1番弱いとされているためあるあるだ。おそらく俺が7座にいてフリード学園に通う子供ってなってたなら俺が1番だっただろうな。


 「シウムゥ今だけ俺と星座変わってくれないかぁ?」


 「変わってあげたいのは山々なんだけど怒られちゃうし」


 いや、いつも怒られるようなことしてるけどな。こういうときに限って真面目になるのはシウムのひどいとこだ。しかし神傑剣士の星座は変えることはできない。たとえお互いが承認しても、決闘デフィートでなければ正式にはどうにもならない。


 「まじかぁ、はぁぁ、仕方ないねぇ。やりますかぁ」


 申し込まれる側の神傑剣士は申込みを拒否できるが基本しない。圧倒的な実力差を見せつけて2度と挑んでこないようにするために。これは神傑剣士としての誇りによるものからくる。お前の考えてる神傑剣士の座は甘すぎると身を持って教えるのだ。


 ちなみに拒否をするとこを見たのは1度だけ。ルミウがルミウに2度目の決闘デフィートを挑んできた剣士に対して「もう君には見込みがない、挑むのをやめて神託剣士のままでいるか殺されるか選びなさい」と言ったことだけだ。


 神傑剣士第12座レント・トゥウェル。相手の得意技を瞬時に見抜く洞察力と、相手の動きに対する対応スピードが人間離れしている。この国で1番の理解力を持つ天才。年齢は25歳の異名は独尊の剣士。

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